EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
EY新日本有限責任監査法人
公認会計士 森 さやか、松葉 純一、小倉 幹生、久保 慎悟
2024年年次改善プロジェクトは、2024年4月1日を基準日として行ったASBJが公表した企業会計基準等の要変更事項の検出作業により検出された事項、及び当該作業後の企業会計基準等の開発の過程で検出された事項について、変更後の記載及び「企業会計基準及び修正国際基準の開発に係る適正手続に関する規則」に基づいて必要とされる手続を検討の上、必要に応じて複数の企業会計基準等の改正又は修正をまとめて行うものです。
ASBJは、2024年年次改善プロジェクトにおいて検出された事項のうち、修正項目について2024年11月1日に2024年年次改善プロジェクトによる企業会計基準等の修正として公表するとともに、改正項目についても検討を重ねた結果、以下の企業会計基準、企業会計基準適用指針及び実務対応報告(以下「改正会計基準等」という。)を公表しました。
その他の包括利益の取扱いに関して、これまでに公表された複数の会計基準等で使用されている用語の一部が、連結財務諸表上の取扱いに関する記載に使用されるべき表現となっていないことが検出されました。このため、改正包括利益会計基準及び改正株主資本等変動計算書適用指針において、用語の見直しが行われました。
改正包括利益会計基準では、これまでに公表されている会計基準等で使用されている 「純資産の部に直接計上」、「直接純資産の部に計上」及び「直接資本の部に計上」という用語について、連結財務諸表上においては「その他の包括利益で認識した上で純資産の部のその他の包括利益累計額に計上」と読み替えるものとされました。
改正株主資本適用指針では、連結株主資本等変動計算書において、株主資本以外の各項目の当期変動額を主な変動事由ごとに表示する場合の例として示す項目について、「純資産の部に直接計上されたその他有価証券評価差額金の増減」等の用語が使用されていたため、用語について見直しが行われました。
用語の見直しにあたっては、同様の区分により内訳を示している包括利益会計基準と用語の統一を図ることで、連結包括利益計算書又は連結損益及び包括利益計算書と連結株主資本等変動計算書の連携が理解しやすくなると考えられるため、「組替調整額」及び「当期発生額」という用語に変更することとされました。
適用時期は以下のとおりです。
原則適用 |
2025年4月1日以後最初に開始する連結会計年度の期首から適用する |
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早期適用 |
2025年3月31日以後最初に終了する連結会計年度の年度末に係る連結財務諸表から適用できる。 この場合、2025 年3月31日以後最初に終了する連結会計年度に係る中間連結財務諸表及び四半期連結財務諸表については、改正包括利益会計基準を適用しない。また、2025 年3月31日以後最初に終了する連結会計年度に係る中間連結財務諸表については改正株主資本適用指針を適用しない。 |
公開草案における提案内容から変更はありません。
改正前の企業会計基準第27号「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準」は、具体的な税金を挙げて、当該税金について規定する税法を参照することにより特定して会計処理及び開示について定めていますが、「特別法人事業税及び特別法人事業譲与税に関する法律」(平成31年法律第4号)における特別法人事業税の取扱いについては個別の定めが設けられていませんでした。
このため、改正法人税等会計基準では、特別法人事業税の取扱いの明確化を図るための改正が行われるとともに、改正税効果適用指針では、税効果会計における特別法人事業税の取扱いについても所要の改正が行われました。
改正法人税等会計基準では、特別法人事業税の地方税法の規定により計算した所得割額(税率については地方税法に規定する標準税率による。)によって課すもの(以下「特別法人事業税(基準法人所得割)」という。)について、事業税(所得割)と同様の取扱いを行うこととなることを明確化するための変更が行われました。
また、開示に関する定めについて、「法人税、住民税及び事業税」が表示科目の例を示していることがより明確となるように表現の変更が行われました。
改正税効果適用指針では、法定実効税率の算式に特別法人事業税率が含まれることが明確化されるとともに、繰延税金資産及び繰延税金負債の計算に用いる税率に関する定めに関して、特別法人事業税は国税であるため、特別法人事業税(基準法人所得割)について法人税及び地方法人税と同様の取扱いが行われることが明確化されました。
① 適用時期(改正法人税等会計基準第20-4項及び第44項並びに改正税効果適用指針第65-4項及び第164項)
改正法人税等会計基準及び改正税効果適用指針の適用時期は以下のとおりです。
原則適用 |
2025年4月1日以後最初に開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用する。 |
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早期適用 |
2025年3月31日以後最初に終了する連結会計年度及び事業年度の年度末に係る連結財務諸表及び個別財務諸表から適用できる。 |
