引当金の実務上のポイント

引当金の実務上のポイント


情報センサー2024年8月・9月 会計情報レポート


EY新日本有限責任監査法人 品質管理本部 会計監理部 公認会計士 松川 由紀子
EY新日本有限責任監査法人 品質管理本部 会計監理部 公認会計士 松葉 純一

品質管理本部 会計監理部において、会計処理および開示に関して相談を受ける業務、ならびに研修・セミナー講師を含む会計に関する当法人内外への情報提供などの業務に従事している。


Ⅰ はじめに

引当金は、将来において費用又は損失が発生することが見込まれる場合に、当期に帰属する金額を当期の費用又は損失として処理し、その相手勘定として貸借対照表に計上される貸方項目です。企業会計原則注解の(注18)(以下、注解18)において、引当金の計上要件が以下のように定められています。

① 将来の特定の費用又は損失であること
② その発生が当期以前の事象に起因するものであること
③ 発生の可能性が高いこと
④ 金額を合理的に見積ることができること

このように、引当金については企業会計原則注解において計上要件の定めがあるものの、引当金に関する包括的な会計基準は設定されておらず、その定義と範囲について明確には定められていません。

このため、実務では、引当金計上の要否の検討において、しばしば判断に迷うようなことがあるかもしれません。

以下では、引当金の基本的な事項を確認するとともに、引当金の要件の判定における実務上のポイントを解説します。

なお、文中の意見にわたる部分は筆者らの私見であることをあらかじめお断りします。

 

Ⅱ 引当金の基本事項

1. 引当金の計上

前述の通り、注解18で4つの計上要件が定められていますが、具体的な内容は定められていないため、個々のケースにおいて前記4つの要件に照らして引当金の計上要否を判断することになります。

第1要件の「将来の特定の費用又は損失であること」は容易に判定できると思われますが、第2要件の「その発生が当期以前の事象に起因するものであること」については、実態に応じた判断を要します。この第2要件についての実務上のポイントは後述します。

第3要件の「発生の可能性が高いこと」及び第4要件の「金額を合理的に見積ることができること」の判定は見積りによって行われるため、慎重な判断が求められます。


2. 引当金の測定

(1) 当初測定

引当金の計上時の金額の測定に関する包括的な定めはありませんが、注解18において合理的な見積りが求められていることから、引当金の計上時点において入手可能な情報に基づき、最善の見積りを行うことが求められます。なお、退職給付引当金のように、個別の会計基準等に定めがあるものを除いて、引当金の使用までに1年以上要すると予想される場合でも、時の経過による価値の変化は考慮されず、負債を現在価値に割り引くことを求める定めはありません。

(2) 事後測定

引当金は見積計上されますので、いったん計上された引当金についてもその見積額の見直しが必要となります。例えば、貸倒引当金の見積りにおける得意先の財政状態の変化などのように、見積りのための前提となる事実に変更が生じた場合、これに対応して計上すべき引当金の額を見直します。過去において入手可能な情報に基づき最善の見積りを行った場合、状況の変化により会計上の見積りの変更を行った時の差額又は実績が確定した時の見積金額との差額は、その変更のあった期又は実績が確定した期に、営業損益又は営業外損益として処理することになります。一方で、引当額の過不足が計上時の見積り誤りに起因する場合には、過去の誤謬(ごびゅう)に該当するため、修正再表示を行うこととなります(企業会計基準第24号「会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」55項なお書き)

※ 実務上は、有価証券報告書の場合、修正再表示に先立って訂正報告書が提出されることになると考えられます。また、計算書類の場合、過去の誤謬が重要な場合には、前期末の期末残高に誤謬の修正の累積的影響額を加えたものを当期の期首残高として作成されることが実務上多く、重要でない場合には、修正額を当期の損益として処理することになると考えられます。
 

3. 引当金の取崩し

計上された引当金を取り崩すのは、以下の2つの場合が考えられます。

(1) 引当金設定の要因となった事象が発生した場合(目的取崩)

例えば、貸倒引当金について、実際に得意先の倒産などにより売掛金の回収ができなくなった場合などがこれにあたります。引当金計上額が過去において入手可能な情報に基づき最善の見積りを行っていた場合、引当金を取り崩し、実際に発生した費用と引当計上された見積額との差額を取崩した期の損益として処理します。

