チームの直観と主観を覚醒し、組織文化を変える「プロジェクトコーチング」の重要性

チームの直観と主観を覚醒し、組織文化を変える「プロジェクトコーチング」の重要性


組織の主体性や創造性を高め、プロジェクトを成功に導く関わりとしての「プロジェクトコーチング」をご存じでしょうか?

プロジェクトでは、「会議での発言が少なくアイデアも乏しい」「メンバーの主体性が感じられない」といった不安を抱きながら、社員が動いている現象が少なくありません。一定期間で成果を出すプロジェクトでは、人間関係が軽視され、効率性や客観性を過度に重視した状態に陥りがちです。増加するオンライン会議はなおさらその傾向を強め、創造的な解決策に不可欠となる活発な議論を失わせています。必要なのは、直観や主観を表出する対話であり、関係性の質を向上させる時間や場をプロジェクトの中に意図的につくることです。その問題の構造や対応策としての「プロジェクトコーチング」のポイントを解説します。


要点

  • プロジェクトでの協働は、効率性や客観性を過度に重視しやすくなるため、直観的・主観的な対話を失わせる。
  • 直観や主観での対話機会が減ることで、成果を生み出す基盤となる関係性の質が低下し、チームの雰囲気にも影響が出る。
  • プロジェクトと並行し、関係性を起点としたプロジェクトコーチングを実行することで、チームの主体性と創造性を維持できる。

組織課題の顕在化とともに、プロジェクトの数は増え続ける

イノベーションやDE&I、サステナビリティなど、掲げられたアジェンダや発生した組織課題に迅速に対応するために、大企業では組織図からは読み取れないが組織数と同程度の数の「プロジェクト」が存在していることも珍しくありません。プロジェクトは、課題解決に必要と思われる経験や専門性を保有したメンバーを集める性質があります。多くは部門横断プロジェクトであり、異なる部署同士、異なるビジネスを扱っている者同士が、未知のテーマに挑むことがほとんどです。メンバーが多様だからこそ、場所や時間の調整がしやすいオンライン会議での実施が当たり前になっています。また、新たな課題が発生するたびにプロジェクトは生まれるため、期待される人材であればあるほど、兼務する仕事が増加する傾向があります。

プロジェクトワークは客観化を加速させ、関係性の質をないがしろにしやすい

プロジェクトでは、スピードや進捗を重視したタスク遂行が求められるため、必然的に「効率性」や「客観性」に意識が傾きやすくなります。会議での発言やテキストメッセージそのものも、会議運営やタスク遂行において最低限なものにとどまり、かつ内容自体も誰もが納得しやすいロジックや根拠情報の羅列に陥りがちです。
結果、知らず知らずのうちに、水面下ではメンバーの主体性が次第に失われ、無難に進めてくれる声の大きな一部のメンバーに任せていればよいという冷めた参加者が増えています。例えば、以下のような現象は、プロジェクトに対するメンバーの主体性を推し量るバロメーターになります。

  • 限られた人だけが発言し、多くの人は無言でその場にいる
  • 単なる業務報告に終始し、建設的な意見やあえて別の視点で考えるような行動がない
  • 発言内容が他責で、自分事として捉えていない
  • 頼んだはずの業務がまったく進んでいない、メンバーの主体性が感じられない
  • そもそも定例会議への欠席者が増えている

見過ごされている深刻な問題は、プロジェクトワークで失われた主体的な姿勢が、組織図で行われている本業の日常業務に影響を及ぼすことです。プロジェクトで無意識かつ無自覚にまとってしまった主体性が欠如した意識や姿勢は、日常業務に少なからぬ影響を及ぼします。結果、本業でも主体性が減衰することで、組織全体の主体性を失わせていくという悪循環を引き起こします。個人が関わっているプロジェクトの雰囲気やそこへの関わり方が、組織全体の文化に直結するからこそ、プロジェクトチームの主体性を高め続けることが重要となります。

関係性に働きかけ、プロジェクトへの主体性を持続させるプロジェクトコーチング

プロジェクトチームにおける主体性を持続させるには、プロジェクトにおける参画メンバーの関係性へのアプローチが必須です。著名な事例は、マサチューセッツ工科大学のダニエル・キム教授が提唱している「組織の成功循環モデル」であり、組織の成果を出すために関係の質を起点として改善していくことの有効性を理論化しています。また、プロジェクトに近い組織形態であるティール組織においては、第三者としてのコーチがプロジェクトごとに伴走している事例が多く見られます。その役割は、チームが問題の解決に向けて主体的に取り組めるように関係性の構築と発展を支援しています。

EYSCが提供している「プロジェクトコーチング」はチーム全員が参加し、プロジェクトワークと並行して定期的に行います。そこでは、メンバー同士の直観的・主観的な対話を促進することで、深い信頼関係の構築やプロジェクトへの主体的な参画を促します。そこで重要な関わりは、以下の3点に集約できます。

1)プロジェクトの共通目的や指針の構築

  • 各メンバーが重視する価値観に基づき、プロジェクトにおいて目指したいことやビジョンを自己認識させ、必要な協力関係や相互の役割について話し合い行動指針を決める
  • その目的や指針を前提とした発言や行動が実現できているかを観察し、都度タイムリーに軌道修正を行う

2)メンバーの建設的な発言の活性化

  • 各メンバーの人間性や価値観をチーム内で表出させ、違和感や共感、直観的・主観的なものの見方をも共有できる安心安全な環境をつくる
  • 歩み寄って相手を理解し、本音で関わる対話の流れをつくるとともに、多角的に物事を捉えられるようなファシリテーションを行う

3)プロジェクトの潜在的な課題解決

  • 各メンバーが持っている漠然とした懸念や不安を引き出し、プロジェクトにおける潜在的な課題を表出させる
  • プロジェクトチームが直面している組織運営問題について全員で話し合い、プロジェクト運営における解決事例などを参考にしながら、主体的に解決できるよう促す
関係性を起点としたプロジェクトコーチングの要諦

EYSCが提供する「プロジェクトコーチング」では、動き出しているプロジェクト、これから立ち上がるプロジェクトを伴走し、「直観と主観の覚醒プログラム」を通じてメンバーの主体性と創造性を向上させます。1~2週間に一度、1 回につき最低60分が一般的なスタイルで、実際に、プロジェクトコーチングを受けた方は「会議での発言がしやすくなった」「属性や経歴以外でメンバーを深く理解できて距離が縮まった」「会議が喜びと成長がある場と認識でき、楽しみになった」「別の視点で物事を捉える習慣がついた」といった回答が多く、建設的な発言や提案の回数が増加する目に見える効果が発揮されています。また、プロジェクトコーチングの時間を通じて、プロジェクトと自分の使命感や関心事との関連を見いだした参加者たちは、新規事業推進における難易度の高い交渉の役割を自発的に担うなど、主体的に動くようになった例も数多いです。


サマリー

自社の組織文化は、社員個々人の経験に基づく認識の融合体であるからこそ、チーム単位で実施するプロジェクトコーチングは組織文化の改革手段として強力なインパクトを有します。組織全体の主体性や創造性を高めるためにも、プロジェクトにおける関係の質を向上させる継続的な働きかけは決して軽視してはなりません。


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