EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
2022年12月8日、欧州委員会(以下、「委員会」)は、「デジタル時代におけるVATパッケージ」を提案しました1。これは、今年初めに行われたコンサルテーションに続くものです。
この変更は、EUのVATギャップ(最新のVAT Gap figuresの数値によると、2020年のVAT収入は930億ユーロ)を削減し、企業にとってVAT制度を効率的にすることを目指しています。委員会の提案は、以下に要約する3つのトピックをカバーしています。
新制度は加盟国にリアルタイムで情報を提供するために、域内取引に関するVATデジタル報告を導入します。企業には欧州基準に基づき、コミュニティ内の供給に関して電子インボイスが義務付けられます。報告された情報は、税務当局間で共有され、共同で分析されることになります。
委員会は、商品・サービスの国境を越えた取引に関する情報をリアルタイムで入手できるようにすることが、VAT未納詐欺への対処に役立つと考えています。加盟国にはまた、国内のB2B取引について、国境を越えた電子インボイスと同じ欧州基準に従った電子インボイス作成義務を導入する選択肢が与えられます。委員会は、2028年までに、さまざまな加盟国における既存のデジタル報告要件が、今回提案された要件に収斂していくことを期待しています。
委員会は、この分野では現在のVAT制度が、個人および小規模企業がプラットフォーム経済を通じてVATなしでより多くの顧客層にサービスを供給できるという不公平を生み出していることを認識しています。この分野におけるもう一つの課題は、基礎となる供給者の状況に関する情報が入手できない、またはプラットフォームによる「斡旋サービス」の課税関係について採用した解釈が加盟国によって異なるという状況に対し、正しいVAT処理を決定することです。
委員会は、こうした問題は、みなし供給者モデルを導入することで解決できると考えています。これはサービス提供者が小規模事業者や個人事業者であるなどの理由でVATを徴収しない場合に、VATの徴収と税務当局への納付をプラットフォームに義務付けるというものです。提案ではまた、税務当局に情報を提出するためのフォーマットと期間を標準化し、B2BとB2C両方の供給を情報報告に含めることを求めています。
提案では、オンラインショッピング企業向けにすでに存在する「VATワンストップショップ」(OSS)モデルに基づき、OSSの範囲を拡大し、消費者への販売過程におけるある加盟国から他の加盟国への在庫の移動など、追加の取引をOSSの範囲に含めることにしています。これは、消費者向けの販売を行う企業が、EU全域でVAT目的の登録を一度だけすればよい場合があることを、実質的に認めるものです。この提案はまた、供給者の設立地ではない加盟国で販売が行われる場合に、B2Bの顧客がリバースチャージの仕組みを利用することを可能にするものです。
さらに、これらの提案は、EUにおける商品の販売を促進するオンラインプラットフォームに対し、次のような変更を求めています。
この提案は、VAT指令(2006/112/EC)、理事会施行規則(EU 282/2011)および行政協力に関する理事会規則(EU 904/2010)の3つのEU法の改正という形をとっています。
この法案は、同意を得るため理事会に送られ、その後欧州議会および経済社会委員会に送られ協議されます。
EUで事業を行う企業は、特に電子インボイスの標準化に必要なシステム変更について、発効後の変化への準備を検討し始める必要があります。簡素化制度(OSS)が実施された場合、企業は報告義務を合理化することができます。
巻末注
岡田 力 パートナー
古市 泰之 シニアマネージャー
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