EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
EYではサステナビリティ開示・保証に関連したグローバル動向の最新情報を毎月お届けしています。
10月下旬、欧州サステナビリティ報告基準(ESRS)が欧州議会で承認されました。開示要求事項の緩和という課題を乗り越え、予定通り2024年1月から適用されます。これにより追加の救済措置が導入されます(詳細は「EMEIA」のセクションを参照)。欧州委員会は、EU全体で企業の負担を25%軽減するという方針を継続し達成しています。
オーストラリアでは、政府が国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)基準の「気候優先」版を公表し、各国がISSB基準を自国の法律に適合させる方法を例示しました。また、ブラジルが2026年1月1日から上場企業や投資ファンドを対象に、ISSB基準を自国の規制の枠組みに組み込むことを発表しました。これにより、ブラジルはISSB基準を全面採用するこれまでで最も大きな経済圏となりました。
サステナビリティ情報開示・保証に関するグローバルな最新動向の詳細については以下をご覧ください。
ISSBは、各国のISSB基準の採用・導入を支援するためにツールの開発を行っています。これらのツールには、ISSBナレッジハブが含まれます。これはIFRS S1とIFRS S2の適用を開始する企業のためのオンラインリソースとなるもので、今月末の完成を目指しています。さらに、エマニュエル・ファベールISSB議長は、2024年1月までにISSB基準の翻訳版を10言語に拡大することを検討しています。ISSBはすでに日本語、フランス語、中国語、スペイン語でさまざまな資料を公表しています。
ISSBはグローバルでのISSB基準採用戦略を進めていますが、ISSB基準の採用を検討している国・地域、あるいは何らかの形で採用を発表している国・地域は、オーストラリア、ブラジル、カナダ、コロンビア、香港、日本、マレーシア、ニュージーランド、ナイジェリア、フィリピン、シンガポール、台湾、英国などです。
10月下旬、国際監査・保証基準審議会(IAASB)は、国際サステナビリティ保証基準(ISSA)5000公開草案をより理解するために役立つ「よくある質問(FAQ)」を公表しました。公開草案に対する意見募集期間は2023年12月1日までです。
世界各地で、政府、基準設定主体、民間セクター、市民団体の代表が、エキスポ・シティ・ドバイで開催されるCOP28気候会議に向けた準備を進めています。会議は2023年11月30日から12月12日まで開催され、炭素排出削減対策、炭素取引、新興国市場への支援、より広範な気候関連目標などについて、多角的な議論が行われる予定です。
EYも多くのイベントを開催する予定で、EYグローバル・バイス・チェア-アシュアランスのマリー・ロール・ドラリューがモデレーターを務め、ISSB議長のエマニュエル・ファベール氏、IOSCO議長のジャン・ポール・セルヴェ氏、世界経済フォーラム(WEF)の代表が参加するサステナビリティ報告に関するパネルディスカッションなどを予定しています。
2023年10月20日、ブラジル証券取引委員会(CVM)と財務省は、ISSB基準のIFRS S1とIFRS S2を自国の規制の枠組みに組み込むことを発表しました。ブラジルの上場企業、証券化企業、投資ファンドは、2026年1月1日以降に始まる事業年度から、合理的保証を付したサステナビリティ関連財務情報の開示が義務付けられます。2026年以前にIFRS S1およびIFRS S2の情報を任意開示する企業には、限定的保証が要求されます。いずれの場合も、CVMに登録された独立監査人による保証が必要となります。ブラジルサステナビリティ報告委員会(CBPS)が、公開協議を含むプロセスを通じてISSB基準を自国の規制の枠組みとして採択する任務を負うことになります。
米国では、米国証券取引委員会(SEC)が気候関連開示規則案の最終化を目指していますが、その時期はいまだ不透明です。ゲーリー・ゲンスラーSEC委員長は、非上場中小企業に対し間接的に関連情報の提供が要求されることを回避することなど、SECスタッフはScope3の開示要件に関して寄せられた懸念に対処する努力をしていると繰り返し述べています。
一方、最近制定された3つのカリフォルニア州気候関連開示法(GHG排出報告を義務付けるSB-253、 気候関連財務リスクの開示を義務付けるSB-261、自主的なカーボン・クレジット市場参加者に対する報告義務を規定する AB-1305)は、いずれも2024年1月1日に発効します。ただし、SB-253とSB-261は2024年から発効しますが、施行は2026年からで、その前に意見募集を含む規則制定プロセスを経ることになります。
