OECD、金融取引に関する移転価格ガイダンスの最終版を公表

OECD、金融取引に関する移転価格ガイダンスの最終版を公表


Japan tax alert 2020年3月5日号

エグゼクティブサマリー

経済協力開発機構(OECD)は2020年2月11日、金融取引に関する移転価格ガイダンスを盛り込んだ最終報告書(以下、「本報告書」)を公表しました。本報告書は、税源浸食と利益移転(BEPS)の行動計画4と行動計画8-10に関するフォローアップ・ガイダンスとして公表されました。その目的は、「OECD多国籍企業と税務当局のための移転価格算定に関する指針」(以下、「OECD移転価格ガイドライン」)の2017年版に含まれる原則の金融取引への適用、特に第I章に基づく正確な描写の分析の適用を明確化することにあります。金融取引に関するガイダンスをOECD移転価格ガイドラインに盛り込むのは本報告書が初めてであり、移転価格の適用における一貫性を向上させ、移転価格をめぐる紛争と二重課税を軽減するのに役立つと思われます。

本報告書は、特に多国籍企業(以下、「MNE」)の資本構成との関連において、金融取引の正確な描写を取り上げています。本報告書はまた、財務機能、グループ内融資、キャッシュプーリング、ヘッジ、保証、キャプティブ保険などの金融取引の価格設定に関連する特定の問題に対処しています。さらに、関連会社がOECD移転価格ガイドラインの第I章と第VI章のガイダンスに基づいてリスクフリー収益率とリスク調整後収益率を享受する権利を有している場合における、それらの収益率の決定に関するガイダンスも提供しています。本報告書はまた、取り上げている原則を解説するために、数多くの例を掲載しています。

本報告書において取り上げられている主要な項目は、以下のとおりです。

  • 機能的な実体のないグループ内の貸し手: 企業は、金融リスクを管理しコントロールするために必要な人的機能を持たない国におけるグループ内融資からの利益があるかどうかを検討する必要があります。そのような貸し手が享受する権利があるのは、リスクフリーリターンを超えないリターンに限られ、残余リターンは投資リスクをコントロールする当事者に配分すべきものとなります。
  • 保証付き融資の実際的な描写: 別のグループ会社による保証によってのみ借入を行うことができ、単独では資金を調達できなかったであろうグループ会社に対する融資が行われたかどうかを検討する必要があります。そのような取引は、保証人に融資が行われ、その後に保証人から借り手への資本拠出が行われたものとして描写することができます。
  • 融資条件の実際的な描写: 本報告書は、取引の実際的な描写の重要性を強調しています。たとえば、10年間のタームローンは1年のリボルビングローンが10回連続したものとして描写することができ、その逆も考えられます。企業は、グループ内融資のすべての条件を検討し、それらの条件―金利だけでなく―が独立当事者間のものであることをどのように文書化するかを考慮する必要があります。
  • キャッシュプール: 本報告書は、一般にキャッシュプールリーダーが実施するのは、調整機能か代理機能にすぎないと述べています。そのように機能のレベルが低いことを考えると、サービスプロバイダーとしてのキャッシュプールリーダーの報酬も一般に、同様に限定されます。ただし、本報告書は、より多くの機能を果たすキャッシュプールリーダーが存在しうることも認めています。キャッシュプールリーダーが重要な所得を得ている企業は、ャッシュプールリーダーの従業員による信用リスク、流動性リスクその他のリスクに関するコントロール機能の実施に基づいて、そのような所得配分を裏付ける準備をする必要があります。徹底的な文書化が推奨されます。
  • 信用格付け: 本報告書は、グループ会社単体の格付けの決定と、グループに属することの効果(「ハロー効果」とも呼ばれる「暗黙のサポート」)の考慮について、詳細なガイダンスを提供しています。企業は、子会社の信用格付けを決定するためのグループのポリシーを本報告書に照らして検討し、特に経営難に陥っているグループ会社を支援する欲と能力に関するグループの見解を検討する必要があります。

※本アラートの詳細は、下記PDFからご覧ください。


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