EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
EY-Parthenonは、EYにおけるブランドの一つであり、このブランドのもとで世界中の多くのEYメンバーファームが戦略コンサルティングサービスを提供しています。
CEO調査 2025年9月期
最新の調査結果によると、日本企業のCEOは地政学的・経済的不確実性の長期化を強く認識しています。「1年以上続く」と予測する割合は77%、「3年以上続く」と見る割合も46%と、いずれもグローバル平均を大きく上回ります。背景には、中国・台湾情勢、海外からの資源依存、円安・インフレなど複合的なリスクがあり、日本企業は慎重な姿勢を強めています。
ただし、日本のM&A市場の活発さを踏まえると、守り一辺倒ではなく、アクティビスト対応や資本効率改善、ESG対応のプレッシャーを背景に、ポートフォリオ変革が加速しています。ノンコア事業の切り離しと成長領域への集中が進む中、今回の調査でも、売却・スピンオフ・IPOを計画する企業が76%と高水準で、ジョイントベンチャーや戦略的提携への意欲も96%と突出しています。単独でのリスクテイクよりも、パートナーシップを通じて新市場や新技術へのアクセスを図る姿勢が鮮明です。
さらに、サプライチェーン再構築の観点から、日本企業は現地化※1・地域化※2を不可逆的な戦略シフトと捉えています。現地化を長期戦略と回答した割合は94%、地域化も74%と高く、現地化は既に定着(完了44%、実行中54%)、地域化は本格化段階(実行中67%)にあります。背景には、トランプ関税や米中対立、台湾情勢、物流コスト高騰などによる圧力があり、グローバル一極集中モデルからの脱却が急務です。日本企業は「守りと攻め」を両立し、リスク分散と成長機会の確保を同時に進める戦略転換を加速させています。
※1現地化:国単位でのローカルサプライチェーン化。地産地消の考えに基づきサプライチェーンを構築する戦略。
製造拠点を消費地に近づけることで、輸送コストの削減、供給リスクの低減、地元経済への貢献などを目的としています。
※2地域化:地域単位でのサプライチェーン化。特定の地域ブロック(例:ASEAN、EU、北米など)において、複数国間でサプライチェーンを構築する戦略。
地域内での貿易協定や関税優遇、地理的近接性を生かして、効率的かつ安定した供給体制を築くことを目的としています。
川口 宏
EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社 代表取締役 EY-Parthenonリーダー
変動の激しい時代が続く中、世界のCEOの大半(57%)が、現在の地政学的・経済的な不確実性は少なくとも今後1年以上続くと予想しています。この厳しい見通しは、今こそ回復力、アジリティ(機動力)、そして長期的戦略を見直すべき重要な局面であることを示唆しています。
こうした状況に対し、果敢なCEOは、目をそらすことなく、むしろ攻めの姿勢で臨んでいます。実際、過半数(52%)のCEOが、自社の事業ポートフォリオ変革の加速に向けて投資を行っています。
また、世界経済の分断化が進む現状を踏まえ、多くのCEOがオペレーティングモデルを見直し、顧客・地域社会・人材により近い場所で、現地市場および地域市場に根差したケイパビリティの構築を進めています。このような取り組みにより、企業は、国ごとの規制や市場の変化にも迅速に対応できるようになります。
EY-Parthenonが2025年8月に実施した最新の「EY-Parthenon CEO Outlook調査」(以下、本調査)で、変革の取り組みにおいて際立つCEOの存在が浮き彫りになりました。彼らは、全体の15%を占めています。このグループのCEOは、現地化計画を予定より早く完了させているだけでなく、変革への投資を拡大し、先を見据えた戦略を支える資金も自ら生み出しています。
ここで、次の問いが生まれます。自信とは、将来に対して前向きな見通しを持つことで自然と湧いてくるものなのでしょうか。それとも、終わりの見えない不確実性や変動の中にあっても、積極的かつ果断に行動することによって前向きな気持ちが生まれ、それが自信へとつながっていくのでしょうか。
後者こそが、次世代のリーダーシップの姿です。不確実性や変動を、戦略的な強みに変えていくことが、今のリーダーに求められています。自信を持って未来を形づくるCEOは、安定を待つことなく行動しています。彼らは、常に新たな可能性を見据えながら、成長・回復力・変革の枠組みをリアルタイムで再定義しています。
