ドイツ、法改正の動向、重要な判決および連邦財務省通達他

ドイツ JBS Newsletter - 2023年5月

以下のドイツ最新情報についてご紹介します。

I. 法改正

1. 2023年中に成立した法改正の概要一覧
2. 立法手続き中の法改正の概要一覧

II. BEPS

OECD、第2の柱GloBEルールの運用指針を公表
2023年2月2日、経済協力開発機構(OECD)は、BEPS2.0プロジェクトの一環として第2の柱であるグローバル税源浸食防止(GloBE)ルールに関する運用指針を公表しました。

III. 法人税

研究開発助成金に関する連邦財務省通達
税務当局は、実務上争点となる問題に対する解決のための指針として、研究開発助成金法に関する連邦財務省通達を補足改訂しました。

連結納税制度(オーガンシャフト)における損益移転契約の実施
連邦財政裁判所は、直近で下した2つの判決において、収益税(法人税および営業税)上の連結グループ(オーガンシャフト)の成立の要件である損益移転契約の実際の履行についての見解を示し、連結親会社に対する損失引き受けに係る請求権が連結子会社の最終的な貸借対照表に計上されていない場合には、損益移転契約が実際に履行されなかったとして、オーガンシャフトの成立時に遡及(そきゅう)してオーガンシャフトが否認されるとしました。

IV. 連帯付加税

2020年および2021年における連帯付加税の合憲性
連邦財政裁判所は、2020年および2021年に継続して賦課された連帯付加税について、憲法に抵触する懸念は(現時点では)認められないとの見解を示しました。

V. 営業税

リース契約における保守費用の営業税上の加算
連邦財政裁判所は、リース契約上賃借人に転嫁される保守費用は、営業税法第8条第1号にいうところのリース料の一部を構成し、原則として、(損金不算入費用として)加算対象となるリース料に属するとの見解を示しました。

営業開始前経費の営業税上の損金算入
連邦財政裁判所は、営業活動開始以前に発生した経費について、営業税上の課税所得計算に際しての損金算入を否認し、この原則を事業全体の譲渡の場合にも適用しています。

メッセ、展示会における賃借料が営業税上の加算対象となるかどうかの判断基準
連邦財政裁判所は、営業税上の課税所得計算に際しての賃借料(に含まれるみなし利息相当額)の加算におけるみなし固定資産(加算対象)とみなし流動資産(加算対象外)の区分という重要な論点について、改めて見解を示し、区分のためには企業の事業目的を十分に考慮する必要があるとしています。

VI. 組織再編税法

組織再編における資産譲渡関連費用の帰属
連邦財政裁判の見解によると、出資持分(株式)集約の結果発生した不動産取得税は、不動産取得原価ではなく、組織再編税法第12条第2項第1文にいうところの「資産譲渡関連費用」に区分され、非課税の合併差損益の一部(費用として差益から減額)と見なされます。非課税の合併差損益の一部と見なされた場合、(費用として損金処理された)不動産取得税は法人税査定に際して損金不算入費用として所得に加算されることになります。

VII. VAT

商品券(バウチャー)の再譲渡に関する先行判決の求め
連邦財政裁判所は、バウチャー発行時点で売上VATの生じる単一目的バウチャーが事業者から次の事業者に複数回にわたって再譲渡される場合には、多目的バウチャーと見なされ、バウチャーの引き換えを受けて提供された役務のみが課税されることになるのかどうか、欧州司法裁判所に対して先行判決の求めを行っています。

太陽光発電設備における免税措置に関する連邦財務省通達
2023年1月1日以降、太陽光発電設備の運営者に対して供給される、その他の“主要なコンポーネント”を含む特定のソーラーパネルの供給および設置については0%のVAT税率が適用されますが、連邦財務省は、2023年2月27日付連邦財務省通達の中で“供給”や“運営者“といった用語の定義や適用範囲についての説明を行っています。

