中国、移転価格調整の支払い手続きに関するガイダンスを公表

Japan tax alert 2021年4月22日号

2020年8月に「経常項目の外貨業務ガイドライン(2020版)」(匯発[2020] 14号)(14号通達)を公布した後、中国の国家外貨管理局(SAFE)は、移転価格(TP)調整に関する海外への支払いを含む特定のシナリオに関して、銀行が従うべき支払い申請に対する審査と処理の原則および手続きに関するガイダンスを最近公表しました。SAFEはまた、サービス貿易に係る外貨の受払いに関連する様々な管理に関わる事項についても明らかにしました。

ガイダンスでは、商業取引の真実性と法的コンプライアンスを審査し、かつ外貨の受取または支払の申請内容がその根拠となる取引と一致し、それを反映していることを銀行は確認しなければならないと明確にしています。SAFEは、以下の3種類の調整について必要となる書類についても明示しています。

  • TP調整の場合、税務当局または税関当局からの書面、利益調整に係る契約書、インボイスおよびその他の関連文書などのサポートドキュメントを銀行に提出する必要があります。外貨の受払いは、元の商業取引と同じ貿易方式(貨物貿易またはサービス貿易)で処理されます。
  • コストシェアリング調整の場合、銀行は上記と同じ原則に従い、販売契約書、財務諸表、インボイス、その他の関連文書を含むサポートドキュメントを確認する必要があります。
  • その他の利益調整の場合、銀行は14号通達に規定される原則に従って、外貨の受払いの申請に対する審査を行い、処理しなければなりません。
今後の影響

SAFEの今回のガイダンスは、TP調整を含む国境を越えた取引の柔軟性が高まる良い兆候とも思われます。しかし、必要な書類に関する具体的な要求の内容は各地のSAFEや銀行に任されているため、実務的な不確実性は依然として存在します。例えば、税務当局からの書面がない場合に、納税者とその関連者が自ら行うTP調整(すなわち、TPの自主調整)に係る支払いを各地のSAFEや銀行が許可するかどうかは明らかではありません。さらに、売買取引に関連するTP調整の場合には関税と輸入VATへの影響も考慮する必要があります。

納税者は、現地の実務動向を注意深くモニターし、状況に応じて既存のTPポリシーと文書を再検討する必要があります。中国子会社との間で国境を越えたTP調整を実施しようとする多国籍企業は、関連する政府当局や銀行との交渉を支援してもらうために、専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。

本アラートの詳細は、2021年4月14日付EY Global Tax Alert「China clarifies procedures for processing payments for transfer pricing adjustments」(英語のみ)をご覧ください。


Japan tax alert 2021年4月22日号をダウンロード