EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
2021年7月14日、ドイツ財務省は2021年2月11日に公表された指針のアップデートを発表しました。この指針は、現在議論されている、知的財産の権利がドイツの登録原簿等に登録されているという理由のみでそれら権利に係る、ロイヤルティ所得及びキャピタルゲインについての非居住者への課税に関するものです(経緯に関しては、2021年2月11日付EYグローバル・タックス・アラート『German Ministry of Finance finalizes guidance on German extraterritorial taxation of intellectual property』を参照してください)。
同アップデートは、「明確に」租税条約で保護されているロイヤルティの支払いに関する遡及的免除の申請についての基準日と提出期限を実質的に延長するもので、この取り扱いは、既に支払い済み又は2022年6月30日までに支払われるものに適用されると規定しています(今回の指針のアップデート前は、基準日は2021年9月30日でした)。また、この取り扱いの主な要件である免除申請提出期限も2022年6月30日に後ろ倒しされています(これまでの期限は2021年12月31日でした)。
「域外の」知的財産取引には、ドイツに居住しない当事者間の知的財産権の使用許諾又は売却が含まれます。
ドイツの法令の文言(所得税法(ITA)第49条(1)項2f号及び6号)によると、ドイツ非居住者が、ドイツの登録原簿に登録されている知的財産(ドイツ関連知的財産)について使用許諾し又はこれを売却する場合においては、ドイツは、国内法のもと課税権を主張することができます。
この法律を素直に解釈すると、非居住者の間のみでなされた、又は売却の場合は非居住者によってなされたドイツ関連知的財産の使用許諾、又は売却取引は、ドイツの課税権の対象になり得ます。なお、同法律は関連間取引又は非関連間取引を区別していません。
ロイヤルティ所得の課税は、一般にライセンシーが源泉徴収・納付手続きをし、15.825%の源泉徴収税の形で執行されます。キャピタルゲインは、一般に売主が提出する非居住者税務申告を通じて課税されます。現在このルールを巡り議論が繰り広げられており、納税者とドイツ税務当局の双方にとって重要な問題になっています。
本指針は、次の要件を満たすとき、ライセンシーはこれまでに又は2022年6月30日までに外国のライセンサーに行なったロイヤルティの支払いに係る源泉徴収税の源泉徴収・申告・納付をしないことができると規定しています:
ある特定のライセンサーについて以上の全要件がすべて満たされる場合に限り、ライセンシーは税の源泉徴収をしないことができます。本指針はさらに、ライセンサーがライセンシーに権限を付与するときは、ライセンサーに代わってライセンシーが免除を申請できるとしています。当該ライセンスが失効しているときは、ライセンシーはライセンサーから権限の付与を受けることなしに免除を申請することができます。ただし、この場合は、(前の)ライセンサーが申請できない又は申請する意思がないことを証明できなければなりません。
また、租税条約に加えてドイツ国内の租税条約濫用防止規則を考慮に入れると、ライセンサーの実際の適用資格に疑念がある場合においては、この方法を使用することはできません。本指針によると、とりわけ、双方居住者やハイブリッド事業体の場合又は他の条件のミスマッチが存在する場合は問題となります。ロイヤルティの受取人がドイツ税制上透明なパートナーシップであるときで、パートナーレベルで要件が満たされる場合は、本指針は本免除の申請を認めています。
連邦中央税務局が源泉徴収税の免除申請を却下したときは、2月11日の指針は、当該の支払いに関するすべての源泉徴収税申告書が、その却下から1ヵ月以内に提出されなければならないと定めています。申請の却下に対して異議を申し立てたときも、この規定が適用されます。ライセンシーが本指針に基づいて源泉徴収をしなかった支払いに係る源泉徴収税のみに本規定が適用されるか否かや、本規定が「過去の」ロイヤルティの支払いにも適用されるか否かという点については、本指針は完全には明らかにしていません。
以上に説明した免除規定は、2022年6月30日以後にライセンサーが受け取ったロイヤルティの支払いには適用されません。2月11日の指針によると、その場合についてはITAの一般規定が適用されます。
今回更新された指針には、2021年2月11日付の元の指針に盛り込まれていたキャピタルゲイン取引や所得の決定に関する規定の変更は、一切示されていません(詳しくは、先に引用した2月11日付指針に関するEYグローバル・タックス・アラートを参照してください)。
租税条約で保護されている場合の遡及的免除に関する基準日と提出期限の延長は、次の点を見越した税務当局による積極的な対応です:(i)申請数が極めて多いことに鑑み、申請の処理にかかると予想される時間、(ii)2022年夏に生じると考えられる問題全体の再検討。
ただし、この点に関して新たな法案が提出されるか否かは全く不明であり、関係する企業はなおも次のステップを慎重に検討し評価する必要があります。源泉徴収税の(遡及的)免除の申請を提出するときは、却下されたときの重大な悪影響(却下後1ヵ月以内に源泉徴収税の申告書提出)に鑑みると、最大限の注意を払い確かな書類による裏付けのある申請書を準備することが不可欠であると考えられます。