Tax controversy update vol. 2 ― リスク・ベース・アプローチ(RBA)による調査選定

緊急事態宣言の解除に伴い調査官の勤務体制も在宅勤務から通常勤務へシフトするなど、税務調査が本格始動したことから、10月に入り我々のクライアントに対する事前通知も増えてきました。

そうした中、昨事務年度(今年6月以前)に事前通知を受けていたが新型コロナを理由に税務調査が仕切り直しとなったクライアントから、「緊急事態宣言が解除されたのに国税局から調査の通知がないのですが・・・」との相談を受けることが度々あります。クライアントからすれば、緊急事態宣言が解除されると直ちに税務調査を受けることになると想定されていたのでしょう。これには、いくつかの理由が考えられますが、その一つが、税務当局が調査選定においてリスク・ベース・アプローチ(RBA)の考え方を取り入れ(強化し)たことによるものと考えています。

RBAとは、「税務に関するコーポレートガバナンス(税務CG)の状況、事業内容、申告・決算内容、把握された非違の内容や改善状況など各種要素の分析に基づき税務リスクを判定し、そのリスクに応じた的確な調査選定と適正な事務量配分を実践すること」とされており、税務CGの充実に向けた取組みを行ってきた国税局調査部の特別国税調査官(特官室)所掌法人を対象に今年6月に公表されたものですが、このコンセプトは、特官室所掌の法人に限らず、他の調査部門、税務署所掌の法人に対しても適用されるものと考えています。

RBAは、新型コロナの影響を受けるなか、調査必要度が高く、深度ある調査を行う必要があると認められる法人を的確に調査選定するという、国税当局による更なる調査の重点化に向けて質への追及をより一層推進する姿勢の表れと評価しています。

- 緊急事態宣言解除後に調査の事前通知を受けられた法人様へ -
上記のコンセプトのもとで調査選定されたとの認識を持っていただくとともに、税務当局による重大な非違事項が想定されている可能性もあります。税務調査対応においては、それなりの準備と心構えが必要と考えています。


お問い合わせ先

EY Tax controversy team