EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
令和7年度税制改正に係る「所得税法等の一部を改正する法律」が、令和7年(2025年)3月31日に公布され、原則として4月1日に施行されています。
グローバル・ミニマム課税に関しては、軽課税所得ルール(UTPR:Undertaxed Profits Rule)が「国際最低課税残余額に対する法人税」として、また、国内ミニマム課税(QDMTT:Qualified Domestic Minimum Top-up Tax)が「国内最低課税額に対する法人税」として、令和8年(2026年)4月1日以後開始対象会計年度から適用されます。
UTPRは、多国籍企業グループ等の構成会社等が所在する国等の実効税率が基準税率(15%)を下回る場合において、所得合算ルール(IIR:Income Inclusion Rule)による課税後の残余のトップアップ税額(UTPR税額)があるときに、UTPR導入国に所在する構成会社等に対して課税する制度です。
各国のUTPR税額は、UTPR税額をグループの活動実体を表す要素(従業員等の数・有形資産簿価)に応じて配分することにより算出します。
各国における具体的な課税方式はモデルルールの範囲内においてそれぞれの国の裁量に委ねられています。日本においては、日本に配分された国際最低課税残余額に関して、内国法人及び恒久的施設等を有する外国法人に対し、その内国法人・恒久的施設等の従業員等の数・有形資産簿価に応じて課税することとされました(法法82の11①、145の2①)。
また、国際的な事業活動の初期段階における適⽤免除として、構成会社等の所在地国の数が6以下であること等の一定の要件を満たす場合、5年間は適⽤免除とされます(法法82の11③一、法令155の59⑧)。
QDMTTは、多国籍企業グループに属する⾃国内の構成会社等について、他国のIIR/UTPRに優先し、国内の実効税率が基準税率(15%)に⾄るまで課税する仕組みです。
国際合意に沿ったDMTT=QDMTTを導⼊していれば、他国から見た⾃国内の構成会社等に係るトップアップ税額はゼロとみなされます。この場合、他国においてIIRの税務申告が必要になる場合でも、その他国の法令に基づいて求められる⾃国の実効税率や税額の計算は⼀律に不要となります。
日本における実効税率(国内実効税率)が基準税率(15%)に満たない場合、国内最低課税額は、原則として、以下の通り計算されます(法法82の19②)。
国内最低課税額=(国内グループ純所得の⾦額-実質ベースの所得除外額)×(15%-国内実効税率)
この国内最低課税額は、各構成会社等の帰責性、すなわち、「個別基準税額(個別計算所得等の⾦額×15%)-国内調整後対象租税額」に基づき計算した割合で各構成会社等に配分されます(法法82の19②)。
また、国内最低課税額の計算上、日本以外の国等で課された⼀定の被配分当期対象租税額・被配分繰延対象租税額(例:日本に恒久的施設を有する外国法人がその所在地国でその恒久的施設に帰属する所得に対応する部分について課税を受ける場合のその課税額)は、日本の構成会社等(同例における日本の恒久的施設)に配分しない(いわゆるプッシュダウンを行わない)こととされます(法令155の61①)。
なお、UTPRと同様に、国際的な事業活動の初期段階における適⽤免除が設けられていますが、日本に所在する構成会社等に対して、外国でIIRを課することとされている場合には、QDMTTに係る適⽤免除は適⽤しないことされています(法法82の19⑭)。これは、QDMTTは外国によるIIR/UTPR課税を防⽌する機能を有するものであるからと考えられます。
さらに、IIRと同様に、移⾏期間CbCRセーフハーバーが設けられ、具体的には、令和8年(2026年)12⽉31⽇以前に開始する対象会計年度(令和10年〈2028年〉6⽉30⽇以前に終了するものに限る)においては、①デミニマス要件、②簡素な実効税率要件または③通常利益要件のいずれかを満たす場合には、国内最低課税額をゼロとすることができます(令7法附則18)。
これらの改正内容に関するその他の内容については、令和7年度税制改正大綱(詳細版)10ページもご参照ください。
EY税理士法人
関谷 浩一 パートナー
戸崎 隆太 アソシエートパートナー
野々村 昌樹 シニアマネージャー
※所属・役職は記事公開当時のものです
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