本レポートの内容
第1章
CEOが事業ポートフォリオを再構築し、短期・長期の業績目標の両立を図る中で、「変革」は持続的な経営戦略となりつつあります。
貿易・関税摩擦や地政学的な不透明感が続く中にあっても、多くのCEOが世界全体、地域、業界の経済見通しに対して、これまで以上に強い自信を示しています。EY-Parthenonの今回のCEO調査では、CEOコンフィデンス指標は83となり、2025年5月期の76.5から上昇しました。楽観的な見方が高まっている背景には、自社の収益や利益率への自信の高まりに加え、企業がグローバルな課題に柔軟に対応してきたことへの確かな手応えがあります。
さらに、金融市場の強靭さや資本調達環境の継続的安定も、CEOの自信を下支えしていると考えられます。このような環境の下では、イノベーションや人材育成、戦略的成長への継続的な投資が促進されます。実際、人工知能(AI)やテクノロジー株が好調に推移していることを受け、株式市場は過去最高値を更新しており、金利はコロナ禍前と比べて依然高水準にあるものの、市場の流動性は引き続き高く、信用収縮の兆候も見られません。国際通貨基金(IMF)も、直近の経済見通しで世界全体の成長予測を上方修正しています¹。もっとも、だからと言って経済上の課題がないわけではありません。例えば、CEOの79%が今後1年間で予想される運営上の重要課題としてインフレを挙げています。それでも、直近の決算発表シーズンでは、「リセッション(景気後退)」という言葉の登場回数が大幅に減少しました。
こうした自信の高まりは、CEOが根強い政策不確実性や市場の変動に徐々に適応し始めていることを示しています。不確実性自体は新しいものではなく、貿易摩擦や政治的変動はこれまでも世界経済の常でした。しかし、変化のスピードが加速する中で、それに伴う不透明感は、これまで以上に強まっています。
半数を超えるCEO(57%)が、地政学的・経済的不確実性は1年以上続くと予想しており、さらに約4分の1(24%)は、3年以上続くと予想しています。
こうした調査結果から、多くのCEOが、地政学的リスクやマクロ経済、貿易を巡る外部環境について、楽観視していないことがうかがえます。もっとも、これは単なる悲観的な姿勢を示すものではなく、関心の対象が外部リスクから、内部リスクへと移っていることを示唆していると考えられます。実際、2025年5月期の調査結果と比較すると、CEOの間では、テクノロジーによる混乱やAIの導入、人材マネジメントやイノベーションといった、より自社でコントロール可能な領域を、成長を脅かす主要なリスクとして捉える傾向が強まっています。
EYは、企業を取り巻く新たな環境を「NAVIワールド」と称し、「メガトレンドレポート」で詳しく解説しています。NAVIワールドとは、非線形性、加速性、変動性、そして相互接続性によって特徴づけられるビジネス環境です。こうしたビジネス環境下では、変化は、もはや予想可能なパターン通りに訪れることはなく、かつてないスピードで展開し、予期せぬ波のように押し寄せます。さらに、さまざまな領域や仕組みがこれまでにない形で相互に影響し合うため、企業には全く新しい発想や、これまでにない経営・思考・リーダーシップのあり方が求められます。
テクノロジー、人材の確保、イノベーションという3つの要素は、企業が成長を加速させる上で互いに深く関わり合っています。テクノロジーの進化は、効率化や事業拡大の新たな可能性をもたらしますが、一方でその真価を享受するためには高度なスキルを持つ人材が欠かせません。同時に、多様性と柔軟性を備えた人材は、イノベーションを推進するために必要な創造力の源となり、イノベーション自体もまた、テクノロジーの活用方法を進化させ、ビジネス課題の解決に新たな道を開きます。この3要素が戦略的に組み合わさることで、企業は新たなビジネスモデルを創出し、迅速な成長と持続的な競争力を実現できます。さらに、これらの要素は互いに連動し、いずれか1つの分野での進展が他の分野の推進力となるような好循環を生み出します。
いかなる変革においても、何を変えるべきかを明確に見極めることが最初のステップであり、その際に、何を残し、何を手放すかについて、思い切った決断を行う必要があります。本調査結果で、こうした決断に不可欠な主体的なマインドセットを持つCEOの姿勢が明らかになっており、事業ポートフォリオの変革に対する強い意欲は、その姿勢を端的に示すものと言えるでしょう。
