中国、研究開発費用 加算控除政策執行ガイドライン(2.0版)他

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EY 税理士法人

2023年8月7日

中国JBS‐中国税務及び投資速報(日本語要約版)2023年7月

税務法規

1. 企業所得税

・研究開発費用 加算控除政策執行ガイドライン(2.0版)

概要

国家税務総局所得税司と科学技術部政策法規及び革新体系建設司は連名で「研究開発費用 加算控除政策執行ガイドライン(2.0版)」(以下「ガイドライン」)を公表しました。

この「ガイドライン」では、研究開発費用の加算控除に関する現行政策を整理し、政策の主な内容、研究開発費用に関する要求、申告及び事後管理など、全面的にこの政策を解説しています。

その中で、研究開発プロジェクトの効果的な実施を保証し、かつ研究開発費用の加算控除政策の利便性を向上するため、「ガイドライン」では、企業における規範的な研究開発プロジェクトの実施管理制度を提示しています。主な内容は以下の通りです。

  • 研究開発プロジェクトに関する集中管理部門の設立
    プロジェクトの全過程に関して集中管理を行う。

  • プロジェクト責任者
    各プロジェクトではプロジェクト責任者を決定し、その権利と責任を明確にする。

  • 研究開発費用の全過程記録
    研究開発部門が財務部門と協力し、当該項目に投入した資源の詳細を全過程で記録する。

  • 研究開発の進捗記録
    新材料の研究開発においては、重要技術の主要論点や技術ロードマップ、使用される重要設備や材料などを記録する。

  • プロジェクトの調整
    プロジェクト責任者は適時に集中管理部門に報告し、規定の手順に基づき項目の変更、一時停止や終了などを行う。

研究開発プロジェクトの終了後、プロジェクトチームはプロジェクトの進展状況、知的財産権の成果、研究開発成果の先進性、重要技術の突破点、失敗原因の分析、技術試験報告などの内容を含む最終報告書を形成することが提示されています。財務部門には財務決算報告書の作成が提示されています。

上記の管理制度は納税者における強制的な義務ではないものの、この「ガイドライン」は納税者が租税優遇を申請し、内部管理を強化するための参考とすることができます。納税者は「ガイドライン」の内容を理解し、租税優遇政策を適用すると同時に、上記の管理制度の採用要否を検討することが推奨されます。
 

2. 個人所得税

・商業健康保険の個人所得税優遇政策の適用商品に関する事項の通知(金規2023年2号)

概要

現行の個人所得税政策では、個人が規定に合致する商業健康保険商品を購入する際の支出は、控除限度額を年間2,400人民元(毎月200人民元)として、課税所得額の計算時に所得から控除できます。
この取扱いに基づき、国家金融監督管理総局は2023年7月4日に金規2023年2号通達(以下「2号通達」)を公布し、商業健康保険の個人所得税優遇政策の適用商品に関する事項を明確化しました。2号通達の主な内容は以下の通りです。

個人所得税優遇政策を適用する商業健康保険の主な保険種類

個人所得税優遇政策を適用する商業健康保険商品の範囲は、商業健康保険の主な保険種類に拡大する。

  • 医療保険
  • 長期看護保険
  • 疾病保険

関連する保険種類では標準的な条項を設けず、柔軟性を向上させる。既往症者に対してのみ引き受け要求を設定し、その他の商品設計内容はすべて市場主体に一任する。

異なる保障案と商品の設定

  • 生命保険会社が既往症者に対して異なる保障案を設定することを許可する。また、保険会社には、既往症や高齢者など特定被保険者を対象にした長期看護保険や疾病保険の商品開発を推奨する。
  • 被保険者は本人のための他、配偶者、子供及び両親のためにも保険をかけることもできる。

その他の規定

  • 生命保険会社の所有者権益、支払能力の充足率などに対して明確な要求を提示し、経営主体が相応のサービス能力を備えることを確保する。
  • 業界統一の商業健康保険情報プラットフォームを通じて契約者のために情報口座を構築することにより、契約者が個人所得税優遇政策を適用するすべての商業健康保険情報を記録し、消費者が異なる会社の商品を購入しても、関連規定に従って所得控除を行うことの利便性を高める。
     

3. その他

・国家外貨管理局北京外貨管理部 「多国籍企業の人民元と外貨のクロスボーダー資金集中運営管理規定(試行)」の公布に関する通知(京匯2023年25号)

・国家外貨管理局広東省分局 多国籍企業の人民元と外貨のクロスボーダー資金集中運営管理規定(試行 (粤匯発2023年19号)

