EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
3月23日、英国財務相は、2022年春季予算案を発表しました。予想通り、予算案は当面の生活費圧迫への対応策(燃料税の1年間の即時引き下げ、2022年7月6日からの所得税の個人控除額に合わせた国民保険料(NIC)の課税開始額の引き上げなど)に重点を置いたものとなりました。さらに、予想されたことですが、国民保険料の引き上げと医療・社会保障負担金の導入が予定通り実施されることが確認されました。今回の予算案では、主に英国の個人に対する生活費の圧迫を緩和することに焦点が当てられましたが、英国で事業を展開する日系企業グループにも影響を与えると考えられる長期方向性について、いくつかの示唆を与えています。
春季予算案では、政府がキャピタル・アローワンス(税務上の減価償却)制度に加える可能性のある変更の種類ついて例示しています。全体的な意図としては、これらのアローワンス額を増やすことです。政府は、これらの変更を組み合わせて実施する可能性があります。
今回検討されている変更は、一般的な工場・機械設備に対する資本的支出に関するものです。しかし、政府は、構造物および建物のアローワンス(Structures and Buildings Allowance)などの他の手当の変更や、特定の投資を対象とした新たな減免措置(指定フリーポート地域内の現行の省エネ技術に関するキャピタル・アローワンス(Enhanced Capital Allowances)の強化など)を検討する可能性があります。また、2023年4月以前の工場・機械設備投資については、現在、130%の手厚いアローワンスが設定されていることに留意が必要です。
政府は、新たに3つの発表を行いました。
これらの措置は2023年4月に施行されますが、2022年夏に発表される法案で詳細が示される予定です。
政府は、英国の研究開発費控除が、納税者にとって最も効果的で最大の価値をもたらすように、秋季予算でさらなる措置の導入を検討する予定です。これには、現在13%である研究開発費控除の適用範囲を拡大し、英国での研究開発投資を促進することを含む可能性があります。
2024年4月から所得税の基本税率が20%から19%に引き下げられますが、これは財務相の財政原則が満たされることを条件として、将来の財政法案によって実施されます。基本税率の変更は、租税条約による減免措置が適用されない場合の利息・ロイヤルティにかかる源泉税や、所得税の課税対象となる海外企業の税率にも影響を及ぼします。
政府は、英国の雇用主に対し、質の高い従業員教育を提供することを奨励するために、さらなる介入が必要かどうかを検討します。これには、職業実習賦課金の運用を含む現行の税制が、企業が適切な種類の訓練に投資するインセンティブとして十分に機能しているかどうかを検証することも含まれます。
非居住用建物の脱炭素化を支援するため、政府はイングランドにおいて、敷地内の再生可能エネルギー発電・貯蔵に使用される適格な設備・機械に対し、対象を絞った事業用資産税減免の導入、適格な低炭素熱ネットワークに対して、独自の税率法案を用いて100%の減免の導入をしています。春季予算案では、これらの措置が従来の計画より1年早く、2022年4月から施行されることが発表されました。
今回の春季予算案には、税法全体の抜本的な変更は盛り込まれませんでした。しかしながら、英国で事業を展開する日本企業は激動期を経た英国経済の回復を支援することを目的とした、今後発表される多数の重要な措置適切に対応していく必要があります。特に、英国で利用可能な優遇税制(英国のR&D救済制度の範囲のさらなる拡大や、英国のキャピタル・アローワンス制度のさらなる強化など)と、2023年4月1日から25%に引き上げられる英国法人税率の組み合わせは、日系企業グループにとって欧州事業ストラクチャーを改めて検討する機会となります。
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