世界全体では、CEOの半数以上(52%)が、ポートフォリオ変革を加速するために投資の拡大を計画しています。これは、市場や顧客の期待の変化に適応することが、もはや選択肢ではなく、成長に不可欠な要件であるという認識の広がりを反映しています。今や、変革の目的は、コスト削減や業務効率化にとどまりません。企業は、ビジネスモデルの再構築、新市場への参入、最新技術の活用などを通じて、持続可能な競争優位性の創出を目指しています。多くのCEOが、リソースの再配分や新たな機会への投資を行うことで、他社に先んじて成長を実現し、将来に対応する組織づくりを進めようとしています。
一方で、CEOの39%は、過去数年の傾向に沿った水準で投資を維持する意向を示しています。これは、変革が短期的な施策ではなく、部門レベルから全社規模に至るまで、継続的に取り組むべきテーマとして捉えられていることを物語っています。安定的に投資を継続できれば、企業は変革の勢いを途切れさせることなく、戦略的な優先事項に応じたペースで、試行錯誤しながら、イノベーションを着実に進めていくことができます。
これらの数字から見えてくるのは、CEOの圧倒的多数が、価値創出を目指す中で、変革を企業戦略の恒常的な要素と捉えているということです。その上で、変革を加速するにせよ、現状のペースを維持するにせよ、CEOは、自社のあり方を再構築する「自信」と、それを実現する「能力」が、長期的な成功の鍵であることを理解しています。
さらに、事業ポートフォリオの変革は、長期的な変革目標を達成するための資金調達戦略を支える重要な柱になります。実際、CEOの41%が、自社の財務パフォーマンスの改善を目指して事業ポートフォリオの見直しを進めています。その成果は、継続的な変革を支える上で望ましい資金調達手段の実現につながります。
ポートフォリオ戦略を見直す主な動機として、次に多く挙げられたのは、「短期的な業績よりも長期的価値の創造」でした。CEOには、短期的な財務成果と長期的価値創造の両方をバランスよく追求することが求められます。確かに、短期的な不確実性に適切に対応することは、企業の回復力を高める上で重要です。しかし、目先の成果のみに偏ると、持続可能な成長を損なう恐れがあります。一方で、長期的な戦略は、信頼の構築、ステークホルダーとの関係強化、持続的な競争力の確保につながります。これにより、企業は、目先の市場の変動や混乱に左右されることなく、将来にわたって成長を遂げることが可能になります。
前述のとおり、CEOは、変動の激しい外部環境の中にあっても、可能な限り、自社の未来を主体的に方向づけようとしています。実際、CEOの59%が、変革に必要な資金を、財務パフォーマンスの改善やマージンの向上によって確保しようとしています。さらに21%が既存株主からの資金調達を検討しており、16%は借り入れによる資金調達を視野に入れています。一方で、資産売却によって資金を確保するとしたCEOは、わずか4%にとどまりました。
第2章
ローカライゼーション(現地化)は、グローバルな展開力と地域ごとの機動力を両立させながら、規制・経済的要請・消費者ニーズに対応する新たな長期戦略として注目が高まっています。
グローバリゼーションの常識は今、貿易・関税摩擦や地政学的ショックの影響で揺らぎ始めており、CEOはもはやその安定を待つことなく、すでに動き始めています。かつては理想とされていた、グローバル依存の一極集中型サプライチェーンモデルは、現在ではその脆弱性が露呈しています。これに対する、企業の対応は明確です。多くの企業が、生産や調達の一部を現地化または地域化する方向へとかじを切っています。それは決して後退ではなく、変化する外部圧力への現実的な対応なのです。
こうした動きの背景には、サプライチェーンの迅速化や回復力の強化、顧客サービスの効率化を図るとともに、コストや政策的制約の軽減を目指すという狙いがあります。もちろん、現地化がすべての企業にとって最適な解とは限りません。完全な現地化は、実現が困難であったり、費用対効果に見合わなかったり、そもそも必要性がない場合もあります。そうした企業は、グローバルな展開力と地域ごとの機動力を両立させる「ハイブリッド型」のアプローチを選択することになるでしょう。
