BEPS update - OECD、EU、UN、オーストラリア、ベルギー、アイルランド、日本、ルクセンブルグ、タイ、英国、米国

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EY Japanの窓口

EY 税理士法人

2018年11月27日
カテゴリー BEPS

Japan tax alert 2018年11月27日号

OECD

2018年10月19日、OECD及び「採掘、鉱物、金属及び持続可能な開発に関する政府間フォーラム(Intergovernmental Forum on Mining, Minerals, Metals and Sustainable Development)」は、過大な支払利子の損金算入、鉱物輸出品の過小評価、税制優遇措置による鉱業セクターからの利益移転に途上国が対処するのを支援するため、3つの実務指針の最終版を公表しました。実務指針は、「税に関する協働プラットフォーム(Platform for Collaboration on Tax)」が、途上国が直面する優先的租税問題に関するツールキットを作成する作業を補完するものです。実務指針の暫定版について募集された関係者のコメントは、現在OECDのウェブサイトに掲載されています。また、鉱業セクターにおいて歳入が減少する他の原因に関する実務指針が追加で7つ発表される予定です(具体的には、濫用的な移転価格、租税の安定化、国際租税条約、鉱業資産のオフショア間接譲渡、金属のストリーミング取引、濫用的なヘッジ契約、不十分なリングフェンシング)。

2018年10月18日、OECDは、国別報告書の自動的交換に関する権限ある当局による多国間合意(Multilateral Competent Authority Agreement on the Exchange of Country-by-Country Reports、以下「CbC MCAA」)に署名した国・地域のリストを更新しました。今回更新されたリストによると、アンドラが2018年10月18日、サンマリノが2018年10月10日にそれぞれ署名し、CbC MCAAに署名した国・地域の総数は74になりました。

2018年10月16日、OECDは、第10回「タックストーク」をウェブキャストで配信し、租税政策・税務行政センター(Centre for Tax Policy and Administration)の専門家がOECDによる国際租税に関する作業の様々な最新情報について議論しました。ウェブキャストの議題に挙げられたのは、(i)デジタル化により生じる税務上の課題に対処する方法に関する作業の最新情報、(ii)BEPSの実施状況、(iii)税の透明性に向けた進捗状況などです。

2018年10月8日、ドミニカ共和国は、119番目の加盟国としてBEPS包括的枠組みに参加しました。BEPS参加国となったドミニカ共和国は今後、行動5(有害な租税慣行への対応)、行動6(租税条約の濫用の防止)、行動13(移転価格文書化)及び行動14(紛争解決メカニズムの有効性向上)におけるミニマムスタンダードを遵守することになります。また、他のBEPS包括的枠組み参加国と対等の立場で、残りの基準設定、並びにBEPSパッケージ実施のレビューやモニタリングに参加することになります。

欧州連合(EU) 

2018年10月8日、欧州理事会法務局は、欧州委員会のデジタルサービス税(以下、「DST」)について、意見を発表しました。DST提案は、欧州連合の機能に関する条約(Treaty on the Functioning of the European Union、以下「TFEU」)第113条に基づく暫定措置として発表されました。第113条は間接税の調和に関する条文です。第113条では、EU加盟国間で調和させることが可能な税金には3種類あり、売上高税、物品税、間接課税のその他の形態とされています。欧州理事会の意見によると、DSTはかかる3種類の税金のいずれの定義にも合致していないため、DSTの適切な法的根拠はTFEU第115条であるべきとしています。第115条は、EU域内市場の確立又は機能に直接的な影響を及ぼす一般指令を採択するための法的根拠を規定しています。しかし、EU加盟国が締結した租税条約の対象税目にDSTが含まれるか否かについては言及していません。また、比例性の原則(principle of proportionality)を分析し、DST提案は当該原則に適合していると結論付けています。欧州理事会法務局が行った評価は拘束力がないものの、DSTの技術的側面に関する懸念をさらに高めることになったことには注目すべきです。一方、指令を採択するための手続き要件は第113条と第115条で全く同じであるため、必要に応じて法的根拠を換えることは単なる形式に過ぎません。

国連(UN)

2018年10月16-19日、国連国際租税協力専門家委員会第17回会議がスイスのジュネーブで開催されました。会議では、(i)先進国と途上国間の国連モデル条約の改訂に関する小委員会の報告、(ii)途上国の移転価格に関する国連実務マニュアルの改訂、(iii)集団投資ビークルの取扱い、(iv)紛争回避及び解決、(v)デジタル経済の税務上の取扱いなどが議論されました。(v)の議題については、「経済のデジタル化に関連する税務上の課題(Tax Challenges related to the Digitalisation of the Economy)」に関する小委員会(以下、「同小委員会」)が、会議で議論するための文書を作成しました。 同文書には、経済のデジタル化に関するOECD及びEUレベルの最近の動向が記載されています。同文書で強調されているのは、OECD及びEUレベルで提案、導入された措置の背景と目的は、国連委員会の目的と異なる可能性があるということです。同小委員会が、途上国の政府及び税務当局に対するメリットについて、OECD及びEUレベルの措置を評価することもあり得ます。この作業は、デジタルサービスに対する課税や経済のデジタル化全般に関連して、途上国が直面する問題を明確に説明することから始める必要があります。この説明に役立てるため、同小委員会は、国連委員会のメンバーに対するアンケートを作成しました。アンケートは附属書1として同文書に含まれています。

