OECD、第2の柱GloBEルールの運用指針を公表(後編)

  • 2023年2月2日、経済協力開発機構(OECD)は、第2の柱であるグローバル税源浸食防止(GloBE)ルールに関する運用指針を公表。
  • 本運用指針は、(i)範囲、(ii)所得および税、(iii)保険会社に対する適用、(iv)移行措置、(v)適格国内最低トップアップ税に関して取り上げている(本アラートは後編として(iv)移行措置、(v)適格国内最低トップアップ税について解説している)。
  • 本運用指針は、GloBEルールの解釈および運用に関する重要な追加情報を提供、グローバルミニマム課税パッケージの主要な構成要素である。

2023年2月2日、OECDは、OECD/G20税源浸食と利益移転(BEPS)で承認された第2の柱GloBEルールに関する運用指針を公表しました。この文書は、GloBEモデルルールとそれに関係するコメンタリーについて追加指針を提供するものです。本指針は、コメンタリーの追加やその他の修正という形で、今年末に公表されるコメンタリーの改正版に組み込まれる予定です。

本運用指針は、さまざまな技術的問題を対象としており、以下のセクションで構成されます。

  • セクション1 – 適用範囲
  • セクション2 – 所得および税
  • セクション3 – 保険会社に対する適用
  • セクション4 – 移行措置
  • セクション5 – 適格国内最低トップアップ税

本アラートでは、セクション4の「移行措置」およびセクション5の「適格国内最低トップアップ税」について解説します。また、セクション3の「保険会社に対する適用」のうち、3.5「短期ポートフォリオ所有持分に関する簡素化」については、保険会社以外の一般の事業会社にもあてはまりますので、その内容についても解説します。

※ 前編保険会社編はこちらをご参照ください。

セクション 4 – 移行措置

この運用指針のセクションでは、GloBEモデルルール第9章(移行措置)について述べています。

4.1. 第9.1.1条に基づく税額控除に関する繰延税金資産

GloBEモデルルール第9.1.1条に含まれる移行措置は、ある国・地域における企業グループの実効税率(ETR)を評価する際に、繰延税金会計の使用を認めるものです。このルールによれば、企業グループは、GloBEルールが適用される最初の年(移行年度)において、すべての構成事業体の財務諸表に反映または開示された繰延税金資産(DTA)および繰延税金負債(DTL)を、最低税率と国内税率のいずれか低い方で考慮することになります。

本コメンタリーでは、GloBEルール発効前に存在した繰延税金資産負債がGloBEルール適用年度の財務会計上適用されている場合、当該繰延税金資産負債はGloBEモデルルール第4.4条の適用に利用可能であり、国・地域別のETRを評価する際に考慮することを明確にしています。一方で、第4.4条では、一連の調整事項を定めています。第4.4.1条(e)では、税額控除の発生ならびに使用に係る繰延税金費用を除外しています。

本運用指針では、税額控除に関する既存のDTAを移行年度以降の国・地域別のETRの計算に利用することを第9.1.1条が認めているのかについて説明を求められていることが示されています。さらに、繰延税金会計上の金額を決定するために、第4.4条(および、第4.4.1条(e)に定められているその他の調整も考慮すべきかについて説明を求められていることが示されています。

本運用指針では、繰越税額控除に関するDTAは、GloBE上の調整後対象税金を計算する際に考慮することが明確にされています。国内税率が最低税率と同等かそれ以上の場合には、複雑さを避けるために、FTCsを含む税額控除に関するDTAを再計算する簡素化されたアプローチが組み込まれています。適用される国内税率が最低税率より低い場合には、再計算は認められません。このようなDTAの再計算の金額は、以下の計算式に従って決定されます。