(2) 引当金設定の要件を満たさなくなった場合(目的外取崩)

例えば、貸倒引当金について、引当金の設定時は得意先の財政状態の悪化などにより売掛金の回収ができなくなると見込んでいたものの、得意先の状況が好転したことにより、損失の発生可能性が低下した場合などがこれにあたります。注解18の要件に照らし、引当金を使用する可能性が低くなった場合には引当金を取崩し、その期の損益として処理します。

 

Ⅲ 日本の会計基準等において記載のある主な引当金

日本では、引当金に関する包括的な会計基準は存在しないものの、個別に会計基準等の文書で取り扱われている引当金があります。<表1>が、引当金に関して記載のある主な文書です。
 

表1 引当金に関して記載されている主な文書

文書名引当金
企業会計基準第10号「金融商品に関する会計基準」
移管指針*1第9号「金融商品会計に関する実務指針」
貸倒引当金
監査委員会報告第71号「子会社株式等に対する投資損失引当金に係る監査上の取扱い」投資損失引当金
監査・保証実務委員会実務指針第61号「債務保証及び保証類似行為の会計処理及び表示に関する監査上の取扱い」債務保証損失引当金

企業会計基準第26号「退職給付に関する会計基準」

企業会計基準適用指針第25号「退職給付に関する会計基準の適用指針」(以下、退職給付適用指針)

退職給付引当金
監査・保証実務委員会実務指針第42号「租税特別措置法上の準備金及び特別法上の引当金又は準備金並びに役員退職慰労引当金等に関する監査上の取扱い」租税特別措置法上の準備金のうち引当金の要件を満たすもの満たすもの

特別法上の引当金又は準備金のうち引当金の要件を満たすもの

役員退職慰労引当金

利息返還損失引当


 
企業会計基準第4号「役員賞与に関する会計基準」役員賞与引当金
実務対応報告第30号「従業員等に信託を通じて自社の株式を交付する取引に関する実務上の取扱い」株式給付引当金

企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」
 

企業会計基準適用指針第30号「収益認識に関する会計基準の適用指針」

製品保証引当金
 

工事損失引当金

企業会計原則と関係諸法令との調整に関する連続意見書第四「棚卸資産の評価について」買付契約評価引当金
会計制度委員会研究資料第3号「我が国の引当金に関する研究資料」(以下、研究資料)各引当金の事例考察*2
引当金に関する論点の整理引当金総論

*1 2024年7月1日付けで企業会計基準委員会から、移管指針「移管指針の適用」等が公表されている。

*2 具体的事例における会計処理の考え方が示されていますが、あくまでも公表時点での考え方の1つを示しているものであり、実務上の指針として位置付けられるものではなく、実務を拘束するものでもないとされている。


Ⅳ 引当金の第2要件の判定の実務上のポイント

ここからは、実務において最も判断の要素が大きい、注解18における引当金の第2要件、すなわち「その発生が当期以前の事象に起因し」の要件についての判定における実務上のポイントを解説します。<表2>は、研究資料において対象とされている引当金のうち主なものについて、研究資料におけるそれぞれの引当金の第2要件の考え方をまとめたものになります。
 

表2 研究資料における引当金の第2要件の考え方

項目引当金の名称引当金の第2要件(その発生が当期以前の事象に起因)の考え方
従業員・役員への給付賞与引当金支給日に在籍することが賞与支給の条件となっている場合、将来の賞与支給の全部又は一部が当期末までの従業員による勤務に起因しているか否かにより判断することになると考えられる。

いわゆる決算賞与については、支給理由、支給額の算定方法、支給時期などを総合的に勘案する必要があるが、例えば、当該賞与の支給が当期における一定の業績達成を根拠とし、当期における従業員による勤務に起因している場合には引当金の第2要件を満たすことになると考えられる。

 
役員賞与引当金業績連動型役員報酬に含めるなどの方法により期末日前に役員賞与の支給額を株主総会で決議している場合には、役員賞与の支給が当期の役員としての職務に起因しているものとして引当金の第2要件を満たすことになると考えられる。

