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平成28年6月第1四半期 決算上の留意事項

2016年6月30日 PDF
カテゴリー 会計情報レポート

情報センサー2016年7月号 会計情報レポート

会計監理部
公認会計士 吉田 剛
公認会計士 山澤伸吾

平成28年6月現在、当法人 品質管理本部 会計監理部において、会計処理及び開示に関して相談を受ける業務、ならびに研修・セミナー講師を含む会計に関する当法人内外への情報提供等の業務に従事。主な著書(共著)に『ケースから引く 組織再編の会計実務』『連結財務諸表の会計実務(第2版)』(いずれも中央経済社)などがある。

Ⅰ はじめに

平成29年3月期の期首より、企業会計基準適用指針第26号「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」(以下、回収可能性指針)が原則適用となります。本稿では、この他に平成28年度税制改正の影響を含め、平成28年6月第1四半期決算に当たっての留意事項を解説します。なお、文中の意見に係る部分は筆者らの私見である旨をお断りします。

Ⅱ 回収可能性指針の原則適用

1. 回収可能性指針の概要

平成27年12月28日に公表された回収可能性指針において、繰延税金資産の回収可能性の判断に関して監査委員会報告第66号(以下、66号)における企業の分類に応じた取扱いの枠組みを基本的に踏襲した上で、当該取扱いの一部について必要な見直しが行われています(<表1>参照)。

表1 66号からの主な見直し

この回収可能性指針は、平成28年4月1日以後開始する年度の期首から原則適用とされます。また、平成28年3月31日以後終了する年度の年度末から早期適用することが認められています。
本稿では、平成29年3月期から原則適用する企業と平成28年3月期において早期適用した企業に分けて、平成28年6月第1四半期における会計処理と開示を解説します。

2. 原則適用する企業

(1) 会計処理

① 会計方針の変更による影響

回収可能性指針において、<表1>の①から③の定めを適用することにより、これまでの会計処理と異なることとなる場合には、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱うこととされています。この場合、期首時点で新たな会計方針を適用した場合の繰延税金資産及び繰延税金負債の額と、前年度末の繰延税金資産及び繰延税金負債の額との差額を、適用初年度の期首の利益剰余金等に加減することになります。
なお、この<表1>の①から③の定めは、原則的な取扱いにかかわらず繰延税金資産について回収可能性があるものとしていますが、企業が主体となって検討を行い、合理的な根拠をもって説明する場合に適用される定めになっていることにご留意ください。

② 会計方針の変更以外の影響

<表1>の①から③の定めを適用しない場合であっても、回収可能性指針を適用することで<表1>の④や⑤などの影響により繰延税金資産が増減する場合があり、その影響は平成28年6月第1四半期において損益として反映されることになります。
なお、四半期における税金費用の会計処理として、四半期特有の会計処理(後述Ⅲ. 2参照)を採用している場合、当該損益影響の反映について<設例>の二つの方法があると考えられます。

設例 適用初年度期首における四半期特融の会計処理(後述<表3>の原則的取扱いを前提)

(2) 開示

① 会計方針の変更による影響がある場合の開示

<表1>の①から③の定めを適用している場合、適用初年度における会計方針の変更に関する注記として、四半期報告書及び有価証券報告書に、会計方針の変更による期首の繰延税金資産に対する影響額、利益剰余金に対する影響額、及びその他の包括利益累計額又は評価・換算差額等に対する影響額を注記することになります。

② 会計方針の変更による影響がない場合の開示

<表1>の①から③以外の影響については、会計方針の変更に該当しないため、会計方針の変更の影響額として注記する金額には含まれません。また、<表1>の①から③の定めを適用せず会計方針の変更がない場合には、会計方針の変更に関する注記は記載しませんが、この場合には追加情報として回収可能性指針を適用している旨を四半期報告書及び有価証券報告書に記載することが適当と考えられます。

3. 早期適用した企業

(1) 会計処理

平成28年3月期に早期適用を行っているため、平成28年6月第1四半期は前述のⅡ. 2で述べた会計処理は行われません。

(2) 開示

① 比較年度において会計方針の変更による影響がある場合の開示

平成28年3月28日に改正された回収可能性指針にて、早期適用を行った翌年度の比較情報について、回収可能性指針を期首にさかのぼって適用するのは、<表1>の①から③の定めのみであることが明確化されています。
具体的には、平成28年3月期に早期適用を行い、<表1>の①から③の定めに関する影響を期首にさかのぼって適用したことで、平成27年6月第1四半期において発生した将来減算一時差異に係る繰延税金資産について、追加で回収可能と判断することがあります。これにより、増加する繰延税金資産に対応する法人税等調整額を計上するなど損益影響が生じる場合、当該損益影響は平成28年6月第1四半期報告書の比較情報に反映することになります。
この場合、平成27年6月第1四半期報告書に記載した損益と相違する旨を平成28年6月第1四半期報告書に追加情報として記載することが適当と考えられます。

