BEPS update - OECD、アイルランド、アルゼンチン、英国、オーストラリア、オランダ、日本、米国

BEPS update - OECD、アイルランド、アルゼンチン、英国、オーストラリア、オランダ、日本、米国

EY Japanの窓口

EY 税理士法人

2018年12月6日
カテゴリー BEPS

Japan tax alert 2018年12月6日号

OECD

2018年10月29日、OECDは、税とデジタル化に関するポリシーノート を公表しました。ポリシーノートでは、デジタル経済に起因する課題に焦点を当てており、同課題に対するOECDのこれまでの取組みの概要を示しています。2018年3月に発表された中間報告書同様、ポリシーノートでは、包摂的枠組みの参加国・地域が一貫したレビューを並行して行うことに同意したうえで、OECDの電子経済タスクフォースを通じて2020年までに合意に基づく国際的施策を策定することに取り組んでおり、OECD事務局が2019年にG20に対し進捗状況を報告すると述べています。さらに、デジタル化が課税に及ぼすその他の影響についても説明しています。例えば、仕事の性質の変化による税務上の影響の理解、オンラインプラットフォームが促進する活動への効果的な課税の強化、税務コンプライアンス等に言及しています。

2018年10月23日、アンティグア・バーブーダ、ドミニカ及びセントビンセント・グレナディーンがBEPS包摂的枠組みに加わり、また10月26日にグレナダも加わり、参加国・地域の総数は123になりました。新たにBEPS参加国となったこれらの国は今後、行動5(有害な租税慣行への対応)、行動6(租税条約の濫用の防止)、行動13(移転価格文書化)及び行動14(紛争解決メカニズムの有効性向上)におけるミニマムスタンダードを遵守する方針です。また、他のBEPS包括的枠組み参加国と対等の立場で、残りの基準設定、並びにBEPSパッケージの運用に関するレビューやモニタリングに参加することになります。

最近、OECDは、BEPS包摂的枠組み参加国・地域の相互協議手続(MAP)プロファイルの新規追加と更新を行いました。今回の更新では、バーレーン、コロンビア、ドイツ、アイルランド、ルクセンブルク、南アフリカ、英国のプロファイルが更新あるいは追加されました。 

BEPS行動14の下で合意されたように、BEPS包摂的枠組みのすべての参加国・地域は、合意されたテンプレートに従ってMAPプロファイルを公表することを含め、MAPに関するミニマムスタンダードの実施を確約しています。現在、89の国・地域がMAPプロファイルを公表しており、さらに24の国・地域のMAPプロファイルが公表される予定です。アンゴラ、ジブチ、ハイチ、タークス・カイコス諸島は、現時点で租税条約が存在しないため、MAPプロファイルがありません。これらの国・地域のMAPプロファイルは、租税条約が締結された時点で公表される予定です。すべてのMAPプロファイルはOECDのウェブサイトで入手できます。

アイルランド

2018年10月26日、アイルランド首相は、アイルランド政府を代表してBEPS防止措置実施条約(MLI)を承認する政令に署名しました。同政令は、委員会段階(Committee Stage)での修正を経て、2018年財政法案に追加されます。アイルランドは、MLIに署名する時点で、71のMLIを通じて改定されるべき対象租税条約(CTA)のリストとともに、MLIの様々な規定に関する留保事項と通告事項の暫定リストを提出していますが、2018年財政法案の可決後、アイルランドはMLIの批准書をOECDに寄託する必要があります。アイルランドでMLIが発効するのは、当該証書を寄託した日から3カ月経過した日を含む月の翌月1日となります。 

2018年10月16日、アイルランド歳入庁は、ナレッジ・デベロップメント・ボックス(Knowledge Development Box、以下「KDB」)制度の適用に関する指針の更新版を発表しました。KDBは、2016年1月1日以降に開始する事業年度から企業への適用が開始されましたが、BEPS行動5の要件を考慮した制度です。KDBは、特許発明、ソフトウェア著作権、ソフトウェア(中小企業については特許を取得できる可能性のある発明に相当する他の知的財産)から生じる利益に対し、実効税率6.25%で課税することにより、革新的な研究開発(R&D)活動の奨励を目的としています。

アルゼンチン 

最近、アルゼンチン公共歳入連邦管理庁(以下、「AFIP」)は、アルゼンチンの国別報告書に関する規則について有用な情報を掲載した新しいウェブサイトを公開しました。ウェブサイトに掲載されているのは、よくある質問への回答、国別報告書のガイドラインに関する段階的な説明、有効な国際協定のリストおよび国別報告書の交換に関する権限ある当局間合意のリスト、国別報告書の作成と提出に関する法律の条文及びガイドラインなどです。なお、同ウェブサイトに掲載されている情報の中には、一般決議第4130-E号と異なるものがあることに留意することが重要です。矛盾している点の一部については、AFIPが近いうちに明確化すると思われます。

