TradeWatch 2022年 Issue 2

TradeWatch 2022年 Issue 2 世界の貿易問題に関するG7貿易大臣の重要な声明

EY Japanの窓口

EY 税理士法人

2022年11月1日
カテゴリー 間接税

先進7カ国(以下、「G7」)の貿易大臣1らは、2022年9月14日~15日に会談し、世界経済の混乱、貿易摩擦および世界貿易における課題の増加に対するアプローチと共同対応について、議論と意見交換を行いました。2022年9月15日、閣僚は国際貿易に影響を与える多くの重要な問題に関する声明を発表しました2

ウクライナ情勢について

閣僚は、ウクライナにおけるロシアの行動を非難すると共に、制裁措置の更新、ロシア製品に対する最恵国待遇の停止、さらに対ロシア貿易に影響を与える措置についてG7作業部会における連携に対するコミットメントを新たに行いました。声明では、ウクライナ情勢が、農業生産、サプライチェーンおよび貿易において、特に発展途上国と後発開発途上国に重大な懸念を引き起こしていると指摘しました。閣僚は、食料および農業市場を開放的で透明かつ予測可能な状態を維持することへのコミットメントと、不当で制限的な貿易措置を避けるよう全てのパートナーに要請しました。この状況下で、閣僚は、第12回世界貿易機関(WTO)閣僚会議で採択された食料不安への緊急対応に関する閣僚宣言を歓迎しました3。閣僚はまた、ウクライナ政府およびウクライナ国民に対する支援を再確認すると共に、貿易を通じたウクライナの立て直しおよび回復を支援することを約束しました。

WTOの改革およびルールブックの近代化

閣僚は、世界貿易機関(以下、「WTO」)を中核とする国際的ルールに基づく多角的貿易体制の復活および改革へのコミットメントと、WTOの再構築およびWTOルールブックの改善を目的として協働する意思を改めて確認しました。彼らは、世界貿易ルールブックは経済変革を可能にし、持続可能かつ包摂的で強靭(きょうじん)な成長を促進させ、世界の人々のニーズに応えるものでなければならないとの見解を示しました。閣僚は、第12回WTO閣僚会議(以下、「MC12」)では、WTOが持続可能な開発、海洋の将来、継続的な健康および食料安全保障への危機といった今日の課題に対応することにより、WTOが貿易に関する世界のルール策定機関として有意義な成果をもたらせることを実証したと述べました。彼らは、MC12で合意された、WTOのあらゆる機能を再構築するアイデアについて建設的に関与し、MC13までに具体的な進展を達成することを約束しました。閣僚はまた、電子商取引に課す関税に対するモラトリアムについて、恒久的な解決策を見いだすことをコミットし、開かれたデジタル市場と信用に基づく自由なデータ流通を創出するために、2021年に採択されたG7デジタル貿易原則へのコミットメントを改めて表明しました。

強靭かつ持続可能なサプライチェーン

閣僚は、貿易の多様化と互恵的な貿易関係の拡大が、よりよく機能するサプライチェーンの確保、世界経済の強靭性と持続可能性を向上するための鍵であることに言及しました。彼らは、サプライチェーンの頑健性を支援するために協力する新たな機会を引き続き模索していくとともに、不測の事態に先立って、市場の脆弱(ぜいじゃく)性と潜在的な物流上の問題を特定、モニタリングおよび最小化するためのメカニズムに関する洞察とベストプラクティスを共有し続けることで、既存の協力をさらに強化すると述べました。これには、国際レベルでの輸出規制や貿易障壁への対処が含まれます。

閣僚は、貿易および貿易政策が環境および社会の持続可能性の原動力となり得ると考えています。こうした中で、G7は、環境物品・サービスの貿易の円滑化、循環型経済の促進、および貿易関連の気候対策・政策がWTOのルールと原理に整合的でありつつ、気候・環境目標やパリ協定およびグラスゴー協定のコミットメントの達成に最も貢献できる方法を含め、WTOにおける議論に積極的に関与していく予定です。

この声明は、2022年6月のG7首脳公式声明と、2021年10月の強制労働に関するG7貿易閣僚声明を再び想起させました。閣僚は、グローバルサプライチェーンにおけるあらゆる形態の強制労働および児童労働の使用を根絶するための協力と集団的努力を強化するための措置をとることを再び約束し、企業のデューデリジェンスを促進する措置を含め、企業の予測可能性と確実性を強化することになるとしました。

競争条件の公平化と経済的威圧への対処

閣僚は、貿易において公平な競争条件の創出に向けた努力をさらに強化すると述べました。共通の懸念には、あらゆる形態の強制的な技術移転、知的財産の窃取、競争優位性を得るための労働基準と環境基準の低下、国有企業の市場歪曲(わいきょく)的な行動および過剰生産能力につながるものを含む有害な産業補助金などの不公正な慣行が含まれます。

また、閣僚は、WTOにおいて、世界経済に害を及ぼす非市場的な政策や慣行がもたらす課題を明らかにし、それを軽減するために透明性の向上や、世界貿易のルールブックの現代化に関する議論を促進します。

貿易関連の経済的威圧の行使については、経済安全保障、多角的貿易体制における自由で公正な貿易、世界の安全保障と安定性を損ない、国際的な緊張をさらに悪化させるため、深刻な懸念を抱いています。経済的威圧の試みに対抗するため、閣僚は、取り組みに対する評価、準備、抑止および対応を改善するために、G7内外における関連フォーラムにおいて経済的威圧に対処するための協力をさらに強化し、協調的なアプローチを探求していきます。

巻末注

  1. 2022年のG7諸国は、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、英国、米国
  2. “G7 Trade Ministers Statement”, Office of the United States Trade Representative websitehttps://www.g7germany.de/g7-en/current-information/g7-meetings-trade-ministers-2014880(2022年10月28日アクセス)
  3. 第12回WTO閣僚会議では、漁業補助金、緊急事態におけるWTOの対応、食糧安全保障と農業、WTO改革に関する一連の決定がされている。中でも食糧に関しては、食糧不安に対する閣僚宣言や世界食糧計画(WFP)が人道支援目的で調達する食糧に対して出禁止・制限の例外とすることについての閣僚決定がなされた。

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