それでも、CEOの約75%が、販売国における生産の一部をすでに現地化しているか、現地化に向けた対応を進めています。また、半数を超える企業が、特定の地域ブロックに対応する形でサプライチェーンの再編に着手しているか、すでに再編を終えています。
現地化・地域化戦略を推進するCEOが増えている背景には、ビジネス環境において、回復力・信頼・透明性の重要性が一段と高まっていることも、要因として挙げられます。事業の現地化は、サプライチェーンの安定化のみならず、政府・規制当局・地域社会との関係強化にも寄与します。現在、多くの市場で、企業に対して、国内経済への貢献や雇用創出、地域の持続可能性目標への対応を求める動きが強まっています。現地に根差した取り組みを進めることで、企業は地域社会との信頼関係を築き、企業イメージを高めるとともに、地域開発への貢献者としての評価を得ることができます。
本調査では、企業の72%が、現地化・地域化を関税や貿易報道への短期的な対応ではなく、長期的かつ戦略的な取り組みと位置付けています。きっかけは最近の世界情勢ですが、企業の戦略は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックによる構造的な衝撃を契機に、反応的なものから、戦略的かつ長期的なものへと進化を遂げつつあります。今後、これに逆行するような新たな衝撃的事象が発生しない限り、こうしたアプローチは、グローバル企業の新たなモデルとして定着していく可能性が高いです。
EY-Parthenonができること
地政学戦略グループ(Geostrategic Business Group)の存在意義は、企業が、地政学的情勢が事業に与える影響や、世界的に不安定なこの情勢をうまく乗り切る方法を把握するために支援をすることにあります。
続きを読む現地化・地域化において、CEOが最も力を入れている分野は、テクノロジー/データです。これには、複数の要因が背景にあります。まず、自動化、AI、そしてデジタルプラットフォームの進展により、地域単位の小規模な運営でも効率性を実現できるようになりました。その結果、生産性を担保した、従来の中央集約型のグローバル体制からの移行が現実的な選択肢となっています。また、消費者との距離が近くなることで、文化的嗜好や市場環境に即した製品・サービスを提供しやすくなり、競争力の強化が期待されます。そして、多くの政府が自国のデジタル主権を強化する政策を打ち出していることから、企業は現地化・地域化を進めるに当たり、規制への対応が求められており、テクノロジー/データ分野への注力が欠かせません。
端的に言えば、現地化と地域化の動きは、グローバリゼーションを1つの統合システムとして捉えるのではなく、つながりを持ちながらも異なる市場の集合体として捉える方向へと、戦略的に変化していることを示しています。こうした流れの中で、多くのCEOが、グローバルな視野を保ちつつ、現地市場への注力が安定と成長の両立に欠かせないと考えるようになっています。
CEOの現地化戦略を分析した結果、米国が注力市場として注目されていることが明らかになりました。米国は長年にわたり魅力的な市場であり、グローバル企業のCEOにとって常に優先度の高い地域とされてきました。同国は、依然として世界最大の経済規模と消費市場を有しており、その存在感は今もなお揺るぎないものとなっています。とはいえ、ほとんどの企業にとって、自国市場が第1の選択肢であることは言うまでもありません。しかし、多くの場合、次に目が向けられるのは米国です。
多くのCEOが、米国での事業の現地化を戦略上不可欠なものと捉え始めています。そこには、「in China, for China(中国で、中国のために)」という広く浸透したモデルから得られた教訓が根底にあります。このモデルは、企業が中国市場に特化したサプライチェーンや製品設計、流通体制を構築する必要性を認識したことから生まれ、輸入への依存を減らし、地政学的リスクから自社を守るための手段として、多くの企業が採用してきました。そして今、同様の考え方が米国市場に対しても広がりを見せています。こうした背景には、地政学的な緊張や関税・貿易摩擦の激化、企業の回復力に対する関心の高まりなどを受け、CEOは、自社の事業運営のあり方や拠点の選定を根本から見直す必要性に迫られているという現状があります。
米国における事業体制の強化は、多くの企業にとって、外的ショックへの備えとなるだけでなく、国内産業の振興や雇用創出を求める政治的な要請、さらには消費者の期待に応える手段となります。
