BEPS update ~台湾、マレーシア、インド、オーストラリア、アイルランド、英国及びロシア~

BEPS update ~台湾、マレーシア、インド、オーストラリア、アイルランド、英国及びロシア~

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EY 税理士法人

2017年12月19日
カテゴリー BEPS

Japan tax alert 2017年12月19日号

本BEPS updateでは、EYグローバルから発行されているタックス アラートから各国のBEPS最新情報を抜粋してお知らせします。なお、各国の詳細情報については、英語の原文を参照ください。

台湾

2017年11月14日、台湾の財務省は、OECDのBEPSプロジェクト行動13の一部として展開された、国別報告書、マスターファイル、ローカルファイルから成る三層構造の移転価格文書化アプローチを採用する新規則を発表しました。

新規則の下では、年間連結グループ収益が所定の基準を上回るMNEグループは、国別報告書の作成と提出が義務付けられ、異なる国に所在するグループ企業の特定の主要財務数値等のグループ活動に関する詳細な情報を提供する必要があります。基準となる収益については、2017年11月23日時点では発表されていませんが、270億台湾ドル(7億5,000万ユーロに相当)となる見込みです。国別報告書は、通常2017年1月1日以降に開始する事業年度から義務化され、各事業年度終了後12カ月以内に税務当局に提出しなければなりません。

マスターファイルは、年間売上高が所定の基準を超える台湾居住の構成事業体が作成する必要があります。マスターファイルには、組織構造、業績、財務活動、MNEグループ間の財務及び税務ポジション、並びに無形資産関連の情報を含める必要があります。マスターファイルは、一般に、2017年1月1日以降に開始する事業年度から義務化され、所得税申告書の提出期限までに作成し、台湾企業の事業年度終了後12カ月以内に税務当局に提出しなければなりません。台湾中国語版は、調査通知の受領後1カ月以内に税務当局に提出する必要があります。提出期限は、正当な理由があれば、1カ月延長することができます。

台湾には既に、行動13のローカルファイル要件に沿った移転価格文書化規則があります。移転価格文書には、会社概要、会社の組織構造、関連者間取引に関する情報、並びに機能分析、リスク分析及び移転価格算定方法等の移転価格分析の詳細を含める必要があります。移転価格文書は、所得税申告書の提出期限までに作成し、税務当局の書面による要請から1カ月以内に税務当局に提出しなければなりません。移転価格文書は、税務当局が英語版を受け入れることに同意しない限り、台湾中国語に翻訳する必要があります。

要求された情報や文書を提出しなかった場合は、税徴収法第46条に基づき、3,000台湾ドル以上30,000台湾ドル以下の罰金が科される可能性があります。

マレーシア

2017年9月12日、マレーシア内国歳入庁は、国別報告書の通知テンプレートを公表しました。国別報告書の適用対象初年度は、2017年1月1日以降に開始する事業年度です。マレーシアの国別報告書に関する規則によれば、国別報告書の対象となる多国籍企業(MNE)グループに属する全てのマレーシア構成事業体は、最終親会社の報告対象事業年度の終了日までにMNEグループの報告事業体を特定し、その通知を電子的に提出しなければなりません。例えば、報告対象事業年度が暦年であるMNEグループは、2017年12月31日までにマレーシア内国歳入庁に通知を行う必要があります。

報告事業体通知書は、MNEグループの報告事業体である構成事業体が提出し、非報告事業体通知書は、報告事業体ではない構成事業体が提出しなければなりません。いずれの通知書も英語で提出する必要があります。

インド

2017年11月21日、OECDは、2014年OECDモデル租税条約及びコメンタリーの2017年改訂版の内容を承認しました。2017年改訂版には、BEPSプロジェクト及びそのフォローアップ作業の一環として合意された変更点のほとんどが含まれています。インドはOECD加盟国ではありませんが、2006年7月に「オブザーバーステータス」が付与されており、これに基づき、恒久的施設(PE)や相互協議手続(MAP)等の分野について、2017年改訂版に関するインドの立場を伝えてきました。

PEについては、インドは引き続きリベラルなアプローチを採用しており、代理人PE規定、企業の自由になるか否かのテスト(disposal test)、PEとしてのホームオフィス、PEを生じさせる短期間の活動、特定の活動に係る免除規定に関するより厳密な適用について、広範囲な適用を支持する立場を示してきました。インドは、デジタル取引については、ウェブサイトによるプレゼンスを含め、重要な経済的プレゼンスに基づきPEと認定する考えを表明してきました。

MAPについては、強制的・拘束的仲裁制度を採用しない姿勢を繰り返し示してきました。インドは、第9条(2)が存在しない場合、移転価格事案においてMAPは利用できないとする先の留保事項を撤回しています。インド政府も最近のプレスリリースで同様の発表をしています。インドは、一部のケースでOECDモデルから逸脱しています。例えばMAPについては、インドは、租税条約で定義されていない用語は、租税条約を適用する国の現行法に従って理解されるべきであり、MAPにおいて権限ある当局が定義することはできないと考えています。インドはまた、納税者がMAPを申請できるのは、税務当局による措置が租税条約に準拠しない課税になることが確実な場合に限ると考えています。

