EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
ここ最近、税務当局のデジタルトランスフォーメーション、税務当局のDX化という言葉を聞くことが多くなってきています。これまでのような紙ベースの申請や申告ではなく、一連の業務をデジタル化することで、納税者の利便性を高め税務行政を効率化するとともに、システム上で蓄積されたビッグデータの分析による、より精度の高い税務調査へとつなげる目的があります。
中国ではコロナ前より税務情報管理のシステム化が進んでいましたが、従前の金税三期が刷新され、金税四期が導入されました。これにより、これまでの税務情報のオンライン管理からさらに一歩踏み込み、システム上の情報の整合性という点に当局のフォーカスが移ってきています。システム上のデータのうち、異質なものや他の税務情報などとの整合性がつかないものについては、システムから自動的にアラートが発行されるため、雇用主は、当該アラートに対する合理的な説明を求められます。合理的な説明ができない場合、税務調査へとつながる恐れがあります。例えば、個人所得税上の給与情報と法人税申告上の給与額の整合性がない場合や、給与に対するベネフィット(現物給与)の割合が極端に低い場合などは、システム上でデータが異質、または整合性がない状況と自動判断され、説明を求める自動アラートが発行される可能性があります。
アラートはシステムデータに基づき、即座に、またより頻繁に発行されるため、雇用主は求められたらすぐに合理的な説明ができるよう、必要な中国赴任者の給与情報などをオンラインで一つのプラットフォームにまとめて管理しておくことが重要です。中国ではこれまで税務上の論点の対応においては、所轄の税務当局の裁量による部分が多々ありましたが、これらのアラートは市や省レベルで管轄しているシステムから自動的に発行されるため、これまでのような所轄の担当官との折衝ではなく、税務当局が把握している情報に対し、合理的で整合性のある説明を行っていくことが雇用主には求められます。申告に必要な情報を入手し、申告・納付したらそこで終わりではなく、申告・納付(額)の根拠を理路整然と事後的に説明する必要性が出てきており、中国における赴任者管理のポイントは、申告・納付後の事後管理へと移ってきていると言えます。当局の動きにあわせた中国赴任者の管理体制の見直しが求められています。
川井 久美子 パートナー
浅田 緑 アソシエートパートナー
羽山 明子 ディレクター
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