国内適用税率は移行年度の前事業年度に適用された税率ですが、翌事業年度以降に税率が変更された場合は、税額控除の残高を再計算する必要があります。

また、本運用指針では、このような既存の税額控除が確定または使用された場合のさらなる明確化を求めており、以下のように定めています。

  • 第4.4.1条(e)は、移行年度の前に発生したそれらのDTAには適用されません。
  • 移行年度の開始前に財務会計上、所得として計上された還付可能税額控除(適格還付可能税額控除と非適格還付可能税額控除の両方)は、調整後対象税金の減少として処理すべきではありません。
  • 第9.1.2条に定める場合を除き、第9.1.2条に従ってGloBEに組み入れられた繰延税金資産負債は、GloBE所得から除外された項目に関する第4.4.1条(a)、(b)、(c)または(d)に定める繰延税金費用、税金費用として認められない税金引当および未申告の税金費用、評価引当金または未認識の繰延税金資産、国内税率の変更による再評価、または、第4.4.4条(DTLが5年以内に支払われなかった場合の再計算)の調整を受けることはないものとされています。第9.1.1条では、移行年度の期首の構成事業体の繰延税金資産負債には、未認識のDTAが含まれます。
4.2. 資産譲渡に類似する取引への第9.1.3条の適用

GloBEモデルルール第9.1.3条に基づき、2021年11月30日以降、移行年度の開始前までに構成事業体間で資産譲渡が行われる場合、取得した資産(棚卸資産を除く)の基準額は、譲渡側事業体における当該譲渡資産の処分時の帳簿価額に基づいて決定されるものとし、GloBEに基づく算定に含められるDTAおよびDTLはその基準額に基づき決定されます。

本運用指針では、資産譲渡と同様の方法で計上される(すなわち、企業グループが資産の帳簿価額を付しまたは増加させる)すべての取引や企業再編は、その形態、事業体内または事業体間で行われるかどうかにかかわらず、第9.1.3条上、資産譲渡とみなすべきとされています。

本運用指針では、「資産譲渡」には、取得側の事業体が財務会計上の資産の帳簿価額を増加させ、譲渡側の事業体がそれに対応する金額を移行年度前の期間に収益認識するような譲渡が含まれると定められています。このルールは、企業グループがグループ内取引を原価で計上し、国内法の下で帳簿価額と課税標準の差額に基づくDTAが発生する場合、および、同一事業体内の譲渡またはみなし譲渡にも適用されます。

運用指針では、第9.1.3条が適用されるべき状況について、以下の設例を設けています。

  • 資産の売却
  • 資産の購入と同等または類似の方法で会計処理されるキャピタルリース
  • 会計上、実質的に売却として取り扱われるライセンス
  • 支配持分の売却による資産の譲渡
  • ライセンサー/賃貸人が前払費用を所得として計上し、ライセンシー/賃借人が適用する財務会計上、資産を資産化および償却する場合のロイヤリティまたは賃料の前払費用
  • 原資産が生み出すインカムゲインおよびキャピタルゲインに対する権利を取得した事業体の財務諸表に当該原資産を移転するトータル・リターン・スワップ
  • 企業グループが移転資産の税務上の取得簿価または帳簿価額(例えば、資産の公正価値に基づく)のステップアップを受ける事業体
  • 事業体が原資産の公正価値の変動に関連する損益を計上し、それに対応する当該資産の帳簿価額の調整を行う公正価値会計への変更
4.3. 第9.1.3条に基づく資産の帳簿価額および繰延税金

このセクションでは、GloBEモデルルール第9.1.3条について、企業グループが2021年11月30日以降、かつ移行年度の前に譲渡した資産について、その結果から生じる利益をGloBE所得の計算に含めず、ステップアップを防止するための追加指針を提供します。

本運用指針では、移行年度の期首にGloBE上で使用すべき帳簿価額は、譲渡日における譲渡資産の処分時の帳簿価額に、取引後、取得側事業体がGloBEルールの適用を受ける前の資本的支出、償却または減価償却を調整したものです。