インドの立場は、インドの税務当局が取り得るアプローチに関する納税者向けガイドとして役立ちます。また、インドと租税条約を交渉しようとする国にとっては、インドの租税条約に関する政策の概要として役立ちます。

オーストラリア

2017年11月24日、オーストラリア財務相は、ハイブリッド・ミスマッチ防止措置に取り組むための法案を発表しました。ハイブリッド・ミスマッチ・ルールは、女王の裁可を受けた日から6カ月経過した日以後に行われる支払いに適用されます。適用開始は、早くても2018年後半になる見通しです。既存のアレンジメントに対する経過措置はありません。ハイブリッド・ミスマッチ・ルールの適用対象となるのは、利子、ロイヤリティ、資産価値の減少、棚卸資産や役務提供に対する支払等の広範囲にわたるアレンジメントです。多国籍企業グループは、ハイブリッド・ミスマッチ・ルールがクロスボーダーの関連者間アレンジメントやハイブリッド事業体ストラクチャーに与える影響を評価し、再構築を必要とする可能性のあるアレンジメントを特定する必要があります。提案されているルールは、概して、1. ある国・地域で損金算入できる支払いが、別の国・地域では益金不算入とされている場合、納税者の損金算入を認めない(もしくは受領者の課税所得に含める)、並びに、2. 同一の支払いについて2つの国・地域で損金算入できる場合、二重損金算入を認めないことにより、ハイブリッド・ミスマッチの効果の無効化を図るものです。

同法案の提出期限は、2017年12月22日です。また、オーストラリア財務相は、導入を目指しているインテグリティルール(integrity rule)と支店ミスマッチに関するルール(branch mismatch rules)を含む法案を別途発表する予定であると述べました。この2つのルールの適用開始日については、ハイブリッド・ミスマッチ防止措置の適用開始日と同日にするとしています。 法案の発表日は明らかにされていませんが、2018年初めになると予想されます。

詳細:Australia releases draft anti-hybrids law, dated 28 November 2017(英語)

2017年11月23日、オーストラリア税務当局は、国別報告書、マスターファイル及びローカルファイルの提出について、報告対象初年度に限り、事業年度が2016年12月31日及び2017年1月31日に終了する納税者は、2018年2月15日までに提出を行えば、罰則の対象とならないと発表しました。オーストラリア企業は、通常、報告対象事業年度終了後12カ月以内の提出が義務付けられています。

アイルランド

2017年11月24日、アイルランド歳入庁は、「国別報告書の提出制度の整備に遅れが生じているため、2016年に終了する事業年度の国別報告書については、2018年2月28日まで受け入れる」とするeBrief の更新版(eBrief No. 107/17)を公表しました。当初、アイルランドの納税者は、2016年を対象とした最初の国別報告書を2017年12月31日までに提出しなければなりませんでした。

提出期限が2カ月延長された理由は、アイルランド歳入庁が欧州委員会により提供されている共通検証モジュールを含む国別報告書の電子提出システムを開発したものの、終盤になって国別報告書のスキーマを変更することになったため、検証モジュールの最終版がまだ利用可能となっていないからです。

提出期限の延長は、国別報告書の通知義務には影響しないことに留意することが重要です。規定によれば、国別報告書の対象となる事業年度の終了日までに、歳入庁に対し年次通知を行うことが義務付けられています。

詳細:Irish Revenue grants extension for Country-by-Country Reporting filing, dated 28 November 2017(英語)

英国

2017年11月22日、英国のフィリップ・ハモンド財務相は予算案を発表しましたが、その中で、法人税とデジタル経済に関するポジションペーパーも公表しました。ポジションペーパーによれば、特定のデジタルビジネスの利益が課税される場所を決定する際に、当該ビジネスにユーザーが参加することによって創造される価値が認識されることを確実にするため、英国政府は国際税制改革を推進していくとのことです。2017年4月1日に施行された利子損金算入制限に関する新規則については、一部「技術的改正」が行われる予定です。改正の一部は2017年4月1日を発効日としていますが、残りは2018年1月1日に発効します。他には、インフラストラクチャに関する規則の改正も含まれています。

また、ハイブリッド及びその他のミスマッチに関する規則も、当初の意図通りの運用を確実にするため、技術的改正が行われます。ゼロ税率の課税に関する改正は、2018年1月1日に発効します。残りの改正の発効日は2017年1月1日となっています。

詳細:UK 2017 Autumn Budget: Key business tax announcements, dated 22 November 2017(英語)

ロシア

ロシアの大統領は11月27日、ロシア連邦税法改正に関する連邦法(Law No. 340-FZ)に署名しました。同法は、多国籍企業グループに関する金融口座情報及び文書の国際的自動交換の実施に関連するものです。  

同法は公告日より発効し、国別報告書とマスターファイルに関する規定は、2017年1月1日以降に開始する事業年度に適用されます。BEPS行動13におけるローカルファイルは例外とされ、2018年以降の事業年度(暦年)より義務付けられます。MNEグループは、2016年内に開始した事業年度を対象とした国別報告書を自主的に提出することもできます(親会社による代理提出)。自主的提出は、国別報告書と通知のみに認められています。

詳細:Russian State Duma adopts draft law on BEPS Action 13 implementation, dated 17 November 2017(詳細)

国別・行動計画別のBEPSデータベースへ(国別にアラート情報を検索可能です)