英国 

2018年10月29日、英国財務相は、2019年4月に始まる来年度の予算案を発表しました。予算案では、英国が2020年4月からデジタルサービス税(以下、「DST」)を導入することを目指していることが明らかになりました。英国は今後も国際法人税課税の枠組み改革に関する議論に参加し、DSTの導入予定時期までに多国間による提案が合意された場合は、DSTを修正するとしています。DSTは、2%に設定され(EUの提案では税率3%)、適格基準を満たす検索エンジン、ソーシャルメディアプラットフォーム、オンラインマーケットプレイスに適用されます。

また、以前に発表された通り、予算案には、EU租税回避防止指令(ATAD)を遵守すべく、英国のCFCルール、出国税ルール、特定のハイブリッド防止ルールに関する改正も含まれています。さらに、英国政府は、BEPS行動7が規定しているように、細分化防止ルールを導入することによりPE認定の人為的回避に対処する方針です。

また、BEPS行動8(無形資産(IP)の課税と価値創造の整合性)にある程度則しているとはいえ、直接対応するものではありませんが、無形資産に関連するオフショア収入に対する課税に関する新しい法律が導入されました。オフショアのIP所有者は、英国と租税条約を締結していない低税率国・地域で受領する金額について、英国の所得税が課されます。当該金額は、英国で生じた金額、すなわち、英国市場で最終的に利用されたIP権利の享受又は行使から生じた金額と見なされます。この新しい法律は2019年4月から適用される予定です。一方、租税回避防止規定は2018年10月29日から適用されます。 

オーストラリア

2018年10月25日、オーストラリア税務当局(以下、「ATO」)は、最終的な実務コンプライアンス指針(Practical Compliance Guideline)PCG 2018/7(以下、「PCG」)を公表しました。PCGは、所得税法Part IVA(オーストラリアの一般的租税回避防止規定)に対するATOのコンプライアンスアプローチ、並びにオーストラリアでハイブリッドミスマッチルールが制定されたことにより否認されるべきオーストラリア税制上の恩典を保持する効果を持つ特定のアレンジメント再構築を説明しています。

PCGは2018年8月24日に発効し、発効日以前及び以後に行われたアレンジメントの再構築に適用されます。PCGは、今後3年間にわたって引き続きレビューされる予定です。

オランダ 

2018年10月29日、オランダ政府は、EU租税回避防止指令2(ATAD 2)の導入に関するインターネットによるコンサルテーションを開始しました。コンサルテーションでは、ハイブリッドミスマッチストラクチャーに対処するための濫用防止規定が取り上げられています。これには、(i)ハイブリッド事業体、(ii)ハイブリッド金融商品、(iii)ハイブリッド恒久的施設(PE)、(iv)ハイブリッド移転、(v)輸入ミスマッチ及び(vi)双方居住者の場合に起因するハイブリッドミスマッチに対する規定の導入が含まれます。

また、オランダ政府は、米蘭租税条約のハイブリッド事業体への適用に関する政令(政令CV/BV)を2020年までに廃止する方針を表明しました。政令CV/BVの下では、(リバース)ハイブリッド事業体の投資家が条約適格者である場合、租税条約の特典(配当源泉税の軽減又は免除)が付与されます。2020年1月1日付で政令CV/BVが廃止されると、オランダ法人から特定のLP及びCVへの支払配当金は、廃止日までにアレンジメントの再構築が実施されない限り、15%のオランダ配当源泉税の対象となる可能性があります。

ハイブリッドミスマッチルール法案は、2020年1月1日付で施行される見通しですが、いわゆるリバースハイブリッドミスマッチルールは、2022年に施行される見通しです。

日本

2018年10月19日、日本とクロアチアは新たに租税条約に署名しました(以下、「本条約」)。本条約には、BEPSプロジェクトにおける租税条約に関する多くの提言、すなわち行動2(ハイブリッドミスマッチアレンジメントの効果の無効化)、行動6(不適切な状況での租税条約の特典付与の防止)、行動7(恒久的施設(PE)認定の人為的回避の防止)および行動14(紛争解決メカニズムの有効性向上)における提言が含まれています。

米国

2018年10月23日、内国歳入庁(IRS)は、国別報告書の自動的交換のための当局間合意(Competent Authority Agreement、CAA)を米国と締結した国のリストに日本を追加しました。IRSは、米国とすでにCAAを締結した国・地域、並びにCAAの締結に向けて交渉中の国・地域の最新のリストをウェブサイトに掲載しています。IRSは現在、他の7カ国とCAAの締結に向けて交渉を進めており、締結に至った際にはウェブサイトを更新すると思われます。