② 比較年度において会計方針の変更による影響がない場合の開示

早期適用した前期末において会計方針の変更以外の影響により損益を計上したとしても、当該影響は平成28年6月第1四半期報告書の比較情報には反映させないことになります。

Ⅲ 平成28年度税制改正(税率の変更)が税効果会計に与える影響

平成28年度税制改正法は、本年3月29日に国会で成立しました。企業会計基準適用指針第27号「税効果会計に適用する税率に関する適用指針」が平成28年3月期末から適用されているので、当該指針の定めにより、国会成立日以後の決算から、改正後の税率を用いて税効果額の計算を行うことになります。<表2>は、3月末決算の会社における税率の推移となります。

表2 法定実効税率の推移

1. 四半期決算の税金計算について原則法を採用している会社

四半期決算においても、法人税等の計算は年度決算と同様の方法で行うのが原則です※1。この方法による場合、繰延税金資産及び繰延税金負債は、対応する将来減算(加算)一時差異が回収又は支払われると見込まれる期の税率を用いて算定します。前期決算において、平成28年度税制改正による税率変更はすでに織り込まれていますが、この第1四半期においても、<表2>に掲げた将来の税率などを用いて、税効果会計が適用されます。

2. 四半期決算の税金計算について「四半期特有の会計処理」を採用している会社

四半期決算における税金計算は、「四半期特有の会計処理」によることもできます。具体的には、年度の実効税率を合理的に見積り、当該見積実効税率を税引前四半期純利益に乗じて税金費用を算定します。税効果に関しては、繰延税金資産についてその回収可能性を検討した上で、基本的に前期末の数字を引き継ぎます(四半期基準14項ただし書き)。
この四半期特有の会計処理によっている場合、<表2>に掲げたように将来の税率が複数となるときは、実務対応報告第29号「改正法人税法及び復興財源確保法に伴い税率が変更された事業年度の翌事業年度以降における四半期財務諸表の税金費用に関する実務上の取扱い」Q2も参考に、<表3>の取扱いにより会計処理することが考えられます。

表3 四半期特有の会計処理を採用している場合の複数税率の取扱い

Ⅳ 減価償却方法の変更

平成28年度税制改正では、平成28年4月1日以後に取得した建物附属設備及び構築物について、税務上の減価償却方法が定率法から定額法に変更となりました。
これに伴い、会計上の減価償却方法の取扱いが論点となります。すなわち、これまで建物附属設備又は構築物について定率法で償却していた場合に、税務上の減価償却方法の変更に合わせて、会計上の減価償却方法も定額法に変更することができるかどうか(税制改正が会計方針の変更のための「正当な理由」として認められるかどうか)が実務上のポイントとなります。
この論点に関して、平成28年4月22日に実務対応報告公開草案第46号「平成28年度税制改正に係る減価償却方法の変更に関する実務上の取扱い(案)」(以下、公開草案)が企業会計基準委員会(ASBJ)から公表されています。公開草案2項では、「従来、法人税法に規定する普通償却限度相当額を減価償却費として処理している企業」を対象に、平成28年4月1日以後に取得した建物附属設備、構築物又はその両方についてこれまでの定率法による償却を定額法による償却へと変更した場合に、会計処理の原則及び手続を定める法令等の改正に準じて、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱うものとする提案がなされています。
この実務対応報告は、公表日以後最初に終了する年度にのみ適用されます。また、平成28年4月1日以後最初に終了する年度が公表日より前に終了している場合にも、適用可能とすることが提案されています。
なお、前記は公開草案における提案であり(本稿執筆時点では、6月中の最終化が予定されています※2)、最終化された実務対応報告における定めをご確認ください。

※1企業会計基準第12号「四半期財務諸表に関する会計基準」(以下、四半期基準)14項本文

※2「現在開発中の会計基準に関する今後の計画」(平成28年4月22日 企業会計基準委員会)

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