米国税制改革「両院一致案」公表

米国税制改革「両院一致案」公表

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EY 税理士法人

2017年12月18日

US tax alert 2017年12月18日号

2017年12月15日、両院協議会は先にそれぞれ可決されていた米国税制改革(「The Tax Cuts and Jobs Act」)上院案及び下院案を両院一致法案としてまとめ、その内容を公表しました。両院一致案は、両院の共和党指導部及び大統領府(ホワイトハウス)が合意済みのものですが、今週、実施が予定されている両院本会議での最終投票で再度可決される必要があります。上院の動向は現時点でも予断を許さない状況ではありますが、反対を表明していた複数の議員が12月15日の時点で賛成の立場に回ったことから今週早々の可決が予想されています。

両院一致法案は多くの面で上院案を踏襲していますが、細かい点で多数の修正が加えられており、複雑になっています。特に関心が高い項目は、2018年からの法人税率21%の導入、2018年及び以降に発生するNOLの80%使用制限即適用、支払利息の損金算入制限のうち、多国籍企業に対して提案されていた全世界レバレッジに基づく制限案の取下げ、Base Erosionに対する上院案の採択(すなわちより厳しい下院案の20%ペナルティー課税及びPE選択は取下げ)、ただし導入される2018年についてはBase Erosion Minimum Tax税率5%の移行措置導入等となります。

法案は公表されたばかりのため、現時点における以下の概要は参考情報としてご一読ください。今後、米国税制改革に関するウェブキャスト、セミナーを開催する予定ですので、その際に詳細を共有させていただきます。また個別の事実関係に基づく実際のインパクト推定等のアクションについては、貴社のEY担当者までご連絡ください。

法人税及び事業活動に対する課税
  • 個人オーナーが自営業・パススルー主体経由で認識する事業所得(人的役務に基づく事業は対象外)の20%非課税
  • 2018年から法人税率21%
  • 法人代替ミニマム税(AMT)撤廃
  • 2017年9月28日から2022年末までに取得される動産事業資産の100%初年度償却
    • 既存のボーナス償却対象資産に適用(映画・テレビ・劇場プロダクションを含む・公共ユーティリティ用途資産を除く)
    • 新規取得であれば中古資産も対象
    • 2023年は80%の償却となり、以降毎年20%減額され2027まで段階的削減
  • 2018年及び以降の課税年度に発生するNOL繰越期限廃止・繰戻撤廃
    • NOL使用額は繰越年度の課税所得80%上限(2018年又は以降に発生するNOLに関して)
  • ネット支払利息損金算入制限
    • Adjusted Taxable Income(ATI)の30%を超えるネット支払利息損金不算入
      • ATIは2018年から2021年まではEBITDA、2022年及び以降はEBIT(双方共Earningsは課税所得ベース)
    • 損金不算入額は永久繰越可
  • 多国籍企業グループのネット支払利息を全世界Debt/Equityレシオに基づいて制限する等の案は取下げ
国際課税
  • 海外子会社(10%以上投資先)からの配当非課税(テリトリアル課税制度)
  • 未配当原資累積額に一括課税
    • 15.5%(事業資産に再投資されているケースは8%)
    • 8年間の分割納付可能
    • 部分的に外国税額控除あり
  • 多国籍企業グループに「Base Erosion Minimum Tax」
    • 基本的に上院案が採択され、下院の20%ペナルティー課税は取下げ
    • グループ売上5億米ドル以上(50%資本関係グループ総額)及びBase Erosion Paymentが全体の費用の3%以上の米国法人(REIT・RICは除外)
    • 「Base Erosion Payment」に基づく「Base Erosion Tax Benefit」を算定
      • Base Erosion Paymentは米国法人が米国外関連会社(25%株主又は該当米国法人の50%超の資本関係にある者、又は米国移転価格税制上関連者と扱われる者)に行う費用項目及び資産取得支出(売上原価は対象外)
      • Base Erosion Paymentに基づく損金算入額がBase Erosion Benefit
      • 30%源泉税対象となる支出は対象外(条約で源泉税が低減されている場合には、低減相当分額がBase Erosion Payment扱い)
    • 通常の課税所得にBase Erosion Benefitを加算処理して修正課税所得を算定
    • 修正課税所得に10%(2018年は5%、2026年からは12.5%)乗じた金額が通常の税額を超える金額が「Base Erosion Minimum Tax」
  • 米国でECI・PE事業所得を認識するパートナシップ持分を外国人パートナーが売却する際、パートナシップ内部資産持分相当を売却したかのように扱われ、結果としてECI・PE課税の対象となる
個人所得税
  • 現状の7税率区分を10、12、22、24、32、35、37%の7区分に再編(2025年までの時限措置)
  • 住宅ローン金利個別控除を7,500万米ドル新規取得コストまで認める現状維持
  • 不動産税、州・地方所得税、又は売上税を10,000米ドルまで個別控除容認
  • 個人所得税代替ミニマム税(AMT)は免除対象と拡大のうえ温存
  • 子女税額控除2,000米ドルのうち(所得税が2,000米ドルに満たないケースで)1,400米ドルまで還付容認
遺産税・Generation Skipping Transfer Tax
  • 非課税枠を増額しながら存続

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