EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
EY税理士法人
税理士 公認会計士 矢嶋 学
1998年太田昭和アーンストアンドヤング(現EY税理士法人)入所。法人向けコンプライアンス業務の他、組織再編及び事業承継コンサルティング、大規模法人を対象とした税務リスク・アドバイザリー業務等に従事。EY税理士法人入所以前は国税職員として相続税、法人税の調査経験を有する。研究開発税制担当。
税理士 宮嵜 晃
2007年EY税理士法人に入所。税務コンプライアンス業務に従事。その後、14年7月から17年3月まで経済産業省 貿易経済協力局 貿易振興課(国際租税担当)に出向。帰任後は主に国際課税、研究開発税制に関する業務に従事。
前号(本誌 2018年新年号)では、サービス開発を中心に取り上げましたが、今号では「特別試験研究費税額控除※1(以下、オープンイノベーション型)の運用改善」と「オープンイノベーション型の適用を受けるための企業のアクションプラン」を中心に取り上げます。
平成29年度税制改正及び経済産業省による「特別試験研究費税額控除制度ガイドライン」の改訂※2では、オープンイノベーション型が真にインセンティブとして機能するよう、企業等の実務に合わせた運用改善が行われました。運用改善の内容は<表1>の通りです。
税制改正によって、当該制度の適用を受ける企業の相手先(大学等)における実務面での手続負担は軽減され(①②)、また税額控除の対象となる費用の範囲についても拡大されたため(③)、今まで適用を見送っていた企業においても、改めてオープンイノベーション型の税額控除について検討してみることが有用です。
<表2>は平成25年度から平成27年度における研究開発税制の活用状況です。③のオープンイノベーション型は平成27年度に見直しが行われたことにより、適用額が平成26年度に比べて13倍に増加しています。平成29年度の税制改正を受けて今後も増加することが期待されます。一方で、⑥の増加型は前号でも記載した通り平成29年度改正により廃止されます。
オープンイノベーション型の適用を受けるためには、相手方により一部異なる場合もありますが、主に以下の作業が必要になります。これらを一例として時系列に記載したのが<図1>です。
オープンイノベーション型を適用するためには、共同研究あるいは委託研究の相手方の協力が必要になります。また、相手方が大学や民間企業などの場合は公認会計士・税理士等による監査も必要になります。企業の内部においては経理部門だけでなく、研究開発部門の理解と協力を得ることが重要で、これらの連携がスムーズであると適用可能性が高くなるともいえます。
総額型の試験研究費の税額控除よりも適用を受けるために追加的な手続きを求められますが、総額型よりも高い税額控除率が適用できること、平成29年度改正により運用改善がされたこと、増加型が廃止されたことから注目度は増しています。当該改正を機に、優遇税制の適用が受けやすくなったといえますので、前記アクションプランを参考に、早い時期から準備を整えて制度を有効活用することが望まれます。
※1 特別試験研究費の税額控除制度は、大学や国の研究機関、また他企業等との共同研究及び委託研究等の連携について、特に大きなインセンティブを与える制度で、オープンイノベーションの促進に資する政策の一つとして、重要なものとして位置付けられてきた。平成27年度税制改正では、これまで以上にオープンイノベーションを加速するために、制度の抜本的拡充(従来は総額型の一部であった特別試験研究費の税額控除制度を別制度として総額型から切り出し、その控除上限は法人税額に対して5%の恒久措置とする改正)が行われた。オープンイノベーション型の概要については経済産業省ウェブサイトを参照。https://www.meti.go.jp/policy/economy/keiei_innovation/open_innovation/open_innovation_zei.html
※2 www.meti.go.jp/policy/tech_promotion/tax/29FYguidline.pdf