現時点では想像でしかない近い将来の診療モデルを創り出すには?

執筆者 Aloha McBride

EY Global Health Leader

Passionate about the delivery of safe, high-quality healthcare at a reasonable price. Innovator. Dog mom.

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幕末史にはまり中。もしあの時代に生きていたら、自分はどんな選択をしただろうかと日々思いを馳せている。

4 分 2021年9月9日

スマートヘルスとは患者中心の医療サービスをデザインすること、また医療モデルの見直しによって大規模な個別化医療の実現を目指すことです。

要点
  • スマートヘルスはデータのサイロ化を無くし、診療の一体化や連携を促進する。
  • スマートヘルスは、ヒト・モノ・システムについて、データを活用した、リアルタイムかつインテリジェントな意思決定を可能にする。

医療システムのデジタル化やコネクテッド化がさらに進み、⼈⼯知能やスマートテクノロジーがフルに活⽤されることで、医療の未来は急速に変化しています。デジタルイノベーションが加速し、現時点ではまだ想像でしかない近い将来の医療モデルの実現を後押ししています。

データを最適化して一元管理を実現する医療システムとして、ヒト、モノ、インフラを相互につなぐことが、医療のスマート化への始まりです。オンライン診療と対面診療が相互につながることで、医療のスマート化が広がります。また、患者一人一人の因⼦およびセンサーやウエアラブルデバイスのデータを、健康データと⼀緒に統合型医療プラットフォームのアルゴリズムに組み⼊れることで、個々人にカスタマイズされたスマート医療体験が実現します。これは重大なシフトです。医療分野以外に⽬を向けても、世界では急速にスマート化が進んでいます。スマートシティ、スマートカー、スマートユーティリティー、スマートホームでは、IoTやデータ、インテリジェント・コネクテッド・システムが活用され、経済・社会・環境のサステナビリティを支えています。

医療システムのスマート化が進むことで、統合された広範なエコシステムが構築され、これが患者と医療従事者の体験(エクスペリエンス)の向上、医療のアウトカム改善、医療サービスの利用拡⼤を後押しします。医療システムは生産性と効率が向上すれば、より多くの人により良い診療を提供することができるようになります。将来私たちは、かつてないほどの精密さで、医療を事前対応的に管理するようになるでしょう。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックを通して、医療システムが対面診療に依存していることが世界的に露見しました。医療業界はデジタルトランスフォーメーションへの転換を余儀なくされています。将来、医療従事者と患者がようやくオンライン医療を採⽤したとき、今が変換点として振り返ることになるでしょう。

この1年を通してEYのチームがクライアントと議論を重ねる中で気付いたことは、単にテクノロジーを理解することではなく、スマート化を実現させるための取り組みへと話す内容がシフトしたことです。とりわけ、デジタルを中心とした診療体験を創り上げ、事業のあらゆる側面にデジタルを組み入れることにフォーカスしています。

ただ「デジタルを取り入れる」のではなく、「医療のデジタル化」を進めるにはどうすればいいのかを医療機関は知りたいと考えています。

「医療イノベーションの加速に伴い、現時点では想像もできない近い将来の診療モデルを創り出すには?」という質問への答えとして、このテーマに基づいた5つの新しい視点を提示します。

最初の視点ではスマートヘルスを紹介し、ヘルスシステムが世界中でよりスマートになるにつれて可能性が高まる技術を考察します。情報をデジタル化するだけでは、シームレスでつながりのある診療という最終目標の達成には遠く及びません。未来へと歩みを進めるためには、医療システムや病院は、革新的なテクノロジーを受け入れ、新しい専門的スキルセットを採用し、エコシステム全体を極めて高度にネットワーク化することを許容する必要があるでしょう。

2つ目の視点ではスマートホスピタルについて考え、「スマートホスピタルをいかに実現するか」という質問にお答えします。スマートホスピタルは、高度につながった、インテリジェントかつ患者中心で、信頼性が高く持続可能な病院です。それを可能にする鍵となるのが先進テクノロジーですが、スマートホスピタルの構築は単なる技術的プロジェクトではありません。スマートヘルスの道に足を踏み出すには、既知の課題、堅固な変革管理および経営幹部のリーダーシップそれぞれについて慎重に検討する必要があります。

次にデータに着目しましょう。優れたデータなくして医療システムのスマート化はあり得ないからです。適切な場所で適切なタイミングでより良い診療を提供するには、データがすぐに利用できる状態にあることを前提とした情報アーキテクチャが必要です。ここでは、未来のヘルスケア業界におけるデータ中心の基盤を形成している5つのトレンドを探ります。

4つ目の視点では、スマートエクスペリエンスについて取り上げます。患者を重視することは、臨床的にもビジネス的にも理にかなっています。総体的な医療におけるエクスペリエンス全体を向上させることで、患者と医療従事者の双⽅が得ることのできるメリットを、⼗分に理解しておく必要があります。未来のスマートヘルスシステムでは、患者や医療従事者のエクスペリエンス改善に焦点を当てることが重要になるでしょう。

そして最後に、オンライン診療の採用に対するCOVID-19パンデミックの影響と、これらの新しいケアモデルの将来の持続可能性を検証します。米国の患者と医師を対象とした調査によれば、今回のパンデミックによって、よりスマートなヘルスケアに向けた競争への口火が切られたことが分かります。医療テクノロジーの採用は現に加速しており、デジタルファーストの診療を創り上げることの技術的フィージビリティに関する先入観は大半が払拭されています。

サマリー

スマートヘルスはヘルスケアビジネスを再定義するものであり、医療サービスの提供をより患者中心へとシフトさせ、それによって医療事故を減らし医療の質を高めます。

この記事について

執筆者 Aloha McBride

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