中国、増値税の未控除税額還付政策の実施強化他

中国JBS‐中国税務および投資速報(日本語要約版)2022年4月

税務法規

1. 増値税

・「増値税の期末未控除税額還付政策のさらなる実施強化に関する公告」(財政部、国家税務総局公告2022年14号、以下「14号公告」)

・「増値税の期末未控除税額還付政策の実施速度をさらに加速することに関する公告」(財政部、国家税務総局公告2022年17号、以下「17号公告」)

・「増値税の期末未控除税額還付政策のさらなる実施強化に関わる徴収管理事項についての公告」(国家税務総局公告2022年4号、以下「4号公告」)


概要

小型企業と製造業などの業種の発展を支援するため、財政部および国家税務総局が2022年3月21日付で公布した14号公告、2022年4月17日付で公布した17号公告では、増値税の期末未控除税額還付政策の実施の強化および加速化について規定しています。これらは、企業のキャッシュフローの改善にもつながるものです。

未控除税額の増加額/残額の還付

14号公告および17号公告によれば、納税者は業種と規模に応じて、次のとおり未控除税額の増加額1(中国語は「増量留抵税額」)の全額還付と未控除税額の残額2(中国語は「存量留抵税額」)の一括還付を申請することができます。また、納税者の自主申請に基づき集中的な還付が実施されます。

未控除税額の増加額/残額の還付

上記の還付を受ける納税者は、以下の条件をすべて満たさなければなりません。

  • 納税者の信用等級がA級またはB級であること。
  • 税額還付を申請する前の36カ月間に、未控除税額還付、輸出税額還付の詐取がなく、増値税専用発票の虚偽発行もないこと。
  • 税額還付を申請する前の36カ月間に、脱税行為により税務機関から2回以上の処罰を受けていないこと。
  • 2019年4月1日以降、即徴収・即還付、先徴収・後還付の政策の適用を受けていないこと。

また、還付可能な未控除税額の増加額/残額の計算は次のとおりです。

還付可能な未控除税額の増加額/残額=未控除税額の増加額/残額×仕入税額の構成比率×100%

ここでいう「仕入税額の構成比率」とは、2019年4月から還付申請前の税額帰属期までに控除済みの増値税専用発票(「増値税専用発票」と記載のあるデジタル化した電子発票、自動車販売統一発票を含む)、有料道路通行費増値税電子普通発票、税関輸入増値税専用納付書、税金納付証明書に記載された増値税額が、同期間のすべての控除済み仕入税額に占める割合をいいます。

14号公告の公布後、国家税務総局は2022年3月22日付で、上記の還付政策に関わる徴収管理事項について規定した4号公告も公布しました。

納税者が未控除税額の残額の一括還付を受ける前において、未控除税額の増加額とは、当期の期末未控除税額が2019年3月31日時点の期末未控除税額と比べて増加した部分の未控除税額をいいます。納税者が未控除税額の残額の一括還付を受けた後においては、当期の期末未控除税額が未控除税額の増加額となります。

2 納税者が未控除税額の残額の一括還付を受ける前において、未控除税額の残額とは次の期末未控除税額をいいます(一括還付を受けた後はゼロとなります)。

  • 当期の期末未控除税額が2019年3月31日時点の期末未控除税額と同額かそれを上回る場合は、2019年3月31日時点の期末未控除税額
  • 当期の期末未控除税額が2019年3月31日時点の期末未控除税額を下回る場合は、当期の期末未控除税額

3 中型企業、小型企業および零細企業は、「中小企業分類基準規定」などの規定における営業収入の指標および資産総額の指標に基づき確定します。また、規定に明記されていない業種の企業は、年間の増値税課税売上高が100万元未満であれば零細企業、2,000万元未満であれば小型企業、1億元未満であれば中型企業となります。大型企業は、中型企業、小型企業、零細企業のいずれにも該当しない企業を指します。

4 製造業などの業種の企業とは、「国民経済業種分類」における6つの業種(「製造業」、「科学研究および技術サービス業」などを含む)の業務に従事することにより発生する増値税課税売上高がすべての増値税課税売上高に占める割合が 50%を超える納税者を指します。

