EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
EY Quantitative Economics and Statistics(QUEST)グループの最近の報告書によると、米国がOECDのBEPS2.0第2の柱の提案を採用しなくても、他の国・地域に広く採用されれば、米国内外で事業を展開し、適用対象となる米国の多国籍企業(MNE)の税負担が増加する可能性があることがわかりました。また、第2の柱の採用は米国経済にも大きな影響を与え、国内のMNEの雇用を約37万人、国内のMNEの年間投資を約220億ドル、恒久的に減少させる可能性があることを明らかにしました。
米国外で第2の柱が広く採用された場合、米国のMNEの法人税負担は平均で18%増加すると推定されます。このような増税は、米国の経済活動の縮小につながる可能性が高いと考えられます。一般に、米国のMNEの海外事業は米国内の事業と補完的であるという調査結果があります。したがって、米国のMNEの海外事業に対する増税は、米国におけるMNEの経済活動(雇用と投資)を減少させることが予想されます。さらに、軽課税支払ルール(UTPR)や所得合算ルール(IIR)(外国親会社を持つMNE事業の場合)を通じて、国内MNE事業の法人税負担を実質的に増加させることは、国内MNE事業の経済活動をさらに減少させることになります。
米国外で第2の柱が広く採用された場合、米国のMNEの法人税負担が増加するため、米国のMNEのキャッシュタックス実効税率(ETR)は平均で2.6%上昇すると考えられます。国外所得に対するETRは4.5%、国内所得に対するETRは1.4%上昇する可能性があります。
米国外で第2の柱が広く採用されるというシナリオの下で、米国がその経済的悪影響を軽減する方法はあります。EY QUESTの分析では、このマイナスの経済的影響を相殺する可能性のある手段として一部で提案されている、グローバル軽課税無形資産所得(GILTI)ルールの変更など、国際課税ルールについて一般的に議論されているいくつかの変更を例示として検討しています。本報告書では、「GILTI外国税額控除適格となる米国外法人税の80%制限」と「外国税額控除制限枠の算定時に米国側費用の一部をGILTIバスケットに配賦・按分する要件」を廃止することで、米国は、米国外で第2の柱が広く採用されることによる経済的損害の約40%を相殺することができると推定しています。しかし、米国が他の国・地域が第2の柱を採用することに対抗して報復関税を使用した場合、その関税は米国外における第2の柱に関連する経済的損害をさらに増大させるでしょう。報復関税により、米国の雇用はさらに9万人(合計46万人)、米国の投資は約70億ドル(合計290億ドル)減少すると推定されます。
第2の柱に関する活動は増加しており、世界中の多くの国・地域が第2の柱の規定を実施するための法律を制定したり、立法文言を検討したりしています。米国では、第2の柱とOECDのBEPSプロジェクトに関する議論が続いていますが、MNEは、米国外での実施が世界中の事業にどのような影響を与えるかをモデル化し、第2の柱の計算を行うために必要な情報をどのように収集・追跡するかを決定し、これらの変更がビジネス上の意思決定をどのように形成するか、あるいはその他の形で影響を及ぼすかについて、政策立案者と話し合うことを検討する必要があります。
秦 正彦 シニア・テクニカル・アドバイザー
古屋 宏晃 パートナー
村井 祥一 パートナー
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