CEOの間では、米国の新政権の動向に適応する動きが広がっており、貿易や規制などの政策議論において、同国での投資や雇用創出を中心に据える傾向が高まっています。雇用と投資分野への注力は、ここ数年にわたって、ビジネスと政策の関係において繰り返し見られる特徴となっています。
かつて、中国で企業が顧客や規制当局との距離を縮めるために現地化を進めてきたように、米国を重視した現地化も、効率性と安全保障の両立を図る手段として注目を集めつつあります。本質的には、「米国で、米国のために」という新たな戦略は、過去10年間に中国市場で企業戦略を方向づけてきた現実的な戦略判断と同様の合理的な思考に基づいています。もっとも、現時点ではこうした動きの多くは計画段階や発表にとどまっています。数カ月から数年後には、「米国で、米国のために」という戦略がどれほど本格的なものになっていくのか、その実態が明らかになっていくでしょう。
事業の現地化・地域化に向けた戦略的な取り組みには、短期的にはコストの増加や業務上の課題がつきものです。そのため、本調査でも、事業や業務分野を全面的に移管したという企業はごく少数にとどまっています。現地化や地域化の影響を見極めるに当たり、CEOは、将来的に生じ得るコストと利益を理解するために、以下の問いを自らに投げかける必要があるでしょう。
第3章
規制当局による監視の強化やイノベーションコストの増大を背景に、俊敏な成長の道筋を模索するCEOの間で、戦略的提携やジョイントベンチャーが注目を集めています。
2025年のビジネス界では、M&Aが静かに活況を呈しています。関税摩擦や貿易紛争、地政学的な変動に注目が集まっているため、大々的に報じられることは少ないものの、実際にはM&A市場は着実に加速しています。CEOは2024年を大きく上回るスピードで事業ポートフォリオの再構築を進めており、M&Aを通じて、長期的な変革への確信と自信を新たにし、より明確な戦略的方向性を打ち出しています。
現在のM&A市場において注目すべきもう1つの傾向は、取引の平均額が増加していることです。
EY-Parthenonができること
財務アドバイザー(FA)として、貴社の利益の観点からM&Aの組成からエグゼキューションまでを戦略的な助言によりバックアップ。FAとしての高い専門性発揮はもちろんのこと、グローバル・ネットワークと隣接領域の充実したサービスラインアップ(DDなど)を生かしてのシームレスな案件遂行をお約束します。
続きを読む今回のCEO調査によると、M&A市場は今後数カ月にわたって好調な状況が続くと見込まれます。一方で、今後12カ月以内にダイベストメント(事業売却)を検討していると回答したCEOの割合はわずかに減少しましたが、2025年にはこの分野で大きな発表がある可能性もあります。実際、すでに多くの企業が、事業の簡素化を目的とした取引を発表しており、これにより分社化された企業がそれぞれの市場でより競争力を発揮できるようにすることを目指しています。こうした動きは、今後、特に消費財や工業のセクターでさらに広がる可能性があります。
テクノロジー、金融サービス、ライフサイエンスの分野では、すでに2025年を通じてM&Aが活発に展開されています。買収対象国としては米国が最も多く、また中国でのM&Aの回復が世界全体の取引件数を押し上げています。英国、日本、カナダもまた、注目度の高い買収対象国となっています。
このようにM&Aが活発化する中で、CEOは戦略的に企業の成長を左右するようなディールに関心を示しており、その姿勢は、今後12カ月間のM&A戦略に色濃く表れています。こうしたディールの意思決定は、成長を最優先する方針に基づいており、企業の変革戦略とも方向性が一致しています。
従来のM&Aに伴う財務的・業務的な負担を避けつつ成長を目指す手段として、CEOの間ではジョイントベンチャー(JV)や戦略的提携を活用する動きが広がっています。そうした背景には、規制当局による取引の監視が強まっているという現状があります。このような環境下で、多くのCEOが、パートナーシップ(協業)を、「迅速に動き、協業の可能性を試し、完全な所有権を伴わずに新たな市場や技術にアクセスするための手段」として捉えています。中でも、戦略的提携は、買収とは異なり、リスクを分担し、専門知識を持ち寄りながら、企業文化を維持することができるため、機動力が高まり、従業員や顧客への影響も最小限に抑えられます。