原価で計上される取引について、追加指針では、本条の範囲において、企業グループが資産の譲渡に関連して生じたDTAを、譲渡者の帳簿価額と取得側の事業体の課税標準との差額に基づいて計上できないことを明確化しています。譲渡時にすでに存在していたDTAおよびDTLを、その後の資本的支出、償却および減価償却の影響を調整し、最低税率で再計算したものは、移行年度以降に第9.1.1条の下で考慮されます。

さらに運用指針では、処分による利益が譲渡側事業体の課税所得に含まれるため、譲渡側の事業体が当該取引に関する税金を支払った範囲内でDTAを考慮することができることを明確化しています。このことは、第9.1.1条で考慮されるべきDTAが、譲渡側の事業体に取り崩され、または計上されなかった場合(その他の税効果)の範囲にも適用されます。例としては、利益が繰越欠損金と相殺され税金を支払わなかった場合が考えられます。

本運用指針では、立証責任は企業グループ側にあるとしています。

  • 取引に関連して支払われた税金
  • その他の税効果の金額
  • 取引に起因し、第4.3条の税の配分ルールにより譲渡側事業体に配分されたであろう対象税額(例えば、PEs、課税上透明な事業体、ハイブリッド事業体、CFC税)

また、簡素化された措置として、上記のようにDTAを計算する代わりに、買収企業が財務諸表上、公正価値で取引を計上した場合、最低税率に当該資産の国内課税標準と第9.1.3条に基づいて決定された当該資産のGloBE帳簿価額の差を乗じたDTAを考慮する権利があれば、当該資産の財務諸表に反映された帳簿価額をGloBE上で使用できることを定めています。

セクション 5 - 適格国内最低トップアップ税

この運用指針のセクションでは、国内最低税がGloBEルールと「同等」であるため、適格国内最低トップアップ税(QDMTT)に該当するかを判断するための一般原則を定めています。国内最低税がGloBE上のQDMTTとして認められるかは、企業グループにとって重要な問題です。なぜなら、QDMTTで支払う税金は、GloBEルールの下で決定されるトップアップ税と完全に相殺することができるためです。一方、非適格の国内最低税は、対象税金として取り扱われ、国・地域別のETRの計算には(分子レベルで)含まれるのみであり、あまり利点はありません。

本運用指針では、包摂的枠組みは2023年に、ある国の国内最低税がQDMTTとして取り扱われるべきかを評価するための多国間レビュープロセスを策定すると定めています。GloBEルールとの同等であるための新しい指針は、そのプロセスの策定に適用されます。

運用指針では、包摂的枠組みがQDMTTセーフハーバーの策定についてさらなる作業を行うことが示唆されています。

運用指針には取り上げられていない、国・地域の観点から国内法的枠組みを考慮したQDMTTにおける所得と税のブレンド、フロースルー事業体および投資事業体を含む税の中立性と分配税制の取り扱い、および無国籍構成事業体の取り扱いを含む、QDMTTの設計および運用に関する更なる指針を検討するとしています。

運用指針では、第10.1条に係るコメンタリーのパラグラフ118(QDMTTの定義)を、新たにパラグラフ118.1から118.53(新たなパラグラフ)に置き換え、QDMTTにおける「GloBEルールとの同等であること」の意味を説明しています。

この新たなパラグラフで述べられている原則は、国内の最低税が同等であるとみなされるために、その設計がGLOBEルールの設計と一致するように、また、GLOBEルールの下で生み出される国・地域の結果と一致するように、設計、導入および運用されなければならないということです。具体的には、国内最低税は、GloBEルールの仕組みに沿ったものでなければならず、当該国・地域に係るトップアップ税の増加分が、GloBEルールの下で決定されたトップアップ税を下回る結果とならないように体系的に構成されていなければなりません。このように、国内最低税とGloBEルールとの結果の差異が、GloBEモデルルールおよびコメンタリーの下で予想されるよりも、体系的に大きな租税債務の増額をもたらすか、体系的に低い租税債務をもたらさない場合、当該国内最低税がQDMTTとして扱われことを妨げるものではありません。 

