EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
EYコントラバーシーチームは、税務調査対応のみならず、不服申立て、税務訴訟及び相互協議関連業務も行っています。そこで、3回にわたって国税庁の最新データを用いてこれらに関するコメントを行います。今回は、近時の不服申立てに関するものです。
国税庁が、本年6月に令和2年度における再調査の請求の概要、審査請求の概要を公表しています。
ご承知のとおり、平成28年4月1日以後の処分に係る不服申立てから、新しい国税不服申立制度が運用されています。最も大きな変更点は、旧制度において青色申告以外の者について「審査請求」を行うために必要であった「異議申立て」(現用語でいう「再調査の請求」のこと)を省略できるようになった点です。
下の表は平成26年から令和2年までの、再調査の請求と審査請求の新規発生件数の推移です。また、審査請求のうち再調査の請求を経ずに、審査請求に持ち込まれた案件(「直審」案件)の数と割合も併記しています。この表からは、ここ数年5,000件程度で推移していた新規の不服申立てが、直近2年では大きく落ち込んでいることが分かります。新型コロナウイルスの流行により、税務調査の実施自体が抑えられた影響によるものです。また、新制度になってからの直審案件の増加という点ですが、直審される割合はおおむね6~7割であり、再調査の請求をパスするのが多数派という傾向は定着したと評価できます。この評価は新型コロナウイルスの影響によっても変わらないと言えそうです。
年度(4月1日から翌年3月31日まで) |
平成26年 |
平成27年 |
平成28年 |
平成29年 |
平成30年 |
令和元年 |
令和2年 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
再調査の請求の発生件数 |
2,755 |
3,191 |
1,674 |
1,814 |
2,043 |
1,359 |
1,000 |
審査請求の発生件数 |
2,030 |
2,098 |
2,488 |
2,953 |
3,104 |
2,563 |
2,229 |
新規発生件数合計 |
4,785 |
5,289 |
4,162 |
4,767 |
5,147 |
3,922 |
3,229 |
「直審」の件数 |
- |
368 |
1,473 |
2,020 |
1,958 |
1,603 |
1,593 |
「直審」の割合 |
- |
17.5% |
59.2% |
68.4% |
63.0% |
62.5% |
71.4% |
下記国税庁公表資料より筆者作成(以下の表も同様)
(https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2020/shinsa/index.htm
https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2020/saichosa/index.htm
https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2016/shinsa/index.htm
https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2018/shinsa/index.htm)
審査請求について、平成26年から令和2年までの処理件数と認容割合をまとめたものが下の表になります。
平成26年 |
平成27年 |
平成28年 |
平成29年 |
平成30年 |
令和元年 |
令和2年 |
|
---|---|---|---|---|---|---|---|
処理件数 |
2,980 |
2,311 |
1,959 |
2,475 |
2,923 |
2,846 |
2,328 |
認容割合 |
8.0% |
8.0% |
12.3% |
8.2% |
7.4% |
13.2% |
10.0% |
コロナ禍においても、案件の処理件数に大きな落ち込みはないようです。認容割合は、おおむね10%前後で推移してきており、令和2年度は10.0%ちょうどです。認容割合の水準としては、再調査の請求とほぼ同じ水準であり、単純にどちらが勝ちやすいという比較はできません。争点は何か(例えば、単なる計算の誤りのような形式的なものか、それとも実質的な内容に係るものかなど)、専門家にかかる費用や解決までに要する時間はどれくらいかなどを総合勘案して、「直審」するかどうかを判断する必要があります。
EY Tax controversy team
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