5 未控除税額の増加額の全額還付を毎月申請することは、これまで適格の先進製造業の企業にのみ認められていましたが、14号公告の公布により、その適用範囲が拡大されました。

14号公告の全文は下記サイトからご覧ください。
http://www.chinatax.gov.cn/chinatax/n359/c5173759/content.html

17号公告の全文は下記サイトからご覧ください。
http://www.chinatax.gov.cn/chinatax/n359/c5174689/content.html

4号公告の全文は下記サイトからご覧ください。
http://www.chinatax.gov.cn/chinatax/n359/c5173765/content.html

・「増値税小規模納税者に対する増値税免除に関する公告」(財政部、国家税務総局公告2022年15号、以下「15号公告」)

・「増値税小規模納税者の増値税免除などの徴収管理事項に関する公告」(国家税務総局公告2022年6号、以下「6号公告」)

概要

小型企業の発展を一層支援するため、財政部および国家税務総局は2022年3月24日付で、増値税小規模納税者に対する優遇政策について規定した15号公告を公布しました。

15号公告によれば、2022年度において増値税小規模納税者には次の徴収率/仮徴収率の引下げまたは免除が適用されます。これには、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行に伴う支援策として2020年以降に打ち出された優遇措置の適用期間の延長が含まれます。

適用期間

増値税の法定徴収率/仮徴収率

増値税の徴収率/仮徴収率の引下げ/免除

2022年1月1日~3月31日まで


2022年4月1日~12月31日まで

3%

1%


免除

国家税務総局が2022年3月24日付で公布した6号公告では、上記の優遇政策に関わる増値税発票の発行、申告書の作成などの租税徴収管理に関する事項について規定しています。

15号公告の全文は下記サイトからご覧ください。
http://www.chinatax.gov.cn/chinatax/n359/c5173850/content.html

6号公告の全文は下記サイトからご覧ください。
http://www.chinatax.gov.cn/chinatax/n359/c5173863/content.html

国家税務総局の6号公告に関する公式解釈の全文は下記サイトからご覧ください。
http://www.chinatax.gov.cn/chinatax/n810341/n810760/c5173864/content.html
 

2. 企業所得税

・「小型薄利企業の所得税優遇政策の徴収管理問題に関する公告」(国家税務総局公告2022年5号、以下「5号公告」)

概要

「小型企業の所得税優遇政策のさらなる実施に関する公告」(財政部、国家務総局公告2022年13号、以下「13号公告」)に基づき、適格の小型薄利企業1は、2022年度に次のような企業所得税優遇政策を適用することができます。

課税所得額の範囲優遇政策

適用税率

適用期間
課税所得額(年)のうち100万元以下の部分所得額の12.5%を課税所得額とする20%2021年1月1日~2022年12月31日まで

 

 
課税所得額(年)のうち100万元超300万元以下の部分所得額の25%を課税所得額とする2022年1月1日~2024年12月31日まで

13号公告の公布後、国家税務総局は2022年3月22日付で、小型薄利企業の企業所得税優遇政策に関わる徴収管理事項について規定した5号公告を公布しました。

5号公告によれば、企業が法人格を持たない分支機構(支店)を設けている場合、総機構(本店)および各分支機構(支店)の従業員数、資産総額、年度の課税所得額を合算し、小型薄利企業の条件を満たすか否かを判断します。

また、小型薄利企業は申告表への記入のみをもって優遇政策の適用を受けることができ、事前に届出手続きなどを行う必要はありません。

5号公告では、企業所得税を予納する際の優遇政策の取扱いなどについても規定しています。

5号公告の全文は下記サイトからご覧ください。
http://www.chinatax.gov.cn/chinatax/n362/c5173859/content.html

国家税務総局の5号公告に関する公式解釈の全文は下記のサイトからご覧ください。
http://www.chinatax.gov.cn/chinatax/n810341/n810760/c5173858/content.html

13号公告の全文は下記サイトからご覧ください。
http://www.chinatax.gov.cn/chinatax/n362/c5173677/content.html

