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IAS第28号「関連会社及び共同支配企業への投資」の改訂

2019年6月30日 PDF
カテゴリー IFRS実務講座

情報センサー2019年7月号 IFRS実務講座

IFRSデスク 公認会計士 岩田 英里子

2005年、当法人入所。以降、主として個別受注産業、広告業等の会計監査、株式公開準備監査、およびJ-SOX導入支援業務に携わる。17年よりIFRSデスクにて、IFRS導入支援業務、研修業務、執筆業務などに携わっている。

「国際会計の実務 International GAAP」シリーズが4年ぶりにリニューアルされ、『国際会計の実務 International GAAP 2019(上巻・中巻・下巻)』と『国際金融・保険会計の実務International GAAP 2019』が刊行されました。そこで、4回にわたって、2015年版からアップデートされている論点の一部を紹介します。
第2回となる今号ではIAS第28号「関連会社及び共同支配企業への投資」の改訂を取り上げます。

Ⅰ はじめに

国際会計基準審議会(以下、IASB)は、2017年10月に、IAS第28号「関連会社及び共同支配企業に対する投資」(以下、IAS第28号)に関する狭い範囲の修正「関連会社及び共同支配企業に対する長期持分」(以下、本改訂)を公表しました。本改訂により、持分法が適用されない関連会社又は共同支配企業(以下、関連会社等)に対する長期持分にはIFRS第9号「金融商品」(以下、IFRS第9号)を最初に適用することが明確化されました。この改訂は、19年1月1日以後開始する事業年度より遡及(そきゅう)適用されることになりますが、IFRS第9号を初めて適用した後に本改訂を適用する企業を対象として、移行措置が設けられています。

Ⅱ 背景

関連会社等に対する持分には、持分法により算定する普通株式に対する投資のほか、関連会社等に対する純投資の一部を実質的に構成する長期持分(例えば、長期貸付金や優先株式)が含まれます。これは、長期持分のうち、決済が計画されておらず、また、予見できる将来に決済される可能性も低いものは、実質上、当該関連会社等に対する投資の延長線上にあるとの考えによるものです。
これを踏まえて、IAS第28号では持分法適用関連会社等が損失を計上した場合には、まず普通株式に対する投資額をゼロまで減額し、普通株式の投資額を超えて認識された損失については、当該超過損失額を長期持分へ配分することとなります(IAS第28号38項)。
ただし、この長期持分については、IFRS第9号の範囲に含まれるかどうか、及び、含まれる場合にはIFRS第9号の減損の要求事項が長期持分に適用されるか否か明確ではない部分があり、実務にバラつきが見られるといった問題がありました。具体的には、IFRS第9号の減損規定では、予想信用損失モデルが採用されている一方で、IAS第28号及びIAS第36号「資産の減損」は発生損失モデルを採用していることから、いずれの基準が適用されるかによって、異なる会計処理となる可能性がありました。そこで、IASBは本改訂を公表し、関連会社等に対する長期持分の測定に関する、IAS第28号とIFRS第9号の適用関係について明確化を図りました。

Ⅲ 関連会社等に対する長期持分の会計処理

本改訂では、関連会社等に対する長期持分は、IFRS第9号の適用範囲に含まれ、減損に関する規定を含めてIFRS第9号に従って会計処理することが明確化されました。具体的には<表1>のステップに従うことになります。また、本改訂に伴い、IASBは教育的資料として、長期持分に対してIAS第28号とIFRS第9号の規定をどのように適用するのかに関する設例も公表しています。本稿では当該設例を簡略化したものを紹介します(<設例>参照)。

表1 関連会社等に対する長期持分の会計処理ステップ
設例

Ⅳ おわりに

本改訂は、前述の通り、持分法が適用されない関連会社等に対する長期持分の測定に関して、IFRS第9号を最初に適用することを明確化したものです。
従って、これまで関連会社等に対する長期持分に対してIFRS第9号を適用していなかった場合には、従来の会計処理の見直しが必要になる可能性があります。IAS第28号の長期持分に該当するか否かの判断は、返済条件等の事実や状況に基づいて慎重に行う必要があります。

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