BEPS update - OECD、EU、アイルランド、オーストラリア、ペルー、マレーシア

BEPS update - OECD、EU、アイルランド、オーストラリア、ペルー、マレーシア

EY Japanの窓口

EY 税理士法人

2018年10月18日
カテゴリー BEPS

Japan tax alert 2018年10月18日号

OECD

2018年9月18日、OECDは、サウジアラビアが「税源浸食および利益移転(BEPS)を防止するための租税条約関連措置を実施するための多数国間条約(以下、「MLI」)に署名したと発表しました。署名に当たり、サウジアラビアは、MLIを通じて改定されるべき対象租税条約(Covered Tax Agreements、以下、「CTA」)として指定を希望する発行済租税条約のリストを提出しました。サウジアラビアは、CTAのリストとともに、MLIの様々な条項に関する当該CTA関連の留保事項と通告事項(MLIの採択状況)の暫定リストを提出しました。サウジアラビアの最終的なMLIの採択状況は、MLIの批准、受託又は承認の証書が寄託された時点で確定します。各国・地域は、MLIに含まれる選択肢の一部として、紛争解決に関するBEPS行動計画14の1要素である強制的・拘束的仲裁の適用を選択することができます。しかし、サウジアラビアは、強制的・拘束的仲裁の適用を選択しませんでした。

2018年9月14日、OECDは、金融取引に関するディスカッションドラフトについての意見募集に対して受領したコメントをウェブサイトに掲載しました。当該ディスカッションドラフトでは、BEPS行動8-10(移転価格の結果と価値創造の整合性の確保)に関するフォローアップ作業を取り上げています。今回の意見募集に対する関係者のコメント受付期限は2018年7月3日でした。EYのコメントについてはこちら(英文のみ)をご参照下さい。

2018年9月5日、OECDは、35のOECD加盟国および選定されたパートナー国(アルゼンチン、インドネシアおよび南アフリカ)における最新の税制改革を説明した「2018年租税政策改革(Tax Policy Reforms 2018)」という報告書(以下、「同報告書」)を公表しました。同報告書では、主要な租税政策の動向を明らかにし、BEPS措置実施の進捗状況に焦点を当てています。同報告書によると、4つのミニマムスタンダードに関する相互審査プロセスが開始され、とりわけBEPS行動4、6および13の実施に進展が見られたとのことです。行動1およびデジタル経済に起因する課題については、多くの国が間接税に関する措置を通じてすでに行動を起こしていると指摘しています。さらに、BEPS措置の実施については、MLIが果たす重要な役割を強調しており、MLIによってかなりの数の租税条約が改正されることになると述べています。

欧州連合(EU) 

2018年9月7-8日、EU経済・財務相理事会(ECOFIN)の非公式会合がオーストリアのウィーンで開催されました。会合の2日目には、2018年3月の欧州委員会の提案に基づき、議題の一部がデジタル経済の課税となりました。EU加盟国の財務・経済担当大臣は、デジタル収入に一時的な課税を行う短期的解決策および法人税に新しいルールを導入する長期的解決策について議論を交わしました。

会合において、ECOFINは、デジタルサービス税(DST)の短期的解決策をできるだけ早期に実施することを支持しました。オーストリアのハルトウィグ・レガー財務大臣の発表によれば、今年中に合意に達する見込みは現実的とのことです。
また、非課税および低課税制度に対するさらなる措置を用意し、可能な限り統一されたデジタル活動への課税に関するEUの立場をOECDにおいて確立する必要があることに合意しました。これはまた、国際レベルで合意に至るまで、DSTを有効な暫定的課税措置とする「サンセット条項」を提言しているフランスとドイツの立場を明確に示しています。

アイルランド

2018年9月7日、アイルランド財務省は、EU租税回避防止指令(以下、「ATAD I」)で要求されている外国子会社(CFC)合算税制の導入に関するフィードバック・ステートメントを公表しました。フィードバック・ステートメントは、ATAD I をアイルランド法に取り入れることに関する継続的なコンサルテーション手続きの一環です。アイルランドは、ATAD I における「オプションB」アプローチを採用します。フィードバック・ステートメントでは、CFC税制の主要な技術的側面の一部に対する可能なアプローチが示されています。フィードバック・ステートメントで論じられている問題については、財務省が引き続き積極的に検討を重ねています。関係者は、2018年9月28日までにコメントを提供するよう奨励されています。EYは、財務省との対話に積極的に関与しており、書面による回答を提出する予定です。EYやその他の関係者からの意見は、10月に発表予定の2018年度財政法案に含める法案において、考慮の対象となります。

2018年9月5日、アイルランドの財務・公共支出改革相は、法人税に関するロードマップを公表しました。ロードマップは、EU指令、OECDのBEPS報告書およびコフィー氏の報告書における提言で示された様々なコミットメントの実施について、アイルランドが現在までに講じた措置の概要を示し、次のステップおよび想定される時期を明らかにしています。

