推進要因としては他に、革新的なテクノロジー、人材、その他のケイパビリティを獲得する必要性などがあります。
取引の決定に影響を及ぼす要素として新たに重要性を増してきたのは環境・社会・ガバナンス(ESG)です。テクノロジーセクターのCEOの46%が、ESGは今後数年間、極めて重要なバリュードライバーになると回答しています。
重要な検討課題
企業価値評価額は高止まりし、評価額で合意に至らないことや、地政学的混乱により、取引がキャンセルされるリスクも消えていません。実現する可能性のある取引について慎重に計画を練り、そのリスクとリターンを徹底的に検討することが企業には求められます。収益ギャップを解消するために性急に取引を成立させたいという衝動を抑え、取引を成功に導くことに的を絞った決定を下す必要があります。
地政学的混乱とサプライチェーンの混乱
地政学的緊張とサプライチェーン問題がテクノロジーセクターに大きな混乱をもたらしています。テクノロジーセクターのCEOの半数以上(59%)が地政学的課題により戦略的投資上の決定の調整を余儀なくされているとし、72%がサプライチェーン体制や業務の調整をしたか、調整をする予定です。
サプライチェーンの混乱の渦中にあるのは、ハードウェア中心のサブセクターです。半導体サブセクターのCEOの88%が、サプライチェーン体制を調整したと回答しています。その要因の1つは、現在の半導体チップの供給不⾜です。これに加え、通信・ネットワーク機器サブセクターも影響をかなり受けました。CEOの85%が、サプライチェーン体制を調整したと答えています。
地政学的な不確実性の高まりを受け、M&Aプロセスではデータリスクが注視されるようになってきました。ステークホルダーが今、取引の交渉中に重視しているのはデータプライバシー、データセキュリティ、ランサムウェアの問題です。特にクロスボーダー取引では、M&Aのターゲット企業を一段と厳格に調べる必要があります。
地政学的問題でクロスボーダー取引は大きな打撃を受けています。実際、テクノロジーセクターのCEOの31%が、地政学的混乱により、過去12カ月間にクロスボーダー投資計画の中止を余儀なくされたと回答しています。
重要な検討課題
テクノロジーセクターでは、地政学的要因が事業に及ぼす影響をCEOが認識しているとはいえ、より幅広いリスク管理戦略にそれを組み込むことが不可欠です。サプライチェーン体制の調整と経営判断の見直しを迫られる中、テクノロジー企業は将来に向けて事業基盤の見直し、再構築、改革を図る必要性の有無を最重要課題として検討しなければなりません。