・国家外貨管理局深セン市分局 「多国籍企業の人民元と外貨のクロスボーダー資金集中運営管理規定(試行)」の公布に関する通知(深外管2023年16号)
 

概要

国内と国際の2つの市場の2種類の資源連動効果を強化するため、2023年5月、中国人民銀行、国家外貨管理局は北京市、広東省、深セン市で試行1を展開し、多国籍企業の人民元と外貨クロスボーダー資金集中運営管理政策を最適化することを決定しました。

この決定に基づき、3都市の国家外貨管理局分局はそれぞれ、試行管理規定を公布しています。

3都市が公布した試行管理規定に基づき、以下の条件を満たす多国籍企業は、事業上の需要に応じて国内企業1社を主管企業として選択し、国内外のメンバー企業の資金を集中的に運営管理する、キャッシュプーリング業務を行うことができます。

  • 実際の事業上の需要が存在する。
  • 完全なクロスボーダー資金管理構造、内部管理制度が存在する。
  • 適切な内部管理電子システムが確立している。
  • 国内のすべてのメンバー企業の前年度外貨国際収支規模の合計金額が7億人民元相当を下回らない。又は国内のすべてのメンバー企業の前年度売上高合計金額が10億元を下回らず、かつ国外のすべてのメンバー企業の前年度売上高合計金額が2億元を下回らない。

主管企業が自由貿易試験区内に登録した多国籍企業がキャッシュプーリング業務を行う場合、上記金額の限度額は半分になります。

  • 直近2年間に重大なクロスボーダー収支業務の違法行為(設立後2年を経過しない企業は、設立日から重大なクロスボーダー収支業務の違反行為)がない。
  • 貿易外貨収支リスト内の企業は、商品貿易分類結果がA類である必要がある。主管企業の商品貿易分類結果がB、C類に下がった場合、所在地の外貨管理局は多国籍企業に主管企業の変更と申請資料の再提出を通知する。その他のメンバー企業の商品貿易分類結果がB、C類に下がった場合、主管企業はその業務を終了し、関連規定を参照してメンバー企業の変更を行う。
  • 国内企業の投資として設立されている国外メンバー企業は、国内の関連主管部門の国外投資に関する規定を満たす必要がある。
  • 中国人民銀行、国家外貨管理局が規定するその他の厳格な監督管理条件。

1中国人民銀行及び国家外貨管理局が2023年5月22日に公表した通知に基づき、3都市の試行管理規定は主に以下の内容を含む。

  • 既存の多国籍企業のクロスボーダーでの資金の集中運営に関する政策要求をさらに良化し、より多くの企業に恩恵を与える。
  • 企業のクロスボーダー資金運営の自由度を増大させ、多国籍企業がマクロプルーデンスの原則に基づいて自ら外債と国外貸付金の回収比率を決定することを許可する。
  • 多国籍企業が人民元でクロスボーダー資金集中運営業務を展開することを支持する。
  • 届出プロセス及び資金使用関連資料の審査を簡素化する。



・上海市外国企業の対中投資に対するグローバルパートナー促進計画実施弁法(滬商促進2023年172号)

概要

グローバル投資の新しい機会をつかみ、外国企業の対中投資の誘致と拡大を促進するため、上海市商務委員会は2023年6月28日、滬商促進2023年172号通達(以下「172号通達」)を通じ、上海市外国企業の対中投資に対するグローバルパートナー促進計画(以下「計画」)を起動しました。

当該計画は「グローバルパートナー」、つまり上海と企業誘致の協力関係を確立する企業・機構・組織を通じて、外国企業の対中投資を促進することを目的としています。

これらのグローバルパートナーは上海のために条件に合う外資プロジェクトを紹介し、プロジェクトの実施を推進することに協力します。次の事業体がグローバルパートナーとして認定されます。

  • 国際的に知名度の高い大手会計事務所・法律事務所・コンサルティング機構・不動産コンサルタントなど
  • 多国籍銀行、知名度の高い創業投資機関、スタートアップ産業基金など
  • 世界500強に含まれる多国籍企業、上海市の重点産業チェーンの主たる企業など
  • 各種の国際協力組織、機能性プラットフォーム、業界協会など

条件を満たすグローバルパートナーは、各種の資金奨励や栄誉表彰を受けることができます。また、人材政策、ビザなどの面での便宜や保護を受けることができます。例えば、グローバルパートナーが外資プロジェクトを推薦及び推進したことにより、実際に資金を獲得し、プロジェクトが上海で運営される場合には、実際に獲得した外資金額に基づいてグローバルパートナーに一定の資金奨励が与えられます。

上海市の関連政府部門はさらに関連細則を制定し、発表することが予定されています。

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※所属・役職は記事公開当時のものです

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