また、この新たなパラグラフでは、QDMTTが同等であるとの結果(同等性テスト)を得るために、GloBEモデルルールの各章にどの程度準拠する必要があるかについて説明しています。

第1章 適用範囲

GloBEルールと同等であるためには、GloBEモデルルール第1.1条に定める750百万ユーロの閾値が満たされたとみなすため企業グループの国内構成事業体にQDMTTを適用する必要があります。しかし、750百万ユーロの閾値を満たさない企業グループや、外国企業を持たない純粋な国内グループにまでQDMTTの適用を拡大しても、GloBE上の同等性が損なわれるような結果を招くことはありません。

QDMTTの定義に関連する運用指針の新しいコメンタリーには、構成事業体、少数被保有の構成事業体(MOCE)、ジョイントベンチャー(JV)へのQDMTTの適用に関する具体的な指示も記載されています。

  • 構成事業体の適用範囲:企業グループの構成事業体のうち、GloBEモデルルールに基づき決定された国・地域に所在する事業体に対してQDMTTを適用しなければなりません。当該税は、そうしたすべての構成事業体に適用しなければなりませんが、その国・地域の法律で課税対象になっていない構成事業体に対しては、課税をする必要はありません。

  • MOCE:同等であるために、QDMTTはMOCEに対するGloBEモデルルールの特別な取り扱いに従い、これらの事業体のETRおよびトップアップ税の金額を個別に決定する必要があります。

  • JV:GloBEモデルルールでは、JVおよびJV子会社のETRおよびトップアップ税は、同じ国・地域に所在する構成事業体のETRおよびトップアップ税とは別個に計算され、その結果はブレンドETRおよびトップアップ税の計算結果と異なる可能性があります。従って、GloBEモデルルールと同等であるためには、QDMTTは、JVおよびJV子会社のETRおよびトップアップ税の金額も個別に決定する必要があります。また、QDMTTを導入している国・地域では、GloBEモデルルールのJVおよびJV子会社に対する特別な取り扱いに従い、当該国・地域に所在するJVおよびJV子会社に対してQDMTTの税負担を課さない(当該JVおよびJV子会社に対して計算されるトップアップ税はGloBEルールに従う)ことが可能です。また、JVおよびJV子会社に対して計算されたQDMTTの租税債務を、国・地域内に所在する企業グループのその他の構成事業体に対して課すことも可能です。
第2章 賦課規定

QDMTTの定義に関する新しいパラグラフでは、主に外国の構成事業体の所得について適用される所得合算ルール(IIR)および軽減税支払いルール(UTPR)と異なり、QDMTTは国内構成事業体に対してのみ適用されることが示されました。そのため、GloBEモデルルール第2条の賦課規定はQDMTTには適さないものと考えられます。したがって、QDMTTは、第2条の賦課規定に代えて、国内親事業体を含む全ての国内構成事業体の超過利益について、1つ以上の国内構成事業体に対してトップアップ税を課す必要があります。

QDMTTで課せられるトップアップ税は、企業グループの親事業体がQDMTTが課される国・地域にある構成事業体に対して保有する所有持分にかかわらず、GloBEモデルルールの第5.2.3条で算出される国・地域別トップアップ税の総額が課されます。従って、状況によっては、QDMTTはGloBEモデルルールの下で課されるはずの租税負債を上回ることがあります。このような結果を望まないのであれば、その国・地域にあるすべての構成事業体が、UPEまたは部分被保有親事業体(POPE)によってすべての会計年度にわたって完全に所有されている企業グループに対してのみQDMTTを選択適用することも可能です。

運用指針に含まれる新しいパラグラフでは、いかなる国・地域においても、QDMTTまたはGloBEモデルルールに関連する利益の供与を禁止しています(例えば、直接、間接的を問わず、QDMTTを企業グループに払い戻すことはできません)。新しいコメンタリーでは、QDMTTに関連しているとみなされる種類の利益の特定に関して、包摂的枠組みはさらなる指針の提供が示唆されています。