欧州議会がESRSの緩和を求める提案を否決し、年内にも同基準が正式に採択される予定です。従業員500人以上の大規模な上場企業(PIE)は、2024年1月からESRSに基づいて自社のオペレーションを評価し2025年に開示を行う必要があります。
一方、欧州委員会を中心とするEUの各機関は、開示要件や企業負担の軽減に引き続き注力しています。これには企業サステナビリティ報告指令(CSRD)やコーポレート・サステナビリティ・デューディリジェンス指令(CSDDD)に関連するものも含まれます。欧州委員会は10月中旬に2つの新たな取り組みを発表しました。
1つ目は、ESRSセクター別基準およびEU域外企業向け基準の採択を2年延期するというもので、現在予定されている2024年から2026年に採択が延期される予定です。2つ目は、インフレの影響を考慮して企業の規模の規準(純売上高と貸借対照表合計)を調整するというものです。これにより、以下の3つのうち少なくとも2つを満たす場合、大規模企業と定義されることになります。
これらの変更は2024年1月1日から適用される予定で、CSRD報告義務の対象となる企業数が減少します。
今後、EU各国は、CSRDを遵守するために必要な法律・規制・管理規定を制定するための移管プロセスを開始します。このプロセスでは、各国版CSRDルールにおいて、「加盟国オプション」と呼ばれる、これを含めるか省略するかを選択できるいくつかのバリエーションがあります。EU法の下、EU各国は2024年7月6日までに移管措置を完了させる必要があります。
2023年10月23日、オーストラリア会計基準審議会(AASB)はオーストラリアサステナビリティ報告基準(ASRS)公開草案(ASRS 1、ASRS 2、ASRS 101)を公表しました。これは、ISSB基準を自国で採用するために修正を行った最初の事例として注目を浴びています。
ASRS 1、ASRS 2、ASRS 101は、IFRS S1、IFRS S2とほぼ整合しています。しかし、広範囲のサステナビリティ報告の全般的要求事項であるIFRS S1とは異なり、ASRS 1(気候関連開示に関する全般要求事項)は、気候関連のみを対象としています。オーストラリア政府はサステナビリティ開示基準の導入にあたり「気候優先」のアプローチを提唱しています。ASRS 2(気候関連開示)は、IFRS S2と密接に整合しています。とはいえ、AASB基準に準拠して開示を行っている企業は、ASRS 1に加えてIFRS S1を適用することを積極的に選択しない限り、ISSB基準への準拠を主張することはできないことに留意が必要です。公開草案に対する意見募集期間は2024年3月1日までです。
韓国金融委員会(FSC)が10月16日、当初2025年に開始する予定だったESG報告義務化を2026年以降に延期すると発表しました。FSCは、米国など他国でのESG報告の遅れや、ISSBのような国際基準との整合性の確保が、この決定に影響していると説明しました。しかし、韓国経済界がESG報告義務化の時期に反対していることも一因と考えられます。
現在予定されている、注目すべき今後の主な日程は以下です。
国際エネルギー機関(IEA)の「世界エネルギー見通し 2023」は、投資、貿易フロー、電化、エネルギーアクセスのトレンドを含む、世界のエネルギー・システムのさまざまな側面について詳細な分析と戦略的洞察を提供しています。
World Energy Outlook 2023
EU域外に本社を置く多くの企業は、CSRDに基づいて新たに広範なサステナビリティ情報開示を行う必要があります。EYは、これらの企業がCSRDの適用範囲に含まれるかどうかを評価する方法について概説しています。
Technical Line: EUの企業サステナビリティ報告指令(CSRD)がEU域外の多国籍企業に及ぼす影響(9月21日号)
EYの最新レポートは、サステナビリティ情報に関する3つの主要な開示基準(草案も含む)を比較しており、これらの基準の類似点や相違点を理解するのに有用です。
Technical Line - How the climate-related disclosures under the SEC proposal, the ESRS and the ISSB standards compare
2021年10月22日に欧州監督当局がサステナブルファイナンス開示規則のドラフト版細則を公表
2021年10月22日、欧州監督当局より、欧州の資産運用会社等に対する開示を義務付けた「サステナブルファイナンス開示規則(SFDR)」における詳細な内容を定めた「ドラフト版細則(Draft Regulatory Technical Standards; Draft RTS)」が公表されました。
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