Japan tax alert 2021年5月13日号
2021年4月20日、メキシコ連邦議会上院は、連邦労働法、社会保障法、国立労働者住宅基金協会法、連邦税法、所得税法、付加価値税法を変更する法案が可決しました。本案は、同年4月13日に下院によってすでに承認されており、これで議会での決議は全て完了ました。今後、法制化されるためには、行政府が官報に法律を掲載される予定です。
本労働法に関する主な変更点は次の通りです。
下請け派遣業務サービス提供の禁止。つまり、個人または法人が雇用する労働者を他人の利益のために行う派遣サービス業を禁止する。 いわゆる「特殊な下請け業務」を行うサービス業者が他の事業会社における主要な業務以外の専門サービスを提供する場合の規制と登録制度について制定する。 グループ企業間で提供されるシェアードサービスまたは補完的なサービスに関しても、サービスを享受する企業の主要業務の一部でない場合は、「特殊な下請け業務」と見なされる。 「特殊な下請け業務」に指定される場合には労働福祉省(通称STPS)に登録する義務が発生する。 「特殊な下請け業務」を提供するサービス業者がSTPSに登録後、STPSは20営業日以内に返答をする義務がある。上記期間内にSTPS登録からの返答がない場合には、申請者は3日以内にSTPSに再度返答を要求する必要がある。これらの期間を経ても、STPSからの通知がない場合は、登録はすべての法的目的のために受理されたものと見なされる。 「特殊な下請け業務」を提供するサービス業者がその義務を遵守しなかった場合には、サービス提供者、並びにそのサービスの受益者共が連帯して責任を負う。 各従業員の個別の利益分配額は、従業員の給与の3か月の合計、または過去3年間に受け取った利益分配の平均のいずれか有利な金額に制限される。(現行のルールも引き続き適用) 雇用者変更による従業者の移転を行う場合には、変更前の雇用者である法人資産の全てを変更後の雇用者へ移転する制約が追加された。 現在人材派遣形式で事業会社にサービスを提供している法人は本制度発効から90日以内に当該労働者を事業会社に移転をさせなくてはならない。その場合には人材派遣会社の資産を譲渡することなく、サービス提供者からサービス受益者に労働者を移動する必要がある。この労働者の移動に伴い、移動を受け入れる事業会社は労働者が持つ、年功序列等を含んだ既得権利をそのまま継続出来るように尊重する必要がある。 STPSは、「特殊な下請け業務」を提供するサービス業者が当局に登録する手順など、一般的な規定を本制度発効後30日以内に発表する。 「特殊な下請け業務」を提供するサービス業者はSTPS登録手続き規定が発表された後、90日以内にSTPSへの登録申請を行う必要がある。
税務に関しては、議会上院で可決した内容に変更はありませんが、「特殊な下請け業務」を提供するサービス業者は次の事項を遵守する必要があります。 「特殊な下請け業務」を提供するサービス業者は、STPSへの登録を完了させ、労働者に支払われる給料に対してCFDI(電子請求書)を発行し、各従業員給与の源泉徴収する義務が発生する。また社会保険並びに労働者住宅供給基金(通称INFONAVIT)への支払いも遵守する必要がある。従来、事業会社がサービス会社へ支払いを発生させる場合、6%の源泉徴収するVATの制度が廃止され、代わりにVAT申告と支払書追加的に受領する必要がある。
また、「特殊な下請け業務」を提供するサービス業者への支払いについては、法人税法の損金算入、VAT控除を得る為には領収書発行、適切な会計記録等を含んだ厳格な必須事項へのコンプライアンス準拠をする必要があります。
本制度の移行期間については、公的機関には2022年までの移行期間を、射止める一方で民間には90日間しか認めず、民間企業に対して移行期間が不十分であり、かつ、平等の基本的権利を侵害する可能性についても議論されています。
社会保障と労働者住宅供給基金(INFONAVIT)の主な変更点は以下のとおりです。
メキシコ社会保険(通称IMSS)
社会保険については従来より4か月ごとの登録書類の申請を行っていたが、本制度変更ではこの4か月ごとの申請期限について遅滞があった場合には、罰金として、一測定単位(通称UMA。現在位置測定単位は89.62メキシコペソ。この測定単位は随時変更する)の500〜2000倍の罰金(つまり現状では44,810.00メキシコペソと179,240.00メキシコペソの間)が課せられ、本罰金制度導入は、法令の発効から90日後から開始となる。「特殊な下請け業務」を提供するサービス業者は今回の制度による、STPSへの業者登録を行うことで、4か月ごとの書類申請が期日通りに行われているか当局より容易にモニターされる。 人材派遣会社からの労働者の移動は社会保険の観点からも90日の猶予期間があり、その期間内に社会保険の変更登録も行う必要がある。社会保険のシステム内での職種変更(例、人材派遣会社からある職種の事業会社への変更)の登録についても上記猶予期間内に申請を行う必要がある。 既存の人材派遣会社を含む下請け制度の下で運営されている会社から事業会社へ労働者の異動を行う場合、本法令の発効から90日以内に移動を行うと、以下のような社会保険におけるリスクプレミアム料率の適用を行うことが可能になる。
A. 職種が一つのみに登録されている法人については移転後に正しい職種登録を行えば、既存の社会保険に関するリスクプレミアム料率をそのまま保つことができる。(つまり、雇用者によるリスクプレミアムの増加負担がない)
B. 職種が複数登録されている法人については一つの職種に統一することのみが認められおり、その結果、リスクプレミアムが上昇する可能性もある。 また、法令発効以前より、社会保険の恩典を受けている従業員については異動による恩典を失うことがないよう、雇用主による配慮が必要となる。
INFONAVIT
INFONAVIT法上、労働者の異動に伴う新旧雇用者の連帯責任期間については、本制度の変更に伴う従業者異動の場合のみ、連帯責任期間は通常の2年から3ヶ月の期間が適用される。 INFONAVITが必要とするサービス契約や専門的な作業に関する定期的な情報提出期限は、(従来の3か月ごとから)4か月ごとに延長され、1月、5月、9月の17日がそれぞれの期限となる。本制定を適用するのは、法令の発効後60日以内になる。
議会を通過した立法プロセスとしては、官報に掲載されることとなり、立法府は現在その官報発行の準備を行っています。法案が成立すると、前述の通り、該当する法人には多大な影響があるため、人材派遣サービスを提供する会社、受ける会社ともにさまざまな法的観点からの検証を行うことが必要です。
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