EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
2022年7月15日、16日、インドネシアのバリ島でG201財務大臣・中央銀行総裁会合が開催されました。この会合には、G20メンバー、招待国(ウクライナを含む)、国際機関および地域機関が参加しました。会議の終わりに発表されたG20議長サマリーでは、G20/経済協力開発機構(OECD)の税源浸食・利益移転(BEPS)2.0の2つの柱からなる国際課税パッケージの合意に向けた、G20財務大臣による継続的なコミットメントが再確認されています。このサマリーには、2023年前半に多国間協定(MLC)への署名を含む第1の柱を確定し、第2の柱の下で租税条約の特典否認に関する課税対象ルール(STTR)を実施するための多国間条約に関する交渉について盛り込まれています。本サマリーは、G20議長が発表したものであり、共同声明ではありません。
この会合に先立ち、OECDは「G20財務大臣・中央銀行総裁に対するOECD事務総長からの租税報告」(G20租税報告書、もしくは本報告書)を公表し、第1の柱および第2の柱の最新動向を含む、最新の国際課税動向の概観を提供しました。G20報告書の付属資料としては、OECD事務局が2022年7月11日にパブリックコメントのために公表した「第1の柱のAmount Aに関する進捗報告書」があります2。
2022年7月11日、OECD事務総長は、2022年の議長国を務めるインドネシアで7月15日、16日に開催されるG20財務大臣・中央銀行総裁会議に先立ち、OECD税報告を発表しました。本G20租税報告書は、BEPS2.0プロジェクトと炭素緩和アプローチに関する包摂的フォーラムの立ち上げに関する最新情報を提供するとともに、税制に関する進展、および税の透明性にかかる作業の進展についても報告しています。さらに、本報告書には、OECD事務局が作成し、コンサルテーションドキュメントとして発表した第1の柱のAmount Aに関する進捗報告書が付属文書として組み込まれています3。
BEPS2.0については、グローバル税源浸食防止(GloBE)モデルルール4および関連するコメンタリー5が公表され、第2の柱に関する技術的作業が完了間近であることに言及しています。 本報告書によれば、多くの国はGloBEルールの発効を2024年に予定しており、BEPSに関する包摂的枠組みが第2の柱の実施枠組みを策定するのに十分な時間が提供できるとされています。
さらに、G20租税報告書は、第2の柱であるSTTRのモデル条項草案に関するコメンタリー、およびその実施を促進するための多国間条約草案に関する作業が進行していることに言及しています。
第1の柱に関して、G20租税報告書は、交渉が進行中であることを示唆し、年初に開催された重要な構成要素に関する一連のパブリックコンサルテーションについて、利害関係者の意見に基づいて、進展があったことに言及しています6。また本報告書では、Amount Bに関する作業も進行しており、2022年末の発表を予定していることが示されています。本報告書はさらに、2022年7月11日に発表された進捗報告書(および付属文書として添付)7に言及し、Amount Aの実施に向けて包摂的枠組みによって合意された新たなタイムラインを、現実的なタイムラインであるとしています。
税制に関する進展について、本報告書は、途上国にとって、特に現在の物価上昇の環境下では、国内資金の活性化や税の持続可能性は依然として挑戦的な分野であることに言及しています。2022年7月14日に開催されたインドネシア議長国による税制と開発に関するG20閣僚級シンポジウムでは、BEPS対策および情報交換を含む国際税制基準の実施、第2の柱の実施による途上国への影響、税務行政の改善などが、途上国支援における重点分野として挙げられました。特に第2の柱に関しては、税制上の優遇措置と国内資金の活性化に焦点を当てるべきとの意見が出されました。これらの意見は、2022年10月のG20財務大臣会合で提示される途上国と国際租税に関するロードマップの策定において検討される予定です。
税の透明性について、本報告書は、非居住者に係る金融口座情報の自動的交換のための報告制度(AEOI)基準のグローバルな実施に向けた作業が進んでおり、そのピアレビューが2022年10月のG20首脳会議までに最終化される見込みであることを示唆しています。2022年1月現在、60以上の国・地域に対して技術支援が提供されており、そのうち24カ国はAEOI基準の実施に関する支援を受けています。さらに、本報告書は、ドミニカが金融口座情報の自動的交換を開始したことにより、税の透明性基準を十分に実施していない国・地域(いわゆるOECDブラックリスト)の数が5から4に減少したことに着目しています8。
2022年7月16日、G20財務大臣・中央銀行総裁会議の閉会にあたり、G20議長が成果のサマリーを発表しました。第1の柱および第2の柱について、G20議長のサマリーでは、以下のように述べられています。
我々は、OECD/G20の2つの柱からなる国際課税パッケージの速やかな実施に対するコミットメントを再確認します。我々は、第1の柱に関する進行中の作業を支持し、共通のアプローチとしてグローバルレベルでの一貫した実施への道を開く第2の柱であるグローバル税源浸食防止(GloBE)モデルルールの完成を歓迎し、GloBE実行フレームワークの完成を期待します。我々は、OECD/G20の税源浸食・利益移転(BEPS)に関する包摂的枠組みが、2023年前半に多国間協定に署名することを含め、第1の柱を最終化し、包摂的枠組みのもとで、第2の柱の課税対象ルール(STTR)の実施のための多数国間条約の策定を可能にする交渉を完了することを要請します。
その他の税務関連の問題について、G20メンバーは、税性に関す進展について検討を強化することを再確認したことが、本サマリーにおいて示されています。加えて、G20メンバーは、地域的な取り組みを含め、国際的に合意された税の透明性基準の実施に関する進捗を支持することに言及しています。彼らは、暗号資産に関する報告枠組みや共通報告基準の修正に関するOECDでの進捗を歓迎し、その速やかな完了を呼びかけました。
G20議長サマリーには、炭素緩和アプローチに関する包摂的フォーラムへの言及はありませんが、G20財務大臣・中央銀行総裁は、国際機関とともに、気候緩和に関するハイレベルのブレックファーストディスカッションに出席し、大臣・総裁はベストプラクティス、各国の経験、気候変動に対処する国際的な取り組みの概要について共有しました。
G20財務大臣に対するOECD事務総長レポートとG20議長サマリーは、それぞれOECDの税務関連のワークストリームに関するハイレベルな最新情報を提供しています。両サマリーは、BEPS2.0プロジェクトの2つの柱の完成と実施に向けた包摂的枠組みにおいてまだやるべきことがあることを示しており、同時に、G20メンバーが作業を早期に最終化するという意思を引き続き反映させています。
企業にとって、新たなルールが自社組織に及ぼす潜在的な影響を評価し、これに付随する遵守義務を果たすために何が必要なのかを検討するなど、BEPS 2.0プロジェクトに関する進展の経過を追っていくことは重要です。さらに、影響を受ける企業は、2022年8月19日まで開催されている第1の柱の進捗報告書に関するコンサルテーションプロセスを通じて、OECDおよび各国の政策立案者と対話する機会を持つことを検討するとよいでしょう。また、企業は、OECD、G20および欧州連合における活動を含め、税制と気候変動に関する世界的な動向を注視する必要があります。
巻末注
角田 伸広 パートナー
須藤 一郎 パートナー
関谷 浩一 パートナー
西村 淳 パートナー
久保山 直 アソシエートパートナー
荒木 知 ディレクター
大堀 秀樹 ディレクター
高垣 勝彦 シニアマネージャー
野々村 昌樹 マネージャー
加藤 広紀 マネージャー
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