中国深圳、税関と税務局による輸入物品に対する移転価格共同管理制度の導入他

中国JBS‐中国税務および投資速報(日本語要約版)2022年5月

税務法規

1. 増値税

・「増値税の期末未控除税額還付政策の実施速度をさらに持続的に加速することに関する公告」(財政部、国家税務総局公告2022年19号、以下「19号公告」)

・「未控除税額の還付金詐取に関わる違法・犯罪行為の厳格な取り締まりに関する通知」(税総稽査発[2022]42号、以下「42号通達」)

概要

税金の還付手続のさらなる最適化を図り、企業のキャッシュフローに関わる負担を軽減するため、「財政部、国家税務総局公告2022年14号、増値税の期末未控除税額還付政策のさらなる実施強化に関する公告」(以下、「14号公告」)に基づき、財政部および国家税務総局は2022年4月17日付で、「財政部、国家税務総局公告2022年17号」(以下、「17号公告」)を既に公布しています。これは未控除税額還付政策のさらなる迅速な実施を意図するものです。

さらに財政部および国家税務総局は、2022年5月17日付で、「財政部、国家税務総局公告2022年19号」(以下、「19号公告」)を公布し、製造業など一定の業種に属する大型企業に関わる当制度の実施迅速化についても手当されました。

関連規定に基づく未控除税額還付政策のまとめ

納税者の類型

14号公告による未控除税額の還付申請時期

17号公告および19号公告による未控除税額還付政策の迅速化

零細企業

2022年4月の納税申告期より、主管税務機関に対して一括での未控除税額の還付を申請することができる。

納税者からの自主的な申請に基づき、2022年4月30日までに未控除税額の還付政策を積極的に実施する。

小型企業

2022年5月の納税申告期より、主管税務機関に対して一括での未控除税額の還付を申請することができる。

納税者からの自主的な申請に基づき、2022年6月30日までに未控除税額の還付政策を積極的に実施する。

製造業など一定の業種に属する中型企業

2022年7月の納税申告期より、主管税務機関に対して一括での未控除税額の還付を申請することができる。

条件を満たす製造業など一定の業種に属する中型企業は、2022年5月の納税申告期(14号公告では2022年7月の納税申告期)より、主管税務機関に対して一括での未控除税額の還付を申請することができる。
納税者からの自主的な申請に基づき、2022年6月30日までに未控除税額の還付を実施する。

製造業など一定の業種に属する大型企業

2022年10月の納税申告期より、主管税務機関に対して一括での未控除税額の還付を申請することができる。

条件を満たす製造業など一定の業種に属する大型企業は、2022年6月の納税申告期(14号公告では2022年10月の納税申告期)より、主管税務機関に対して一括での未控除税額の還付を申請することができる。
納税者からの自主的な申請に基づき、2022年6月30日までに未控除税額の還付を実施する

併せて、未控除税額の還付金詐取に関する違法・犯罪行為を取り締まることを目的とし、国家税務総局、税関総署およびその他4つの中央政府機関は2022年5月17日付で、税総稽「査発2022年42号」(以下、「42号通達」)を公布しました。

今回の一連の未控除税額還付政策公布以降、一部の地方税務当局から、仕入増値税額の過大計上、売上増値税額の過少計上、税額還付政策が適用される関連者への増値税専用発票の虚偽発行等の方法を通じた、未控除税額の還付金を詐取する納税者の事例が明らかにされており、一部の地方税務機関からは、42号通達に基づく関連地方通知なども公布されています。例えば、国家税務総局河北省税務局が公布した通知では、定められた期限内において、未控除税額の還付金詐取に関わる違法・犯罪行為を自主的に供述した違反者は、法律に基づき処分の軽減が可能であることが述べられています。

各関連規定の全文は下記よりご確認ください。

19号公告
http://www.chinatax.gov.cn/chinatax/n359/c5175401/content.html

42号通達
http://www.chinatax.gov.cn/chinatax/n810341/n810825/c101434/c5175454/content.html

国家税務総局河北省税務局による地方通知
http://hebei.chinatax.gov.cn/hbsw/xxgk/tzgg/202205/t20220520_3108290.html
 

2. 関税

・「関連輸入物品の移転価格協同管理に関わる事項の実施に関する通告」(深関税2022年62号、以下「62号通達」)

概要

良好な事業環境を構築することにより、納税者のコンプライアンスコストを削減するとともに、確実性および管理効率を向上させるため、深圳税関、国家税務総局深圳市税務局(深圳税務局)は関連輸入物品の移転価格協同管理(移転価格協同管理)の実施に関する事項について、「深関税2022年62号」(以下、「62号通達」)を公布しました。

関連輸入物品に対する移転価格協同管理

62号通達において言及されている「関連輸入物品の移転価格協同管理」(以下、「移転価格協同管理」)では、深圳税関と深圳税務局は企業の関連輸入物品の価格につき共同して評価を行い、協議の上で合意に達した後、企業との間で「関連輸入物品の移転価格協同管理備忘録」(以下、「協同管理備忘録」、62号通達、添付1参照)を締結し、それぞれ税関事前裁定、および税務移転価格の事前確認を行うことが明らかにされています。

申請および評価

企業が移転価格協同管理を申請する場合、深圳税関および深圳税務局に「関連輸入物品の移転価格協同管理申請表」(62号通達、添付2参照)、「税関事前裁定申請書(価格)」、「事前確認会談申請書」および関連資料を同時に提出しなければならない。深圳税関および深圳税務局は、受理した日から15日以内に共同評価を開始し、関連輸入物品の価格について企業との協議を行わなければならないことが規定されています。

備忘録の締結および執行

深圳税関と深圳税務局が合意に達した場合、企業との間で「協同管理備忘録」を締結すると同時に、深圳税関は税関事前裁定を行い、深圳税務局は税務移転価格の事前確認協議を締結します。深圳税関と深圳税務局が合意に達することができない場合、協同管理手続を終了し、かつ受理部門より書面で企業へ通知します。

企業は「協同管理備忘録」の対象期間中、各年度終了後の6カ月以内に、深圳税関と深圳税務局に対して移転価格協同管理の執行状況に関する紙ベースおよび電子データでの年次報告書を提出する義務があり、この年次報告書では、対象期間内の企業の経営状況および協同管理の執行状況を説明する必要があります。企業は「協同管理備忘録」の対象期間満了前90日以内に、深圳税関と深圳税務局に対して、更新を申請することができます。

企業への影響

今回導入された協同管理制度は、税関の移転価格分野における初めての制度的規範であり、かつ税関と税務局による移転価格分野での初めての正式な管理協力として、意義深いものと言えます。企業に及ぼす影響としては、主に以下が挙げられます。

  • 企業の移転価格コンプライアンスにおける税関、税務両面からの対応がより求められる。
  • 1回の事前対応により税関、税務の両面からの評価と確認が実現し、企業における税務コンプライアンスの予測可能性および確実性が向上する。
  • 協同管理制度は、多国籍企業の移転価格の確認、執行、その後の調整に、より明確なコンプライアンス上の施策を提供する。

62号通達は2022年5月18日より施行され、この協同管理制度の導入は、クロスボーダーでの関連当事者間取引のコンプライアンスおよび確実性の向上に寄与すると考えられます。

企業が移転価格協同管理制度の申請を希望する場合には、まず自社の関連当事者間取引に対してあらかじめ評価を行い、事前に方針を立案することが推奨されます。

62号通達の全文は下記よりご確認ください。
http://www.customs.gov.cn/shenzhen_customs/zfxxgk15/2966748/tzgg23/tztg79/4350171/index.html

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