EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
2019年度英国財政法(以下、「財政法」)は、2019年4月1日より、特定の状況において英国企業で税務上認識されるのれんおよびその他特定の無形資産(以下、総称して「関連資産」)を対象とした新たな無形資産の償却制度を導入しました。
今般の財政法改正以前は、これらの関連資産の税務上の償却が認められていませんでしたが、2015年7月8日より前に創設又は取得した一定の無形固定資産(以下、「IFA(Intangible Fixed Asset)」)については、適格IFAに限り、税務上の償却が認められていました。
今回の改正は、多くの企業グループが知的財産(以下、「IP」)の所在地を検討している今日において、歓迎されるべきIFA制度の変更であり、英国の競争力を高めるものと捉えられています。
改正法では、2015年7月8日以降に取得した関連資産の償却を否認する従前の規則を廃止し、2019年4月1日以降に創設または取得した関連資産を対象とした償却制度を導入しています。取得した関連資産に係る償却制度は、事業において継続的に使用する適格IPを含む事業の取得の一環として、2019年4月1日以降に取得された関連資産に対してのみ適用されます。各会計期間で利用可能な最大償却率は資産の取得価額の6.5%と定められており、これは既存の償却率である4%に比して高くなります。なお、個々の状況によっては、租税回避防止規定が適用され、償却が制限される可能性がある点に留意が必要です。
関連資産とは、のれん、顧客情報及び顧客関係からなるIFA、未登録の商標または事業の過程で使用されるその他の記号、あるいはこれらの項目に関するライセンス又はその他の権利を含むと定義されています。
適格IPには、2002年以後に取得された企業活動に関連する特許、登録意匠、著作権/意匠権又またはこれらに関するライセンス(またはその他の権利)で、IFA制度上除外資産ではない資産が含まれます。
ただし、これらのいずれの権利によっても保護されていないノウハウや登録商標はIFA制度上、適格IP資産の定義から除外されている点に留意が必要です。
2019年4月1日以降に、企業が関連資産を創設又は事業買収の一環として取得した場合、企業は自動的に選択をしたとみなされ(取消不能)、会計上の償却率にかかわらず、税務上の関連資産の取得価額を年率6.5%で償却することとなります。
適格IPに係る支出に一定の乗数(現在は6)を乗じた金額が事業買収の一環として取得された関連資産に対する支出より低い場合、償却が部分的に制限される可能性があります。制限適用の有無は、次の計算式で求められる比率により判定されます。
この計算式によって求められる比率が1未満である場合、関連資産の償却額は、通常の償却額にこの比率を乗じた金額が適用されます。
事業取得以外の理由で資産が取得された場合または事業取得が事業の過程で継続的に使用するための適格IPに対する支出を含まない場合、償却は認められません。
この償却制度を活用するために、関連資産を取得する前に、当該関連資産を新設分割し、制度の濫用を防止するための規定が改正法に含まれており、この規則は、譲渡人が、その資産の取得時に取得企業の関連者たる個人である場合又は取得企業の関連者たる個人が所属する企業である場合に適用されます。このような状況において、制限適用の有無は特定の規則に基づき判断されます。
改正法には、2015年7月8日から2019年3月31日までの期間に企業又は関連者が取得した資産(償却が認められていない資産)が、新規則に基づき関連資産に該当することを防止する規定が含まれます。この規定は、その資産が2018年10月29日(予算案公表日)から2019年3月31日までの期間の任意の時点において企業又は関連者に関連する無形資産(chargeable intangible assets)に該当する場合に適用されます。
これにより、2019年4月1日より前に取得された関連資産は、その取得時に適用された税務上の取扱いを引き続き継承する必要があり、企業グループは、新規事業の買収を行う際に、これらの変更を考慮にする必要があります。
EYでは、専門チームが改正法における償却制度およびその他の適用可能な償却制度についての判断をご支援いたします。
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