さらに、会議では次の文書についても議論されました。(i)先進国と途上国間の国連モデル条約の改訂、(ii)ペーパー・カンパニーの利用を含む国際的脱税又は租税回避スキーム、(iii)開発プロジェクトに対する課税、(iv)集団投資ビークルの取扱い、(v)ロイヤルティとしてソフトウェアの支払を行う場合の課税、(vi)環境税の問題、(vii)紛争回避及び解決、(viii)途上国による採掘産業に対する課税上の論点に関するハンドブックの改訂、(ix)持続可能な開発目標の実施における課税及び国内資源の動員の役割、(x)先進国と途上国間の二国間租税条約の交渉のためのマニュアルの改訂。

オーストラリア 

2018年財政法改正(税の公正性及びその他の措置)法案(Treasury Laws Amendment (Tax Integrity and Other Measures) Bill 2018) が2018年9月20日にオーストラリア上院で可決され、2018日10月3日に女王の裁可を得て成立しました。同法案には、トラストやパートナーシップを用いた人為的なアレンジメントに関連する多国籍租税回避防止法(Multinational Anti-Avoidance Law:MAAL)の強化を含め、以前発表された3つの租税措置が含まれています。

ベルギー

2018年10月12日、ベルギーの閣僚評議会は、「税源浸食及び利益移転を防止するための租税条約関連措置を実施するための多数国間条約」(BEPS防止措置実施条約、以下「MLI」)の批准に関する法案を承認しました。ベルギーは、MLIに署名する時点で、98の対象租税条約(Covered Tax Agreements、以下「CTA」)のリストとともに、MLIの様々な規定に関する留保事項と通告事項の暫定リストを提出しています。現在、同法案は国家評議会の審査に付されており、その後、連邦議会に提出され承認される見通しです。MLIを批准するためには、更なる立法手続きが必要であり、連邦議会に加えて、5つの地域圏議会及び共同体議会すべてで承認されなければなりません。これに関連して、フランダース政府は、2018年9月に既にMLIの批准に関する条例案を公表しています。当該条例案は、批准書の寄託時にベルギーが採択する可能性の高い最終的なMLIポジションについて更なる知見を提供しています。これには、ベルギーがMLI第12条に関する留保事項を撤回する可能性が含まれています。MLI第12条は、問屋契約(commissionaire arrangements)を通じた恒久的施設(PE)の地位の人為的回避に対処する条文です。ベルギーの最終的なMLIポジションが批准書の寄託時に確定されるまで、立法手続きにおける更なる改正を注視する必要があります。

アイルランド

2018年10月9日、アイルランドの財務・公共支出改革相は、2019年度予算案を発表しました。予算演説の中で、大臣は、アイルランドの長年の12.5%の税率は変わらないことを再確認しました。また、ATADに準拠した出国税を新たに導入し、2018年10月10日から適用を開始すると発表しました。出国税は、企業が税務上の居住地をアイルランド国外に移転する場合、並びにその他の特定の資産を国外に移転する場合(すなわち、資産をアイルランドのPEから他の加盟国もしくは第三国の本店に移転する場合、又はアイルランドのPEが営む事業を他の加盟国もしくは第三国に移転する場合)に12.5%の税率で課税されます。さらに大臣は、EU租税回避防止指令(ATAD)で要求されている外国子会社合算税制(CFC税制)を導入し、2019年1月1日以降に開始する会計年度から適用することを確認しました。2018年10月18日に公表した財政法案には、出国税とCFC税制に関する詳細な規定が含まれています。

なお、政府は、移転価格条項の更新、並びにテリトリアル制度への移行又は外国税額控除制度の簡素化について、コンサルテーションを2019年に開始する予定です。

日本-スペイン

2018年10月16日、日本はスペインとの新租税条約(以下、「新条約」)に署名しました。新条約には、BEPSプロジェクトにおける租税条約に関する多くの提言、すなわち行動2(ハイブリッド・ミスマッチ・アレンジメントの効果の無効化)、行動6(不適切な状況での租税条約の特典付与の防止)、行動7(恒久的施設(PE)認定の人為的回避の防止)及び行動14(紛争解決メカニズムの有効性向上)における提言が含まれています。