・「科学技術型中小企業の研究開発費用の割増損金算入割合のさらなる引上げに関する公告」(財政部、国家税務総局、科学技術部公告2022年16号、以下「16号公告」)

概要

科学技術イノベーションを一層支援するため、財政部、国家税務総局および科学技術部は2022年3月23日付で、科学技術型中小企業の研究開発費用の割増損金算入割合のさらなる引上げに関する16号公告を公布しました。

16号公告によれば、2022年1月1日以降、科学技術型中小企業が研究開発活動を行う中で実際に発生した研究開発費用は、無形資産を形成せず当期損益に計上する場合、実際発生額に加えて、実際発生額の100%を追加で損金算入することができます。また、無形資産を形成する場合は、無形資産の原価の200%を償却することができます1

科学技術型中小企業の条件と管理方法については、「『科学技術型中小企業評価弁法』の公布に関する通知」(国科発政2017年115号、以下「115号通達」)に従うことになります。

科学技術型中小企業が研究開発費用の割増損金算入政策の適用を受ける際のその他の要件および管理の要求については、「研究開発費用の割増損金算入政策の整備に関する通知」(財税2015年119号、以下「119号通達」) などの関連規定が適用されます。

従来の研究開発費用の割増損金算入に関する規定には次のものを含みます。研究開発費用の100%割増損金算入の規定は、これまで適格の製造業企業のみに適用されていました。

通達番号

適用される企業の類型

割増損金算入

適用期間

財政部、国家税務総局公告2021年13号(「13号公告」)

適格の製造業企業

200%

2021年1月1日~

財税2018年99号(「99号通達」)および財政部、国家税務総局公告2021年6号(「6号公告」)

その他の企業(追加控除が適用されないタバコ製造業、宿泊および飲食業、卸売および小売業、不動産業、リースおよびビジネスサービス業、娯楽業、財政部と国家税務総局が規定するその他の業種を除く)

175%

2018年1月1日~2023年12月31日まで

16号公告の全文は下記サイトからご覧ください。
https://mp.weixin.qq.com/s/tRDRzKXWnP_5BCUjcQ3kIw

115号公告の全文は下記サイトからご覧ください。
http://www.most.gov.cn/xxgk/xinxifenlei/fdzdgknr/fgzc/gfxwj/gfxwj2017/201705/t20170510_132709.html

119号公告の全文は下記サイトからご覧ください。
http://www.chinatax.gov.cn/n810341/n810755/c1878881/content.html

13号公告の全文は下記サイトからご覧ください。
http://www.chinatax.gov.cn/chinatax/n810341/n810825/c101434/c5163160/content.html

99号通達の全文は下記サイトからご覧ください。
http://www.chinatax.gov.cn/n810341/n810755/c3754895/content.html

6号公告の全文は下記サイトからご覧ください。
http://hainan.chinatax.gov.cn/xxgk_6_1/15132747.html


3. 個人所得税

・「3 歳未満の乳幼児の養育に関わる個人所得税の特別附加控除の設置に関する通知」(国発2022年8号、以下「8号通達」)

・「『個人所得税の特別附加控除運用弁法(試行)』の改正公布に関する公告」(国家税務総局公告 2022年7 号、以下「7号公告」)

概要

国務院は2022年3月19日付で、3歳未満の乳幼児の養育に関わる個人所得税の特別付加控除の設置に関する8号通達を公布しました。また、国家税務総局は2022年3月25日付で、「個人所得税の特別附加控除運用弁法(試行)」の改正に関する7号公告を公布しました。

8号通達に基づき、2022年1月1日以降、3歳未満の乳幼児がいる納税者(両親のいずれか)は、乳幼児1人につき毎月1,000元の特別付加控除を受けることができます(選択により、両親双方が乳幼児1人につき毎月各500元を控除することもできます)。

8号公告の全文は下記サイトからご覧ください。
http://www.chinatax.gov.cn/chinatax/n363/c5173945/content.html

7号公告の全文は下記サイトからご覧ください。
http://www.chinatax.gov.cn/chinatax/n363/c5173958/content.html


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