BEPS update ~OECD、米国、ドイツ、オランダ及びルクセンブルグ~

BEPS update ~OECD、米国、ドイツ、オランダ及びルクセンブルグ~

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EY 税理士法人

2017年6月30日
カテゴリー BEPS

Japan tax alert 2017年6月30日号

本BEPS updateでは、EYグローバルから発行されているタックス アラートから各国のBEPS最新情報を抜粋してお知らせします。なお、各国の詳細情報については、英語の原文を参照ください。

OECD

2017年6月7日、OECDがパリで主催した署名式典において、67の国・地域が、「税源浸食及び利益移転を防止するための租税条約関連措置を実施するための多数国間条約」に署名しました。また、9の国・地域も近い将来に同条約に署名する意向を表明しています。署名国・地域は、署名にあたり、対象租税条約(Covered Tax Agreements)として指定を希望する租税条約のリストを提出しました。対象租税条約は多数国間条約を通じて改定されます。現段階では、署名国・地域が指定する対象租税条約のうち、その国・地域が追加又は変更を希望する特定の条項に合わせて1,100超の租税条約が改定される見込みです。

署名国・地域は、対象租税条約のリストとともに、多数国間条約の様々な条項に関する留保事項と通告事項(採択状況)の暫定の一覧を提出しました。多数国間条約に係る批准、承諾又は承認の証書が寄託されることにより、各国・地域の最終的な同条約の採択状況が定められます。

さらに、署名国・地域は、多数国間条約において、紛争解決に際し、BEPS行動14に含まれる強制的・拘束的仲裁制度の適用を選択することができます。多数国間条約に署名した67の国・地域のうち、25の国・地域がこの強制的・拘束的仲裁制度を選択しました。

詳細:日本を含む67の国・地域が二国間租税条約改定のための多数国間条約に署名(2017年6月16日)

米国

2017年6月7日、米国とカナダの税務当局は、国別報告書を交換する当局間合意(Competent Authority Agreement:CAA)に署名しました。CAAの規定によれば、米国とカナダは、報告事業体グループの1つ以上の構成事業体が他方の国の税務上の居住者である場合、もしくは他方の国において恒久的施設を通じて行う事業が課税対象となる場合、自国の税務上の居住者である各報告事業体から受領する国別報告書を年に1度自動的に交換することになります。

ドイツ

2017年6月2日、ドイツ連邦参議院は、権利のライセンス付与に係る有害な租税慣行の防止に関する法案を承認しました。同法案では、関連者に対するロイヤリティ及び同様の支払いの損金算入を制限するとしています。損金算入が制限されるのは、このような支払いの受領国における優遇税制がOECD非準拠であり、かつ実効税率が25%未満の場合です。当初の法案から大きく変更された点はありませんでした。立法過程における主な変更点は、OECD準拠の優遇税制の定義に関するものであり、最終規則では、OECDによる行動5のネクサスアプローチを直接参照しています。さらに、ドイツの外国子会社合算税制(CFC)の適用対象となる外国 法人に対し、ドイツ法人がロイヤリティを支払う場合は、ロイヤリティの損金算入は制限されないとしています。

同法は、連邦大統領による署名と連邦官報での公示を経て、今後数週間以内に施行される見通しです。同規則の前提条件を満たす場合は、2017年12月31日より後に支払われる全てのライセンス料に適用されます。

オランダ

2017年6月2日、税務分野における情報の自動交換に関する2016年5月25日のEU指令2016/881を導入する法案が、オランダの官報において公示されました。同法案では、オランダの税務上の居住者である報告義務のないグループ企業が、故意又は重大な過失により、必要な届出(税務当局に対する国別報告書の提出場所の通知)の提出を怠った場合のペナルティ、並びに届出が適時でない場合又は届出の内容が不完全もしくは不正確である場合のペナルティも規定されています。同法案は、2016年1月1日以降に開始する多国籍企業グループの事業年度に遡及適用され、上記のペナルティは、2017年6月5日以降に提出を怠った場合に科されます。  

ルクセンブルグ

2017年6月7日、ルクセンブルグは、(他の66の国・地域と共に)多数国間条約に署名しました。署名にあたり、ルクセンブルグは、対象租税条約として指定を希望する租税条約の一覧を提出しました。ルクセンブルグは、多数国間条約の多数の条文に対し、部分的または全面的な留保を付しています。ルクセンブルグの留保事項の詳細については、選択が認められている多数国間条約の規定について、ルクセンブルグの選択肢とともに、下記のEYグローバルタックスアラートにおいて説明しています。最も重要な変更点は、主要目的テストの導入と、対象となる租税条約は非課税又は租税の軽減の機会を生じさせることを意図したものではない、とする前文の修正に関するものです。また、強制的・拘束的仲裁制度の適用を選択した国は25カ国のみでしたが、ルクセンブルグもそのうちの一カ国です。

詳細:Luxembourg explains its positions on Multilateral Convention to Implement Tax Treaty Related Measures to Prevent BEPS, dated 13 June 2017(英語)