技術革新と規模の経済が競争力の源となる工業セクターでは、こうした協業モデルの採用が特に進んでいます。例えば、テクノロジーや半導体分野では、研究開発費の高騰や先端計算能力を巡る国際競争の激化により、企業間の協業が加速しています。戦略的提携を結ぶことで、企業は、新しい半導体の開発を加速し、限られた製造能力へのアクセスを共有し、次世代の標準規格にも対応できます。さらに、合併審査に伴う遅延や不確実性を回避できるというメリットもあります。一方、クリーンエネルギー分野では、水素、炭素回収、蓄電池などの事業領域でJVが急増しています。その背景には、これらの事業において初期投資の負担が非常に大きく、公共補助金や共有インフラへの依存度も高いという事情があります。この分野における協業は、初期コストを分担し、政府支援の活用機会を広げるとともに、リスクの分散にも寄与します。
ライフサイエンス分野でも、戦略的提携が活発化しています。医薬品の開発には長い年月と莫大な費用がかかる上、成功の保証もありません。そのため、共同開発契約の締結は魅力的な選択肢となっています。協業を通じて、製薬会社とバイオテクノロジー企業は、研究パイプラインを共有し、臨床試験を迅速に進めることができます。また、プロジェクトが失敗した場合でも、財務的な負担を抑えることができます。自動車業界もまた、電気自動車やソフトウェアプラットフォームなどの領域で、戦略的提携に意欲的です、こうした背景には、自動車メーカーが新技術の開発コストを分散させ、サプライチェーンの安定確保を図るという狙いがあります。買収ではなく協業という形を選ぶことで、CEOはイノベーション、回復力、成長を追求しつつ、将来の選択肢を柔軟に確保することができます。
2025年9月期の「EY-Parthenon CEO Outlook調査」により、多くのCEOが、変動の激しい環境を成長の妨げではなく、むしろ好機と捉えていることが明らかになりました。こうした視点の変化は、リーダーシップの新時代の到来を物語っています。これらのCEOは安定を待つのではなく、混乱の中でこそ競争力を発揮できるよう、俊敏性・革新性・連携力を備えた組織づくりを進めています。成長戦略においても、大規模な買収に代わって、戦略的提携やJV、選択的な投資が重視されるようになっており、現実的な方向への戦略転換が進んでいます。そうした環境下で、果敢なCEOは、混乱を好機へと転換し、組織全体に前向きな文化を浸透させています。こうしたアプローチは、先進的なリーダーとしての存在感を際立たせています。彼らは未来像を描き直し、果断に行動する中で、成長のルールそのものを再定義しようとしています。このようなリーダーシップは、不確実な時代において、組織の回復力、創造性、そして長期的な競争力を支える確かな基盤の確立につながります。
EYの関連サービス
トランプ政権は、世界経済における地殻変動を引き起こし、日本企業にとってのビジネス環境を大きく変えつつあります。激変する地政学的状況も相まって、関税の上昇や輸出規制、ひいては中長期的なサプライチェーン戦略の観点からも日本企業は大きな影響を受けつつあります。地政学的リスク、サプライチェーン、関税、税務、イミグレーションなど各分野のプロフェッショナルを有するEYでは、包括的なアドバイザリーサービスをワンストップで提供します。
続きを読む財務アドバイザー(FA)として、貴社の利益の観点からM&Aの組成からエグゼキューションまでを戦略的な助言によりバックアップ。FAとしての高い専門性発揮はもちろんのこと、グローバル・ネットワークと隣接領域の充実したサービスラインアップ(DDなど)を生かしてのシームレスな案件遂行をお約束します。
続きを読むCEOやビジネスリーダーは、この変革の時代に、ステークホルダーにとっての価値を最大化するという任務を負っています。私たちは常識に疑問を投げかけ、収益性と長期的価値を向上させる戦略を構築し、実行します。
続きを読むEYのサプライチェーン&オペレーションズ(Supply Chain and Operations)コンサルティングチームでは、世界のサプライチェーン課題の複雑性が増す中、高い専門性を持つサプライチェーン専門のコンサルタント集団が、企業の強靭かつ持続性あるグローバルサプライチェーンの構築を支援します。
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