製品保証に関する連邦中央税務局および連邦財務省の共同見解
連邦財務省の新しい原則によると、売主が保証引受人として、保証事案において金銭補償または修理役務を約束する有償の保証引き受けは、(財貨の供給の付帯役務ではなく)VAT免除の対象となる独立した保険役務として取り扱われることになりますが、連邦中央税務局は、連邦財務省と調整した上で、解釈上のガイドラインとして質疑応答事例集を公表し、適用上の疑問についての見解を示しました。

B2B取引における電子請求書の義務付けの導入に関するディスカッションペーパーの公表
連邦財務省は、2023年4月17日に、ドイツにおける電子請求書の導入に関するディスカッションペーパーを、重要な経済団体に送付し、2023年5月8日までに見解を提出するよう求めました。国内B2B取引における電子請求書の義務化の導入は、2025年1月1日に予定されています。

不正確または不適切なVAT表示に関する連邦財務省通達
連邦財務省は、不正確または不適切なVAT表示に関する連邦財政裁判所の判決を受け、2023年4月19日付連邦財務省通達を通じてVAT適用通達を改訂しました。

VIII. 不動産取得税

不動産評価に関する税務当局の見解
2023年1月1日以降の評価基準日移行、評価法における不動産評価に関する改正規定が適用されていますが、連邦各州の上級財務局は、2023年3月20日付の共同通達を通じて、多数の事例を挙げながら、新しい不動産評価規定の適用に関する見解を示すとともに、2019年相続税ガイドラインの該当する規定について改訂および補足を行っています。

IX. 個人所得税/賃金税

事業用携帯電話の使用に対する免税措置
連邦財政裁判所は、従業員に対して私的利用を目的として支給された携帯電話が、いったん従業員から(市場価格を下回る)廉価で購入された場合であっても、雇用者による電話代支給は非課税であるとの見解を示しました。

居住国移転に際してのストックオプション課税の取り扱い
連邦財政裁判所は、居住国移転のケースにおいて、いずれの国がストックオプションの行使に伴う所得に対する課税権を有するかどうかの判定のための租税条約の適用に際して、所得の実現時(流入時)の居住国を基準とし、行使権確定までの期間を基準とした下級審と反対の立場を取りました。

暗号通貨売却に際しての課税
連邦財政裁判所は、暗号通貨の売却利益が、所得税法第23条に規定される個人資産売却取引として、課税対象となり得るとの判決を下しました。取得から1年以内に暗号通貨を売却した場合、売却益は個人所得税率による課税に服することになります。

X. 税務コンプライアンス

デジタルプラットフォームの運用者による申告義務に関する連邦財務省通達
税務当局は、2023年2月2日付連邦財務省通達により、プラットフォーム税制透明化法の適用上の疑問についての見解を示しています。この通達は、税務当局に対して拘束力を有し、実務から提起された運用上の疑問点を取り上げ、プラットフォーム税制透明化法の適切な実施をサポートすることを目的としています。

OECD、多国間の相互協議および事前確認の処理に関するマニュアルを公表
OECDは、2023年2月1日に、多国間の相互協議(MAP:Mutual Agreement Procedures)および事前確認(APA:Advance Pricing Arrangements)の処理に関するマニュアル(MoMA)を公表し、相互協議および事前確認手続きの実施について指針を示しています。マニュアルには、基本原則および手続き上の観点に加えて、事例ならびに相互協議および事前確認手続きのタイムスケジュール例も盛り込まれています。

XI. トランスペアレンシー・レジスター

ドイツ国内不動産を保有する国外企業の登録義務
ドイツ国内において、直接または出資持分の取得(いわゆる「シェアディール」)を通じて不動産を取得する外国企業は、既に従来法に基づきトランスペアレンシー・レジスターへの届出が義務付けられていましたが、2022年12月28日以降、既存の不動産にもこの届出義務が適用されるようになりました。該当する場合は、2023年6月30日までに届出を行う必要があり、届出義務の不履行に際しては高額の罰金が科される可能性があります。

 

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