OECD、優遇税制のピアレビューおよび軽課税国・地域についての2022年度最新情報を発表

エグゼクティブサマリー

2022年7月27日、経済協力開発機構(OECD)は、OECD/G20税源浸食および利益移転(BEPS)プロジェクト行動5(有害税制)に基づき、各国・地域の国内法ピアレビュー結果について最新情報を発表しました。このレビュー結果は、2022年6月7日にBEPS包摂的枠組みによって承認されたものです。

最新情報では、12件の優遇税制に関する新たな判断を掲載しています。OECDのプレスリリースによると、有害税制フォーラム(Forum on Harmful Tax Practices:FHTP)が319の税制について、レビュー中もしくはレビューを実施しました。アルメニアの2件の税制とパキスタンの1件の税制は「潜在的に有害」と分類され、FHTPがさらに評価を継続する予定です。新たな判断が公表された残り9件の税制は、すでに廃止、改正中もしくはレビュー中、もしくは「有害ではない」と考えられています。FHTPは今後もレビューを継続し、定期的に最新情報を提供する予定です。

また、包摂的枠組みは、以前特定された軽課税国・地域における実質的活動要件の有効性に関する最初の年次監視プロセスについての結論を示しました。12カ国・地域のうち8カ国・地域で問題が見いだされ、勧告がなされました。

詳細解説

「軽課税」国・地域に対する実質的活動要件

2018年11月、包摂的枠組みは法人税を課さない国・地域に適用する実質的活動に関する基準を採用しました。この基準は、名目的に法人税を課していると見なされている国・地域についても適用されます。FHTPは、この実質基準を満たすのに必要な国内法の枠組みを持たない12の「軽課税国・地域」を特定しました。それは、アンギラ、バハマ、バーレーン、バルバドス、バミューダ、イギリス領ヴァージン諸島、ケイマン諸島、ガーンジー島、マン島、ジャージー島、タークス・カイコス諸島、アラブ首長国連邦(UAE)です。

実質的活動要件に関する基準の実施を監視するために、FHTPは、基準の実際の有効性を評価する年次監視活動を行っています。FHTPがこの活動を開始したのは2021年のことで、現在、初回監視年度の結果を公表するに至っています。アンギラ、バハマ、バルバドス、タークス・カイコス諸島については、次回監視年度までに大幅に改善すべき領域が特定されました。バーレーン、バミューダ、イギリス領ヴァージン諸島、ケイマン諸島は、特定の領域に関して集中的に監視する国・地域として特定されました。ガーンジー島、ジャージー島、マン島、UAEについては問題は見いだされませんでした。

今後の影響

最後に、BEPS2.0第2の柱に基づいて提案されたグローバル・ミニマム・タックス・ルールが実施された場合、第2の柱のルールの適用対象となる多国籍企業(MNE)グループにとっては、当該ミニマム・タックス・ルールと優遇税制や軽課税国・地域の相互関係が問題になります。軽課税国・地域で事業を行う、もしくは各国において優遇税制を利用するMNEは、第2の柱の導入に関する動向を注視するとともに、自身のグローバル税務ポジションへの潜在的影響について検討すべきと考えられます。

本アラートの詳細は、2022年7月29日付EY Global Tax Alert 「OECD releases 2022 update on peer review of preferential tax regimes and no or only nominal tax jurisdictions」(英語のみ)をご覧ください。

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