EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
2024年2月20日、欧州連合理事会(EU理事会)は、EUリストの改定に関する理事会決議を承認しました。付属書I(EUブラックリスト)から4つの国・地域(バハマ、ベリーズ、セーシェル、タークス・カイコス諸島)の削除が決定され、ベリーズとセーシェルは付属書II(EUグレーリスト)に移されました。一方EUグレーリストからは、アルバニア、アルバ、ボツワナ、ドミニカ、香港、イスラエルが削除されました。
EU理事会は、EUリストを年2回更新し、次回は2024年10月を予定しています。
EUは、2016年、税務面で非協力的な国・地域のリストの作成に着手しました。2017年12月5日、EU理事会は、税務面で非協力的な国・地域に関する最初のEUリストを公表しました。EUブラックリストには、所定の期限までにEUの基準を満たさない国・地域が含まれ、EUグレーリストには、租税政策の改革について十分な確約をしたものの、その実行に当たっては引き続き綿密な監視が必要とされる国・地域が含まれています。その国・地域がすべての確約を履行した場合、EUグレーリストから削除されます。
当初のEUブラックリストには、欧州委員会(EU委員会)が定めた基準を満たさないと判断された17の国・地域が含まれていましたが1、EUリストの発表以降、法人課税に関する行動規範グループ(COCG)の提言に基づいて、これらの国・地域について変更が加えられました。これらの変更は、EU COCGが新しく国・地域または制度を特定した場合や、すでにEUリストに掲載されている国・地域を再評価した場合に生じます。その国・地域がCOCGの提示したすべての条件を満たすと評価された場合、EUブラックリストおよびEUグレーリスト双方からの削除が認められます。
また、EU委員会は、2018年3月、掲載された税務面で非協力的な国・地域に対する最初の防止策として、財務および投資活動に関するEUの法律に、税源浸食防止の新たな要件を定めた指針を導入しました2。この要件は、EUの開発および投資資金が、EUブラックリストに挙げられた国・地域の事業体を経由することを防止するためのものです。
さらに、2019年には、非協力的な国・地域に対抗する追加的なガイダンスが公表されました。同時に、みなし利子控除制度を持つ国・地域の評価、および基準2.2(実質的な経済活動を伴わずに利益を取り込むオフショア促進税制の存在)に基づくパートナーシップの取扱いに関するガイダンスを公表しました3。これらの追加的なガイダンスに従い、EU加盟国は、2021年1月1日現在、EUブラックリストに該当する国地域について、次の4つの具体的な税法による防止措置のうち少なくとも1つを適用することが義務付けられています。
多くの加盟国では、これらの税源浸食防止のための法律を、すでに採択または起草しています。
2023年10月、COCGは多年次にわたる作業パッケージ(2023 — 2028)を発表し、EUリストへの掲載プロセスを、BEPS2.0第2の柱を機能させるために利用できると述べています。また、COCGは、新たな受益所有権基準(基準1.4)や、EUリストの審査プロセスの地理的範囲(現在約95の非EU加盟国・地域が含まれる)の拡大についても議論を継続する予定です。
2024年2月20日、EU理事会は、EUリストの改定に関する決議を採択しました。
EU理事会では、バハマ、ベリーズ、セーシェル、タークス・カイコス諸島を削除し、EUブラックリストの改定を採択しました。プレスリリースによると、EUブラックリストからこれら4つの国・地域を削除した理由は次のとおりです。
EUブラックリストは、現在次の12の国・地域を掲載しています:米国領サモア、アンギラ、アンティグア・バーブーダ、フィジー、グアム、パラオ、パナマ、ロシア、サモア、トリニダード・トバゴ、米領バージン諸島、バヌアツ。
また、EU理事会は、租税政策の改革について確約したものの、実行の間は監視対象となる国・地域を掲載したEUグレーリストを改定しました。EU理事会は、アルバニア、アルバ、ボツワナ、ドミニカ、香港、イスラエルが、次のように確約を実行したものとしてEUグレーリストから削除しました。
その結果、EUグレーリストの改定リストには、現在次の10の国・地域が掲載されています:アルメニア、ベリーズ、英領バージン諸島、コスタリカ、キュラソー、エスワティニ、マレーシア、セーシェル、トルコ、ベトナム。
EU理事会は、各国・地域による確約の実行期限の変更や、EUリストの制定にあたりEUが使用するリスト掲載基準の変更を考慮しつつ、今後もEUリストを定期的に更新する予定です。2019年まで、EUリストの更新は第三国で実施した改革を反映するために、スケジュールを固定せず常時行われていました。しかし2020年以降、(i)掲載プロセスのさらなる安定性、(ii)業務の確実性、および(iii)EU加盟国による掲載国・地域に対する防止措置の有効性を確保するために、EUリストの更新を年に2回までとすることに合意しています。したがって、EUリストの次回の改定は2024年10月に予定されています。
EUは、EUリスト掲載プロセスを通じて、第三国に対し、透明性の向上や、税制における有害な要素の排除を求める圧力をかけ続けています。非協力的であるとしてリストに掲載されている国・地域で活動を行う企業は、EUブラックリストに掲載される国・地域が受ける以下のような影響を理解しておくことが推奨されます。
また、これらのEUリストはCbCRの開示義務にも影響を及ぼします。すなわち、CbCR開示制度では、全てのEU加盟国4ならびにEUブラックリスト(報告書の作成が必要となる対象会計年度の3月1日現在のリスト)およびEUグレーリスト(2年度連続で報告書の作成が必要となる対象会計年度の3月1日現在のリスト)の掲載国・地域について、国別に情報を開示する必要があります5。加えて企業は、EUリストの掲載国・地域に関しては、CbCR開示制度の保護条項に基づいて、営業上の機密情報を理由とした開示の延期(最長5年間)を適用することができません。
EUリストに関する作業はダイナミックなプロセスであることから、企業は非協力的な国・地域を対象としたEU加盟国による税源浸食防止策の導入を含め、さまざまな動向を注意深く監視していく必要があります。
EUリスト 2024年2月20日現在
EUブラックリスト |
EUグレーリスト |
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米国領サモア(2017年12月5日追記) |
アルメニア(2022年10月4日追記) |
アンギラ(2022年10月4日追記) |
ベリーズ(2024年2月20日追記) |
アンティグア・バーブーダ(2023年10月17日追記) |
英領バージン諸島(2023年10月17日追記) |
フィジー(2019年3月12日追記) |
コスタリカ(2023年10月17日追記) |
グアム(2017年12月5日追記) |
キュラソー(2023年2月14日追記) |
パラオ(2020年2月18日追記) |
エスワティニ(2022年10月4日追記) |
パナマ(2020年2月18日追記) |
マレーシア(2021年10月5日追記) |
ロシア(2023年2月14日追記) |
セーシェル(2024年2月20日追記) |
サモア(2017年12月5日追記) |
トルコ(2017年12月5日追記) |
トリニダード・トバゴ(2017年12月5日追記) |
ベトナム(2022年2月24日追記) |
米領バージン諸島(2018年3月13日追記) |
|
バヌアツ(2019年3月12日追記) |
巻末注
EY税理士法人
角田 伸広 パートナー
須藤 一郎 パートナー
関谷 浩一 パートナー
味田 貴志 パートナー
大堀 秀樹 ディレクター
Joris van Huijstee シニアマネージャー
工藤 保浩 シニアマネージャー
※所属・役職は記事公開当時のものです
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