第3章 GloBE所得または損失

新しいパラグラフでは、QDMTTとの同等性テストについて、以下のように規定しています。

  • 財務会計基準:QDMTTの定義では、認められる財務会計基準または重大な競争上の歪みを防ぐために調整された公認の財務会計基準のいずれかを用いて、国・地域における損益を計算することが認められています。GloBEルールにおける重大な競争上の歪みの定義に含まれる1会計年度7,500万ユーロという閾値は、企業グループ全体に対して設定されているため、そうした点を踏まえ、包摂的枠組みは、重大な競争上の歪みに関してより強固な定義の必要性を検討しています。QDMTTは個々の国・地域に適用されるため、包摂的枠組みは、GloBEモデルルールと整合的な結果を得るために、より低い閾値について検討しています。

  • 現地通貨と報告通貨:QDMTTは、GloBE情報申告書に用いられるのと同じ為替換算方法に基づいて計算されなければなりません。しかしながら、国・地域によっては、QDMTT申告書作成のため企業グループに対して、GloBE情報申告書で報告された通貨を現地通貨に換算することが求められます。このような場合に本コメンタリーでは、QDMTT申告期限に関連する影響が生じる可能性があると言及しています。

  • 永久差異:QDMTT上の所得および税金の計算は通常、GloBEモデルルールを反映しなければなりませんが、次のような状況では変更が認められます。第一に、GloBEモデルルールよりQDMTTを厳しく制限することは、現地の課税ルールと整合性がある場合には許容されます(例えば、法人税で罰金および科料を控除できない国・地域では、QDMTTでも同じ基準を適用可能)。第二に、GloBEモデルルールの第3章に規定の調整項目のうち、国内税制度と関連性がない項目については記載する必要はありません。

  • 恒久的施設の所得:ある国・地域のQDMTTは、同等とみなされるために、GloBEモデルルール第3.4条のルールと整合的に国外の恒久的施設(PE)の所得または損失を主要事業体の所得または損失から除外されます。包摂的枠組みは、QDMTTに基づくPEへの所得の配分に関して、さらなる指針を検討(例えば、無国籍PEまたはリバースハイブリッド事業体について)しています。

  • 課税上透明な事業体の所得:QDMTTは、外国または国内の課税上透明な事業体の所得および税金を、所有持分を保有する構成事業体またはPEに配分しなければなりません。同様に、QDMTTは、GloBEモデルルールに基づき所有持分を保有する外国の構成事業体に配分される課税上透明な事業体の所得を除外しなければなりません。また、課税上透明な最終親事業体(UPE)の取り扱いおよび国・地域内の最上位の構成事業体が課税上透明な事業体である場合の具体的な指針も記載されています。
第4章 調整後対象税金

同等性テストを通過するためには、QDMTTに基づく調整後対象税金の決定は、GloBEモデルルールによる決定と同等またはそれ以上の制限を課されなければなりません。同時にQDMTTは、GloBEモデルルール第4.5条に記載のGloBE損失選択を規定する必要はありません。また、QDMTTの定義に関する新たなパラグラフでは、QDMTTに基づく調整後対象税の決定について、以下のように定めています。

  • 株主または主要事業体の対象税から除外される国際課税:QDMTTは、自国のCFCまたは支店課税制度に基づく外国の構成事業体の所得に関連する、国内の構成事業体の納付または未払計上した税金を含めてはなりません。QDMTTは、GloBEモデルルール第4.3.3条に基づくCFCまたはハイブリッド事業体へのプッシュダウン金額を超過する受動的所得に対する国際課税の例外に従うことができます。

