アルゼンチン、税制改革で制定した課税価格再評価オプションとデジタルサービスVATに関する新たな法令を公告

アルゼンチン、税制改革で制定した課税価格再評価オプションとデジタルサービスVATに関する新たな法令を公告

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EY 税理士法人

2018年5月22日
カテゴリー 間接税

Japan tax alert 2018年5月22日号

アルゼンチン政府は、2018年1月1日より施行されたの税制改革(法律第27,430号)に基づき、同国居住者が利用できる課税価格再評価オプションに関するさらなる詳細を法令(第353/2018号又は法令第353号)として2018年4月24日付の官報に掲載しました。また、アルゼンチン政府は同税制改革に基づき、デジタルサービスへの付加価値税(VAT)の賦課に関する法令(第354/2018号又は法令第354号)についても公表しました(税制改革に関する詳細は、2017年12月14日付のEYグローバル・タックス・アラート『Argentine comprehensive tax reform bill sent to Congress』をご覧ください)。

アルゼンチンでの事業主は、今回の改正と法令による恩典と影響を理解し、分析する必要があります。

課税価格再評価オプション - 法令第353/2018号

2018年度の税制改革により、課税価格再評価オプション制度が新たに導入されました。同オプションは、アルゼンチンに居住する個人が課税所得の源泉であるアルゼンチンに所在する資産(動産、不動産を含む)の課税上の評価額を再評価し、一括納税を行う事ができるという特別制度です。当該資産の新課税価格は、その資産を取得又は建設した年(又は当該期間)に算定された当初の課税価格に今回新たに制定される「再評価係数」を適用して算定します。「固定資産」として認定される不動産又は動産については、所定の条件が満たされる場合に独立した鑑定人が評価額を再算定する事もできます。この制度のもとでは、上述の通り再評価額について一回限りの特別税を納付することができます。特別税の税率として、資産の種類に応じて5%から15%の間で定められています。

法令第353号の規定によると、再評価特別税の納付期限は、本課税価格再評価を行なった課税年度終了後6ヵ月後の末営業日となります。2018年4月25日以前に終了した課税年度については、アルゼンチンの税務当局(公共歳入連邦管理庁: AFIP)が納税者の納付期限を60日延期許可をする場合もあります。

この課税価格再評価オプションは、2017年12月29日(すなわち、税制改革を制定した法律第27,430号の制定日)以降に終了する課税年度より適用されます。例えば、2017年12月31日に終了した課税年度の場合、課税価格再評価オプションを利用し、税金を納付する期限は2018年6月29日となります。

法令第353号ではまた、再評価税額を最長4ヵ月に均等に分割し(、AFIPが定める利息を加算したうえで)連続して毎月納付する事も可能である旨を定めています。

さらに法令第353号では、建設中の資産やリース契約のもと取得した資産、区分所有財産、減耗資産、資産の売却・再取得(更新)などの諸規定も細かく定めています。

アルゼンチンでの事業者は、今後の計画(例えば、将来的に資産を売却するかしないかといった計画)を踏まえ、本オプションの税務上の恩恵と既存の課税額とを比較し税務上のコストを検討する事となります。また課税価格再評価オプションを考慮する際には、同国におけるインフレの影響も勘案の上、選択肢(すなわち、再評価オプションを使用して特別税を納付するか、再評価をしないという選択肢)の現在価値も検討する必要があります。

デジタルサービスに対するVAT -法令第354/2018

2018年の税制改革により、「インターネットやウェブサイトのサービス」「遠隔システム管理及びオンラインによる技術サポート」「データ保管及びオンライン広告」「ソフトウェアサービス(例: SaaS)」「デジタルコンテンツ(音楽やゲームなど)のダウンロード」などデジタルサービスに対するVATの課税制度が新たに創設されました。

この税制改革を受け、海外事業体がアルゼンチンで提供するデジタルサービスに関するVATの取扱いを法令第354号で定められています。

法令第354号の規定によると、VATの申告・納付義務を負うのはサービス発注者となります。ただし、国内仲介機関(クレジットカード会社や銀行など)が決済に関わっている際には、当該機関が徴収代理人の役割を果たすことが求められます。複数の仲介機関が決済に関わっている場合、徴収代理人の役割を果たす仲介機関は、デジタルサービスを提供しているプロバイダーと商業上、最も関係が深い機関となる旨が制定されました。

AFIPでは、該当するデジタルサービス・プロバイダー毎にVATの徴収を行わなければならない仲介機関名の一覧を作成する予定です。また、同一覧を更新する権限も与えられています。

さらに、AFIPは、VATの徴収に係る諸条件とVATの納付方法についての詳細を今後定める予定です。そして、上記一覧の公表をもって、法令第354号の施行開始を定めています。

デジタルサービスにかかわるプロバイダー、利用者、並びに仲介機関は、上記一覧及びVATの納付方法に関する動向を今後さらに注視する必要があります。

 

※本アラートの全文は、下記PDFからご覧ください。

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