ロードマップで取り上げられている主な項目は次の通りです。(i)全体的制度の礎として極めて重要な12.5%の税率の維持、(ii)移転価格規則を更新し、2020年1月1日までに法制化(OECD移転価格ガイドライン2017年版の適用を含める予定)、(iii)EUのATAD IおよびATAD IIの導入、(iv)テリトリアル制度への移行または現行の外国税額控除制度の大幅な見直しおよび簡素化という代替的な選択肢に関する検討、(v)OECDのMLIの批准を今年中に終了する方針、(vi)強制的開示制度を変更し、行政協力指令(DAC 6)に準拠、(vii)紛争解決メカニズム指令の導入、(viii)EUおよび国際的な税制上の課題への継続的な取組み(デジタル課税、EUのブラックリスト、共通連結法人税課税標準等)。さらに、財務・公共支出改革相は、CFC税制、ATAD Iで示されているオプションBの採用、利子損金算入制限、ハイブリッド防止規定、移転価格、並びにテリトリアル制度への移行又は外国税額控除制度の簡素化の可能性について、さらなるコンサルテーションを行う意向を示しました。

2018年8月30日、OECDは、BEPS行動14(紛争解決メカニズムの有効性向上)ミニマムスタンダードの実施状況に関して、第四グループの相互審査(ピアレビュー)報告書を公表しました。アイルランドは、第四グループに属する評価対象国の一つです。
全体として、報告書は、アイルランドが行動14ミニマムスタンダードの要素のほぼすべてを満たしていると結論づけています。相互審査プロセスの次の段階(ステージ2)では、ステージ1の相互審査報告書において指摘された問題点に対処するためのアイルランドの取組みがモニタリングされます。

オーストラリア

2018年8月30日、OECDは、BEPS行動14(紛争解決メカニズムの有効性向上)ミニマムスタンダードの実施状況に関して、第四グループの相互審査(ピアレビュー)報告書を公表しました。オーストラリアは、第四グループに属する評価対象国の一つです。オーストラリアはOECDに対し、行動14のベストプラクティスを採用したことに関するフィードバックも提供するよう要請したため、OECDは、相互審査報告書に加えて、ベストプラクティス報告書も併せて発表しました。

全体として、報告書は、オーストラリアが行動14ミニマムスタンダードの要素の大部分を満たしていると結論づけています。相互審査プロセスの次の段階(ステージ2)では、ステージ1の相互審査報告書において指摘された問題点に対処するためのオーストラリアの取組みがモニタリングされます。

ペルー

 2018年9月13日、ペルー大統領は、所得税法を改正する政令第1424号(以下、「同政令」)を公布しました。同政令により、過少資本税制(負債資本比率3:1)の適用範囲が一時的に拡大され、非関連者の負債も含まれるようになります。同政令が公布される前は、過少資本税制の適用対象は、関連者(関連者間ローン)から生じる利子のみでした。したがって、2019年1月1日から2020年12月31日までの間、関連者および非関連者から生じる利子のいずれにも過少資本税制が適用されるようになります。ただし、同政令には経過措置が定められており、同政令が官報に掲載された日(2018年9月13日)以前に調達した負債については、同政令が公布される前の過少資本税制が2020年12月31日まで引き続き適用されます。

さらに、BEPS行動4を踏まえて、新たな固定比率ルールを導入し、純利子費用の損金算入額をEBITDA(利子、税金、償却前利益)の30%までに制限するとしています。当該固定比率ルールは2021年から適用開始となる予定で、関連者および非関連者の負債のいずれも対象となります。損金不算入とされた利子額は、最長で4年間繰越すことが可能です。新たな固定比率ルールの適用には一部の例外があり、例えば、年間純利益が2500課税単位(約300万米ドル)以下の納税者、金融機関および公共インフラプロジェクトは適用対象外となります。

マレーシア

2018年8月、マレーシア内国歳入庁(IRB)は、MNE(多国籍企業)を登録するためのCbCR(国別報告書)登録プロセスに関するマニュアルをウェブサイトに掲載し、MNEがCbCRの作成・提出を進めることができるようにしました。マニュアルでは、CbCR登録ウェブサイトをナビゲートする方法を段階的に説明しています。

登録の適用対象となるのは、最終親会社(UPE)又は代理親会社(SPE)です。企業がUPE又はSPEのいずれかである旨をIRBに通知した場合、当該企業は通知の日付をCbCR登録フォームに入力する必要があります。

登録が完了すると、企業は登録内容をPDFファイルにダウンロードすることができます。登録が成功したことを通知するため、確認Eメールが送信されます。

グループの連結収益が基準額を上回っているマレーシア企業は、UPEやSPEではなくても、年に1度IRBに通知を行う必要があります。