  • CFCまたはPEに配分される国際課税:QDMTTは、CFC税制に基づき所有持分を保有する構成事業体が納付または負担した税金のうち、第4.3.2条(c)に基づき国内のCEに配分される税金およびモデルルール第4.3.2条(a)に基づき国・地域に所在するPEに配分される主体事業体が納付または負担した税金は含みません。この特別なルールは、QDMTTの適用を簡素化し、QDMTTを適用する国・地域の構成事業体に第一次課税権を帰属させることを目的としています。包摂的枠組みは、GloBEモデルルールに基づき、QDMTTおよびCFC税制ならびに支店課税制度の間の相互作用を監視することを意図しています。

  • GloBE税金:対象税金の定義には、適格IIRおよび適格UTPRの下で発生する税金は除外されます。同じ企業グループに租税債務を課す可能性のあるIIRまたはUTPRを国・地域が採用している場合に、除外を要します。例えば、当該国・地域がUTPRを採用し、UTPRトップアップ税の配分額を徴収できるように控除が否認された場合、UTPRに基づき発生した租税債務はQDMTTに基づき対象税金として取り扱うことはできません。

  • QDMTT第4.1.5条とGloBE第4.1.5条の調整:QDMTTはGloBEモデルルール第4.1.5条と同様の規定を設けなければ、同等ではありません。
第5章 トップアップ税の計算

QDMTTの定義に関する新たなパラグラフでは、QDMTTに基づくトップアップ税の計算にについて以下のように述べています。

  • 国・地域ブレンディング:投資事業体、JVおよびMOCEのETRおよびトップアップ税は、GloBEモデルルールと同様にQDMTTで別個に計算されなければなりません。しかし、QDMTT目的上、GloBEモデルルールと同等な結果をもたらすのであれば、国・地域は、通常の構成事業体間の所得および税のブレンディングについて、より厳しい制限を課すことができます。

  • トップアップ税の計算式:GloBEモデルルール第5.2.3条に規定のトップアップ税の計算式は、QDMTT目的上、修正されなければなりません。当期QDMTTトップアップ税は、国内のQDMTTの所得に国・地域別のトップアップ税の税率を乗じ、さらに当該国・地域で発生する加算QDMTTトップアップ税を加えて決定されなければなりません。QDMTTはまた、GloBEモデルルールの下で最低税率を超過するトップアップ税が考慮されるのと同時に、同じ方法で関連する構成事業体またはそれらの構成事業体によって考慮され、超過税の繰り越しまたは繰り戻しは認められません。

  • 選択制の実体ベースの所得控除:QDMTTは、実質的な活動に関するカーブアウトを設けることを要求されていません。しかし、カーブアウトを設ける場合、そのようなカーブアウトは、GloBEモデルルールに基づく選択制の実体ベースの所得控除(SBIE)に規定されている実質的要素(すなわち、有形資産および給与)よりも広範であってはならないとされています。

  • 税率:同等であるためには、QDMTTに基づき適用される税率は最低税率(すなわち、15%)と同等またはそれ以上でなければなりません。

  • デミニマス控除:QDMTTは、デミニマス控除を要求されていません。しかし、QDMTTがデミニマス控除を規定する場合、平均収益および平均損益に基づいていなければならず、関連する閾値はGloBEモデルルールに基づき定められている閾値と同等またはそれ以下でなければなりません。また、この選択は、年次選択でなければなりません。
第6章 企業の事業再編および保有構造

これらのルールは、GloBEモデルルールと共通の組織再編税制との調和を図ることを目的としています。同等とみなされるために、QDMTTは、その国・地域の組織再編税制に適合させるために、これらのルールを適用する必要があります。

第8章 運用 

QDMTT導入国・地域は、GloBE情報申告書にトップアップ税債務を正しく報告するために、QDMTTの申告期限を調整する必要があり、企業グループの報告事業年度の最終日から15カ月以内に提出することが求められます(ただし、移行年度については、この期限が18カ月に延長されます)。

