インド、2023年度予算案の概要

最新の重要な政策動向
  • 経済調査報告(Economic Survey)に示された、基本シナリオとなる実質国内総生産(GDP)成長率見通しは6.5%です。
  • 資本支出とインフラ整備の推進―2023/24年度予算案におけるインド政府の歳出総額は前年度比7.5%増となりました。このうち、2023/24年度の資本支出予算は前年度比37.4%増と大幅に増額されています(インフラセクターの開発に10兆ルピーを計上、鉄道には過去最大の資本投資となる2兆4,000億ルピーを配分)。
  • 可処分所得の増加、特に税率等級の調整による低位中所得層の可処分所得の増加が、民間最終消費支出を後押ししています。
     
投資家および取引に影響を及ぼす事項
  • 現行のエンジェル税は、株式発行時に居住者から公正市場価値を上回る対価を受領した民間企業に適用されています。これらの規定を拡大し、国内企業による株式発行時における非居住者からの対価を対象に含めることが現在提案されています。
  • 適格な「スタートアップ企業」は、一定の条件下で、法人設立の年から最大10年間(7年間から延長)、欠損金繰越しの恩典を受けることができます。
  • 不動産投資信託(ReiT)/事業信託(Business Trust)の所得―現行のルールにおいて、事業信託のレベルでパススルーの取扱いを認められ、ユニット保有者のレベルで課税されているのは、利子、配当および賃貸所得です。これに関して、事業信託により分配されたあらゆる金額(利子、配当および賃貸所得以外)を「その他の源泉からの所得」としてユニット保有者のレベルで課税することが現在提案されています。ユニットが償還される場合、かかる分配は、取得費の額分減額されます。
  • 政府または公共セクター企業による戦略的ディスインベストメント後の旧公共セクター企業の合併(所定の日から5年以内に行われる場合)について、累積損失の繰越しおよび未吸収の減価償却費の繰延べが認められます。
  • 税法の既存の規定では、ミューチュアルファンドの特定のユニットまたは特定の企業から得られた非居住者の所得の源泉徴収税率を20%と定めています。支払者による源泉徴収の段階で、軽減税率を定めた租税条約の恩典は考慮されません。上記の支払いをめぐる源泉徴収税額の確定にあたり、支払者が租税条約の恩典を考慮すべきものとすることが現在提案されています。
  • 利子の損金算入制限(過少資本税制)に関する規定の適用対象からノンバンク金融会社(NBFC)を除外することが提案されています(現在この恩典が認められているのは、銀行および保険業を営むインド企業、または外国企業の恒久的施設のみです)。
     
国際金融サービスセンター(IFSC)(GIFTシティ)に関する施策および優遇措置
  • IFSCは政府の重点分野の1つに掲げられており、区域内における事業の立上げや運営を容易にするさまざまな政策が講じられています。
  • インド国外からIFSCへのファンドの移転を促すべく、IFSC内に設置される新ファンド(Resultant Fund)に対する元ファンド(Original Fund)の資産の非課税譲渡に係るサンセット条項を、2023年3月31日から2025年3月31日に延長することが提案されています。
  • 海外デリバティブ商品(ODI)の譲渡における二重課税を排除するための法改正が提案されています。
  • IFSC内の外国銀行のユニットによる買収ファイナンスの実施が認められることになりました。
     
法人税
  • 法人税率、およびコンプライアンスの負担軽減の方針に変更はありません。
  • 中小零細企業(MSME)に対する支払いの損金算入は、実際の支払ベースに限り認められることになります。
  • 推定課税制度(鉱油の採掘もしくは生産、またはターンキー電力プロジェクト建設事業に従事する非居住者を対象とする)に基づいて課税される特定の非居住者について、未吸収の減価償却費および繰越欠損金の相殺がなくなります。
  • スタートアップ企業のタックスホリデーのサンセット日(適格な法人設立の期限)が、2023年3月31日から2024年3月31日に延長されました。
  • 居住者に支払われる上場社債の利子に係る源泉徴収税の免除が廃止となります。
  • オンラインゲームの賞金純額への課税、および関連する源泉徴収義務について、新たな規定が提案されています。
     
間接税

物品サービス税(GST)

  • 企業の社会的責任に関連する活動に使用される物品またはサービスについて、仕入税額控除(ITC)が利用できなくなります。
  • 供給を行わずにインボイスを発行した場合を除き、訴追開始の最低基準額が1,000万ルピーから2,000万ルピーに引き上げられます。

関税

  • 関税率構造の改正の一環として、多数の物品に対する関税が引き下げられます。
  • 識別されたカテゴリー(FTAに基づく輸入、再輸入、外国貿易政策の諸制度に基づく免税、個人の手荷物等)について、特定の関税免除にあたり設けられた2年間の有効期間が適用されなくなります。
  • 紛争解決委員会(Settlement Commission)は、申請が行われた月の末日から9カ月以内に命令を発出することになります。かかる命令が発出されない場合、当該手続きは中止されます。

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※所属・役職は記事公開当時のものです