② 経過措置(改正法人税等会計基準第20-5項、第20-6項、第45項及び第46項並びに改正税効果適用指針第65-5項及び第165項)
改正法人税等会計基準及び改正税効果適用指針は、改正の影響を受ける企業の数が限定的と考えられる中で、影響を受ける場合には一定の負荷が生じる可能性があることから、適用初年度の期首より前に新たな会計方針を遡及適用した場合の適用初年度の累積的影響額を適用初年度の期首の資本剰余金、利益剰余金及び評価・換算差額等又はその他の包括利益累計額に加減し、当該期首から新たな会計方針を適用することができるとされています。
また、改正法人税等会計基準は、過年度に課税された特別法人事業税(基準法人所得割)に関する表示方法について、これまでの表示方法と異なることとなる場合、適用初年度の比較情報について、新たな表示方法に従い組替えを行わないことができるとされています。
さらに、改正税効果適用指針は、改正法人税等会計基準に伴って改正されたものであるため、それぞれの経過措置は、併せて適用することとされています。
公開草案における提案内容から変更はありません。
企業会計基準第27号「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準」(以下「法人税等会計基準」という。)は、具体的な税金を挙げて当該税金について規定する税法を参照することにより適用対象となる税金を特定して会計処理及び開示について定めています。
一方、ASBJの審議の過程では、法人税等会計基準は、個別の税金の創設又は廃止の都度改正が必要となる構成になっていると考えられるため、法人税等会計基準の適用対象となる税金について、具体的な税金を挙げて、当該税金について規定する税法を参照することにより特定する方法によらない定めを検討してはどうかとの意見が聞かれました。
これを受けて、ASBJは、改正会計基準等の公開草案の公表時に、法人税等会計基準の適用対象となる税金に関して、具体的な税金を挙げて当該税金について規定する税法を参照することにより特定する方法を見直すことについて、市場関係者からコメントを募集しました。その際、法人税等会計基準の適用対象となる税金を定める方法を検討する場合、例えば「所得を課税標準として課されるもの」のような原則的な定めを置く方法などが考えられるとしていました。
コメント募集の結果、原則的な定めを置く方法により見直しを行うことを概ね支持するコメントが寄せられましたが、コメントの中には、具体的な税金を挙げて取扱いを示す現行の法人税等会計基準の具体的な定めを残すことを求める意見や、見直しにより適用対象となる範囲を変更しないことを求める意見もありました。ASBJは、コメントを踏まえて、今後検討を行う予定であるとしています。
また、これに関連して、2025年3月3日に開催された第53回企業会計基準諮問会議において、寄せられたコメントを踏まえて法人税等会計基準及び関連する実務上の取扱いに関する指針の見直しを行うことについて、ASBJ の新規テーマとして提言する旨の発言がなされており、今後の基準開発の動向にもご留意ください。
改正実務対応報告第10号では、改正前の実務対応報告第10号「種類株式の貸借対照表価額に関する実務上の取扱い」(以下「改正前実務対応報告第10号」という。)の適用対象となる種類株式に関する定めについて、会社法の施行に伴い削除された商法(以下「旧商法」という。)の条文を参照したままとなっていることを検出したため、会社法を参照する定めに変更することとされました。
改正実務対応報告第10号では、当該実務対応報告の適用対象となる種類株式について、会社法第108条第1項に従い内容の異なる2以上の種類の株式を発行する場合の標準となる株式以外の株式として定義することとされました。
この点、会社法第108条第1項では、旧商法で認められていなかった種類の株式を発行することが可能とされ、旧商法で認められていた種類の株式についても設計の柔軟化が図られているため、会社法第108条第1項を参照する定義とすることにより、改正実務対応報告第10号の適用対象は、改正前実務対応報告第10号の開発時において想定されていなかった種類株式に拡大することとなります。
(3) 適用時期
改正実務対応報告第10号では、実務への影響が生じる場合が限定的であると想定されていること及び早期適用への一定のニーズがあると想定されることを踏まえ、適用時期は以下のとおりとされています。
原則適用 |
2025年4月1日以後最初に開始する連結会計年度及び事業年度の期首以後取得する種類株式について適用する。 |
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早期適用 |
2025年4月1日以後最初に開始する連結会計年度及び事業年度の期首より前に取得した種類株式のうち、2025年4月1日以後最初に開始する連結会計年度及び事業年度の前連結会計年度及び前事業年度の末日において保有する種類株式については、次のいずれかの方法を選択することができます。 |
公開草案における提案内容から変更はありません。
本稿はASBJの2024年年次改善プロジェクトによる改正会計基準等の概要を記述したものであり、詳細についてはASBJの本文をご参照ください。
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