新条約には新たな序文が含まれており、租税条約は、脱税又は租税回避を通じた非課税又は課税の軽減を生じさせるために利用されることを意図したものではないことを明確にしています。また、税務上透明な事業体(fiscally transparent entities)についての規定が盛り込まれています。個人以外の者が日本とスペイン両国の居住者(すなわち、双方居住者である事業体)である場合は、両国の権限ある当局が居住者とみなされる締約国を、相互合意により決定するよう努めるとしています。また、特典制限条項(LOB)と主要目的テスト(PPT)が設けられています。恒久的施設条項には、細分化防止規定及び代理人PEの新たな定義が含まれています。さらに、租税条約の下で解決できない問題がある場合、要請があれば仲裁に付託されることが相互協議手続の規定に追加されました。

日本とスペインの両国ともMLIに署名していますが、いずれの国も新条約をCTAに含めていません。従って、新条約が租税条約に関するBEPSのミニマムスタンダードを既に取り入れていることもあり、新条約がMLIによってさらに改正されることはないと思われます。

ルクセンブルク

2018年10月5日、ルクセンブルク税務当局は、国別報告書に関するよくある質問(FAQ)の更新リストを公表しました。今回の更新は、OECDがBEPS行動13の実施及び運用に関して、税務当局とMNEグループにより高い確実性を提供するために追加指針を発表したことに続くものです。今回のFAQの更新では、主に(i)配当の取扱い、(ii)合併、分割及び買収の場合に適用するべきアプローチなどの項目が取り上げられています。

タイ

2018年10月9日、タイ内閣は、現行の租税インセンティブ地域/国際統括本部制度(すなわち、地域統括事業本部(Regional Operating Headquarters、以下「ROH」)、国際統括本部(International Headquarters 、以下「IHQ」)及び財務センター(Treasury Center、以下「TC」)、並びに国際貿易センター(International Trading Center、以下「ITC」))を廃止し、単一の国際ビジネスセンター(International Business Center、以下「IBC」)制度に置き換えることを承認しました。この措置は、「有害な租税慣行-優遇税制に関する2017年進捗報告書」(BEPS包摂的枠組み:行動5)に応えるものです。同報告書の中で、タイの地域/国際統括本部、貿易・財務ハブ制度が有害な租税慣行と特定されました。ROH、IHQ、TC及び/又はITC制度の下で既にインセンティブを付与されている企業は、場合に応じて、指定された年又はそのステータスが期限切れになるまで、現行の条件に基づき租税インセンティブの対象となります。現在ROH又はIHQ/TCである企業は、そのステータスをIBCに変更することも選択できます。IBC制度の下での租税インセンティブや条件の詳細はまもなく発表される予定ですが、更なる立法過程を経る必要があります。

英国

2018年10月12日、歳入関税庁(以下、「HMRC」)は、MLIによって改正された1981年英国・セルビア租税条約の統合条文を公表しました。統合条文は、租税条約がMLIによってどのように影響されるべきかについて、英国とセルビア両国の関係当局間で合意に達した内容を反映しています。MLIは、英国とセルビア両国において2018年10月1日に発効しました。MLIの各規定の適用開始日は次の通りです。(i)源泉徴収に係る租税については2019年1月1日、(ii)法人税については2019年4月1日、(iii)英国の所得税及びキャピタルゲイン税については2019年4月6日、(iv)2019年4月1日以降に開始する課税期間にセルビアが徴収するその他すべての租税については2019年4月1日。2019年1月1日以降にMLIによって改正される予定の他の租税条約の統合条文は、近いうちに発表される見通しです。

2018年10月11日、HMRCは、MLIによって改正された2007年英国・スロベニア租税条約の統合条文を公表しました。統合条文は、租税条約がMLIによってどのように影響されるべきかについて、英国とスロベニア両国の関係当局間で合意に達した内容を反映しています。MLIは、英国では2018年10月1日、スロベニアでは2018年7月1日にそれぞれ発効しました。MLIの各規定の適用開始日は次の通りです。(i)非居住者への支払額又は入金額からの源泉徴収に係る租税については2019年1月1日、(ii)法人税については2019年4月1日、(iii)所得税及びキャピタルゲイン税については2019年4月6日、(iv)2019年4月1日以降に開始する課税期間にスロベニアが徴収するその他すべての租税については2019年4月1日。2019年1月1日以降にMLIによって改正される予定の他の租税条約の統合条文は、近いうちに発表される見通しです。

米国

2018年10月9日、内国歳入庁(IRS)は、国別報告書の自動的交換のための当局間合意(Competent Authority Agreement、以下「CAA」)の締結に向けて米国が交渉を進めている国・地域のリストにブルガリアとジブラルタルを追加しました。IRSは、米国と既にCAAを締結した国・地域、並びにCAAの締結に向けて交渉中の国・地域の最新のリストをホームページに掲載しています。IRSは現在、他の5カ国とCAAの締結に向けて交渉を進めており、締結に至った際にはホームページ上のリストを更新すると思われます。