ドイツ、重要な連邦財務省通達および判決事案他

ドイツ JBS Newsletter - 2022年1月


I. 法人税

課税オプションモデルに関する連邦財務省通達

2022年1月1日以降開始する事業年度から、人的商事会社およびパートナーシップ会社に対する新しい法人税課税オプションモデル(出資者レベルではなく会社レベルでの課税)の適用が開始されます。連邦財務省は、この課税オプションモデルの運用に関する連邦財務省通達を2021年11月10日に公表しました。

2022年法人税ガイドライン草案

2022年法人税ガイドライン政府草案(2021年10月27日付)が、各団体にヒアリングのため送達されました。草案には、収益税法上のオーガンシャフト(連結納税グループ)および公法上の法人による営利事業に関する規定の分野における法改正を受けた改定、ならびに法的環境の変化および判例に応じたさまざまな改定が盛り込まれています。

研究開発助成金に関する連邦財務省通達

連邦財務省は、施行から約2年が経過した研究開発助成金法(Gesetz zur steuerlichen Förderung von Forschung und Entwicklung)に関する包括的な適用通達を公表しました。2021年11月11日付の研究開発助成金法に関する連邦財務省通達は、研究開発助成金に関するさまざまな実体法上および手続き上、ならびに研究開発助成金の収益税法上の取扱いおよびEU助成金法上の助成対象活動(プロジェクト)にかかる疑問について広範な説明および多様な事例を盛り込んでいます。

II. BEPS

国別報告書の開示

2021年11月11日にEU議会でEU会計指令の補足に関する改正法案が採択され、連続する2事業年度における(グローバル)連結ベースの売上高が年間7億5千万ユーロを超える企業に対して国別報告書の開示が義務付けられることになります。

III. 移転価格

クロスボーダーのグループ内ファイナンス

連邦財政裁判所は、2021年6月9日付の判決において、クロスボーダーのグループ内無担保貸付金の移転価格上の取扱いに関する見解を示しています。

IV. VAT

VAT上のGutschrift(クレジットノート)に関する連邦財務省通達

連邦財務省は、受益者によるGutschrift(クレジットノート)発行を通じた精算手続きの運用に際して、不適切な売上VAT表示に伴うVAT債務(VAT法第14c条第2項)がいつ発生するのかという点に関する見解を示しました。

請求書記載事項の緩和化

税務当局は、請求書記載要件の一つである財貨の供給または役務の提供の日付に関して、直近の連邦財政裁判所判決をVAT適用通達に反映し、これらの記載がない場合も例外的ケースにおいては請求日から判断することができるとしました。

不適切な売上VAT記載の訂正のタイミング

連邦財政裁判所は、請求書に不適切に記載されたことにより、納付義務が発生した売上VATの訂正およびその還付のタイミングに関する判決を下しました。

V. 保険税

第三国に保有される恒久的施設の保険

2020年12月3日付の保険税法近代化法(Versicherungsteuerrechtsmodernisie-rungsgesetz-VersStRModG)により、自然人以外によりEEA域外に保有される恒久的施設またはその他の設備にかかる保険に対しては、保険引受人がドイツ国内に本店所在地を有する場合、ドイツで課税対象となります。連邦財務省は、2021年9月7日付通達において、特に第三国に保有される恒久的施設の保険の運用上の問題に関する見解を示しました。


VI. 不動産取得税

不動産取得税改革:経過規定に関する通達の公表

不動産取得税法の改革により、2021年7月1日以降シェアディールに関する規定が包括的に改正されました。連邦各州の上級財務局は共同通達において、法改正を受けた複雑な経過規定の運用に関する見解を示しました。

VII. 個人所得税/賃金税

電気自動車の私的利用に関する連邦財務省通達

連邦財務省は、特に、ここ数年間に行われた事業用の電気自動車およびプラグイン・ハイブリッド車両の私的利用に伴う便益の評価に関する法改正を反映した適用通達を公表しました。

従業員出資持分に関する連邦財務省通達

連邦財務省は、2021年11月16日付連邦財務省通達において、2021年6月10日に公布されたファンド立地法(Fondstandsortgesetz)により新たに規定された従業員出資持分に関する規定の賃金税上の取扱いについての詳細な見解を示しています。

2022年に適用される賃金税上の現物給与査定額
2022年に適用される外国出張時の食事手当および宿泊費の非課税限度額

VIII. 税務会計

金額的に重要性が低い場合の前払費用計上

連邦財政裁判所は、直近の判決事案において、下級裁判所と異なる見解を示し、金額的に重要性が低い場合であっても前払費用の計上が必要であるとの判決を下しました。

外貨建借入金の価値の引き上げ

連邦財政裁判所は、外貨に対するユーロの価値が、当該通貨圏の経済的または通貨政策上の指標の根幹的な変動により下落した場合には、外貨建借入金の恒常的な価値上昇に伴う評価額引き上げが認められるとの見解を示しました。この取扱いは、残存年数に関わらず、すべての外貨建借入金に適用されます。

IX. 租税通則法

税金利息の利率の合憲性

連邦憲法裁判所は、2021年8月18日に公表された決定において、税金納付利息および税金還付利息の計算に適用される月利0.5%年利6%)の利率は違憲であるとの見解を示し、立法者に対して、2022年7月31日までに2019年以降(の利息加算対象期間)について新しい法規定を定めることを求めました。連邦財務省は、上記の連邦憲法裁判所決定を受け公表した2021年9月17日付通達において、2019年1月1日以降の期間に対する利息の暫定的査定について、立法者による新規定が成立するまでの間の税務当局による取扱いを示しています。

X. 税務コンプライアンス

2020年課税年度の税務申告書提出期限の延長

ATAD導入法(ATAD-Umsetzungsgesetz-ATAD-UmsG)により、2020年課税年度の税務申告書提出期限および税金利息の加算猶予期間が法的にそれぞれ3カ月間延長されたことを受け、税務当局は運用上の問題に対する見解を示しています。

Eバランスシートのタクソノミの改訂

連邦財務省は、2021年7月9日付連邦財務省通達において、Eバランスシートの改訂データセット(バージョン6.5)を公表しました。

EUブラックリストのアップデート

EU加盟国は、2021年10月5日のEU蔵相会議(ECOFIN)での決議を受け、非協力的な国・地域のリストを改定しました。リストには、有害な租税スキームを導入している国・地域(いわゆるEUブラックリスト)、または、こうした租税スキームの改革を宣言した国・地域(いわゆるEUグレーリスト)が記載されています。

XI. 租税条約

相互協議手続きおよび仲裁手続きに関する連邦財務省通達

連邦財務省は、2021年8月27日付連邦財務省通達を通じて「相互協議および仲裁手続き(紛争解決手続き)に関するガイドライン」を改訂し、二国間租税条約、EU仲裁条約および(国内法である)EU租税条約紛争解決法に基づく紛争解決手続きに関する見解を示しました。

XII. 社会保険

2022年社会保険料算定基準額(ニュースレター本文に記載)

JBS Newsletter 2022年1月号をダウンロード