QDMTTは、GloBEモデルルールに基づきトップアップ税債務が発生する場合にトップアップ税を課すように設計されているため、QDMTTでは、移行時セーフハーバーを含むGloBEモデルルールに基づいて合意したセーフハーバーと整合性のあるセーフハーバーを含めるべきとされています。

本運用指針では、QDMTTを採用している国・地域において事業活動を行う企業グループに対して、コンプライアンスを簡素化するためのQDMTTセーフハーバーの策定に関する作業を包摂的枠組みが進めることを示唆しています。QDMTTセーフハーバーは、例えば、企業グループに対して、当該セーフハーバーに適合する国・地域に所在する構成事業体に関するGloBEの追加計算を行う義務を免除することが想定されます。

第9章 移行措置

QDMTTを採用する国・地域では、その結果がGloBEモデルルールと整合するように、第9.1.1条から第9.1.3条に規定のGloBE移行措置を採用しなければならず、QDMTT計算における繰延税金、対象税金および資産の帳簿価額についてGloBE計算と同じ時点から適用されます。GloBEモデルルール第9条のその他の移行ルール、例えば、SBIEの移行緩和措置、申告義務の移行緩和措置および国際事業の初期段階におけるUTPRからの除外については、QDMTTにおいて採用する必要はありません。

選択

GloBEモデルルールが選択を行うことを容認している場合、QDMTTは選択についても規定しなければならず、企業グループに対してGloBEモデルルールに基づく選択と同じ選択をQDMTTに基づいて行うように要求しなければなりません。ただし、特定の選択を規定しないQDMTT、例えば、GloBE損失の選択は、同等である可能性があります。

セクション3 – 保険会社に対する適用のうち、一般事業会社への適用可能性について

3.5 短期ポートフォリオ所有持分に関する簡素化

GloBEモデルルールでは、短期ポートフォリオ所有持分(配当分配時点の保有期間が1年に満たない所有持分と定義されるもの)から支払う配当については、除外配当ルールから除かれるとしています。このような配当は、GloBE所得または損失の計算に含まれます。

短期ポートフォリオ所有持分と長期間保有するポートフォリオ所有持分の区分を実施することは負荷が大きいという懸念に応えるため、本運用指針では、運用の利便性を考慮すべく新たな選択肢を定めました。この新しい選択肢は、すべての事業体が利用でき、企業グループはすべての構成事業体について、それらの事業体のポートフォリオ所有持分から支払う配当金をGloBE所得または損失の計算に含めることを選択できます。これは5カ年選択であり、構成事業体単位で行います。

今後の影響

本運用指針は、GloBEモデルルールの解釈および運用に関する重要な追加情報を提供しているため、グローバルミニマム課税パッケージにとって不可欠な構成要素です。この点について、移行ルールに関する運用指針が、2021年11月30日以後、かつGloBEルール発効前に行われる取引に影響を与えることに注意することが重要です。

運用指針では、合意が得られ次第、さらなる指針を策定し、公表することが示唆されています。実際、運用指針には、さらなる指針で対応するまたは対応する可能性のある分野への言及が数多く含まれています。当該指針によって大きな変更がなされる可能性があることを踏まえ、企業は、追加で公表される指針に目を通し、自社に関連する新しいルールやその理解に努める必要があります。

第2の柱のルールを国内法に組み込むにあたり、国・地域には、本運用指針を含むGloBEモデルルールおよびコメンタリーの適用が期待されており、このことは、これらの合意文書が、今後数カ月の間に関連する国・地域における第2の柱の国内法制化において、どのように反映されるか注視することが重要です。

お問い合わせ先

角田 伸広 パートナー

須藤 一郎 パートナー

関谷 浩一 パートナー

西村 淳 パートナー

久保山 直 アソシエートパートナー

荒木 知 ディレクター

大堀 秀樹 ディレクター

高垣 勝彦 シニアマネージャー

野々村 昌樹 シニアマネージャー

加藤 広紀 マネージャー

※所属・役職は記事公開当時のものです


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