EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
株式上場を目指す上で、原価計算制度の整備は極めて重要なチェックポイントと聞いています。原価計算制度の整備の目的は何でしょうか?
原価計算制度は、株式上場の審査上、極めて重要な経営管理制度の一つとして位置付けられています。原価計算制度とは、財務会計から材料費、労務費、経費などの基礎資料を受け取り、これを一定の計算体系の中で加工し、製造原価や棚卸資産原価を財務会計に提供するシステムをいいます。以下、株式上場の観点から原価計算制度の整備目的を記載します。
原価計算制度における一定の計算体系とは、材料の消費単価の計算方法、加工費の配賦計算方法、製品への原価の集計方法等により様々なものがありますが、いずれの計算体系も棚卸資産の受払記録及び作業時間等工数の記録が前提となっています。会社の事業活動を適切に反映した単価計算、数量計算及び配賦計算などを実施することにより、適切な原価計算制度に基づく決算書が作成されます。
製造予算の編成では、製品種類別に生産量が決定された後、製造原価の見積りに入ります。製造原価の見積りに当たっては、製品種類別に直接材料費や直接経費などの変動費が生産量に応じて計算され、間接的な固定費が費目別、部門別に集計されるのが一般的です。これらの計算は、原価計算制度が提供する信頼性の高い変動費や固定費のデータがあってはじめて可能となります。
予算編成が行われた後、生産が実行されると、原価計算の各段階から計算結果が集計されます。これを適時に予算と比較して分析することによって、生産上の諸問題や原価効率を信頼性の高い数値として認識することが可能となります。
原価管理機能を有効に機能させるためには、以下の点をクリアすることが前提となります。
(1) 製造指示から製品完成に至る過程において、消費材料及び作業時間等を物量的に記録できる体制になっていること。
(2) 予算原価は、原価効率を判定する尺度として設定されていること。
(3) 予算原価と実際原価との差異内容をタイムリーかつ十分に分析できるように月次決算体制が整備されていること。
原価計算制度の導入には、品目別、工程別に物の流れや作業時間を把握する仕組みを構築する必要があり、場合によってはコンピューターシステムの新規導入や機能追加等についても検討する必要があります。
このため、原価計算制度の導入には、十分な導入期間を考慮する必要があります。直前々期の期首時点までには、監査法人と相談のうえ、導入がほぼ完了していることが望ましいと考えます。