アドベンチャービジネスの変革にテクノロジーを活用する方法とは?
ロイヤル・カリビアンの船舶デザインは、同社のブランドファミリー全体で最先端のイノベーションを誇っていました。乗客体験はまさに「トランスフォーメーションの時代」に差し掛かっていました。
クルーズ船の乗客の望みは、手間なく思う存分楽しむこと
今、時間はかつてないほど貴重です。何かと気ぜわしい中、分刻みに物事をこなすことも珍しくありません。
そのため、多忙な日常を離れて休みを取る場合、人は、思う存分に休暇を楽しみながら、なるべく面倒なことに煩わされない体験を求めます。非日常感と同時に、自宅で得られるコネクテッドな快適さも必要なのです。
これを受けたロイヤル・カリビアンは、乗客体験を「トランスフォーメーションの時代」に誘うべく、カスタマージャーニーの全面的な再設計と、さまざまな統合テクノロジーの導入に踏み出しました。
常に明日を見据えるためには、ディスラプションを受ける側ではなく、与える側であり続ける必要があります。
陸上と水上で完全に統合されたデジタル体験を提供するチャンスの到来
ジップライン、フローライダー、アイススケートに至るまですべてを網羅するロイヤル・カリビアンの船舶デザインは、これまでもイノベーションの最先端を走り続け、クルーズ船の乗客を魅了しながら利用者数を伸ばし続けてきました(2009年は年間1,780万人、2018年は予測値で2,720万人)。一方、遊園地、カジノ、航空会社などの業界に目を向けると、何年も前からモバイルチェックインや専用アプリを顧客に提供しています。ロイヤル・カリビアンは、企業能力を高めて、陸上と水上で完全に統合されたデジタル体験を乗客に提供するチャンスが到来していることに気付きました。
デジタルトランスフォーメーションが急速に進む中、顧客の期待は高まっており、変革のペースについていくには革新が不可欠であることを企業は認識しています。EYの調査結果では、CEOの50%が、ディスラプションに立ち向かうために必要な準備ができていないとの見解を示しています。うまく対応できなければ、市場におけるリーダーシップや資本が危険にさらされる恐れがあります。
ティスラプションの波に飲まれるリスク
50%CEOの50%が、ディスラプションに立ち向かうために必要な準備ができていないと回答しています。
ロイヤル・カリビアンは、あらゆる面で競争力を維持するためには、陸上と海上でシームレスにつながる体験を提供することによって、乗客が極上のクルーズ体験を味わえるようにする必要があると気付きました。そのためには適切なパートナーが必要であると考え、EYのプロフェッショナルから支援を得ながらデジタル時代へのクルーズに乗り出すことにしたのです。
デジタルはビジネスを破壊するものではなく、加速させるものです。
Jay Schneider氏
SVP, Digital, Royal Caribbean Cruises Ltd.
アナログからデジタルへの移行に求められたテクノロジーの抜本的な見直し
EYがこのプロジェクトに着手したとき、ロイヤル・カリビアンのデジタル思考はまだ初期段階にありました。アクティビティやアメニティについて、Webポータルやごくシンプルなアプリから得られる情報は限られていました。クルーズ船の乗客には、イベント、アクティビティ、レストランとメニュー、寄港地観光、当日の寄港地の情報が印刷された船内新聞が毎日配られていました。イベントや寄港地観光に参加したい場合、先着順で順番待ちをしている列に並んでクルーに申し込まなければなりませんでした。
こうしたアナログな手法は不便であり、特に「デジタルファースト」の考え方が当たり前になっていて、無駄も煩わしさもない体験を求める世代にとってはなおさらでした。
「今日では、日常生活の中で気軽に使えるテクノロジーが求められています」と、Royal Caribbean Cruises Ltd.の会長兼CEOであるRichard Fain氏は述べています。「テクノロジーを使えば時間と手間を省けることを誰もが知っています。特に休暇中ともなれば、時間は最も重要なものの一つなのです」
ロイヤル・カリビアンにとっては、乗客や従業員とのつながり方、そして新たな収益源を確保する方法について考え直すチャンスでした。
Raj Mirchandani
EY Advisory Account Leader(Royal Caribbean Cruises Ltd.担当)
「ロイヤル・カリビアンにとっては、乗客や従業員とのつながり方、そして新たな収益源を確保する方法について考え直すチャンスでした」とRoyal Caribbean Cruises Ltd.を担当するEY Advisory Account LeaderのRaj Mirchandaniは述べています。「うまくやり遂げれば、デジタルに精通した現代の顧客の期待に応えられるだけでなく、クルーズ旅行に対する顧客の認識を根本から変える、新たな運用モデルになり得るのです」
当然のことながら、40隻の客船すべてで、船上でも陸上でも通用するデジタル体験をつくり上げることは容易ではありませんでした。EYのチームは、ロイヤル・カリビアンの業務全般で、あらゆる角度からデジタルについて考察する必要がありました。