一方、期末日後に株主総会で役員賞与の支給額を決議する場合には、当期の職務に係る役員賞与を期末日後に開催される株主総会の決議事項とする場合であっても、当該決議事項とする額又はその見込額(当期の職務に係る額に限るものとする。)を、原則として、引当金に計上するとされている(企業会計基準第4号「役員賞与に関する会計基準」第13項)。

 
役員退職慰労引当金将来の役員退職慰労金の支給の全部又は一部が当期末までの役員による職務に起因している場合、引当金の第2要件を満たすことになると考えられる。

これに対して、功労加算金については、一般的に、随時的な報奨としての性格をもつことから、役員退職慰労引当金には含まれないことが多いと想定される。
不利な契約工事損失・受注損失引当金契約締結当初から損失が見込まれる場合、又は契約締結後の環境変化によって損失が見込まれる場合のいずれであっても、その発生は過去の事象に起因し、引当金の第2要件を満たすことになると考えられる。

 
買付契約に関連する引当金将来の棚卸資産の購入に伴って生じる損失が、当期以前の解約不能の買付契約の締結及び当期末までの事業環境の変化に起因している場合、引当金の第2要件を満たすことになると考えられる。

 
転貸損失引当金転貸損失が見込まれる場合、当該損失が当期以前に締結した解約不能の賃借契約に起因するものであれば、引当金の第2要件を満たすことになると考えられる。
訴訟・法令違反等訴訟損失引当金訴訟が過去の事象を対象としている場合、引当金の第2要件を満たすことになると考えられる。

 
リコール損失引当金当期以前に販売済みの製商品に安全上の問題等が発生したことに起因する場合、引当金の第2要件を満たすことになると考えられる。
将来の費用又は損失修繕・特別修繕引当金現在の当該設備の利用によって、次回の修繕や特別修繕が必要となる場合、引当金の第2要件を満たすことになると考えられる。

 
将来の営業損失過去の不利な契約の締結により生じる損失を除く、実際に営業活動を行わなければ発生しない将来の営業損失については、その発生が当期以前の事象に起因しているとはいえないことから、引当金の第2要件を満たさないと考えられる。
環境対策及びリサイクル環境対策引当金、環境安全対策引当金製造活動等に伴って生じる産業廃棄物については、企業に適正に処理する義務があることから、引当金の第2要件を満たすことになると考えられる。

工場等からの臭気や騒音等に対処するための費用については、法的義務がある場合だけでなく法的義務がない場合であっても、実際に周辺住民に被害が発生しているときには、引当金の第2要件を満たすことになると考えられる。

 
リサイクル費用引当金・再資源化費用等引当金家電リサイクル法、PCリサイクル法及び二輪車リサイクルシステムでは、法的義務の有無に違いはあるが、いずれの場合にも、当期以前のリサイクル対象物の販売に起因していることから、引当金の第2要件を満たすことになると考えられる。
リストラクチャリング事業構造改善引当金、事業撤退損失引当金、事業整理損失引当金等リストラクチャリングに伴い発生する費用又は損失については、原則として、固定資産の減損損失、投資有価証券の減損、貸倒引当金、未払退職金等のそれぞれの内容に応じた会計基準を適用して会計処理し、表示することになると考えられる。その上で、会計基準では直接規定されていない費用又は損失について、引当金の認識の要否を判定することになると考えられる。

この場合、引当金の認識時期は、リストラクチャリング計画の決定・公表後、その実施前において、引当金の第2要件を満たしているかどうかを判定することになると考えられる。

 
本社移転損失引当金、移転費用引当金、店舗閉鎖損失引当金等移転又は閉鎖等の方針を決定しただけで期末日までに移転が行われていない場合には、一般的には、費用の発生が当期以前の事象に起因しているとは判断されないため、引当金の第2要件を満たしている場合は多くないものと考えられる。

 
リストラクチャリングに伴う割増退職金等リストラクチャリング計画を経営者が決定したのみの段階では、一般的には、引当金の第2要件を満たさないと考えられる。

早期退職の募集が開始された場合には、引当金の第2要件を満たすことになると考えられる。
その他災害損失引当金当期以前に発生した災害を直接の原因としている場合、引当金の第2要件を満たすものと考えられる。

前記の引当金の第2要件の考え方のうち、以下では、リストラクチャリングに関連する引当金について事例を用いて説明します。

事例

製造業を営むP社(3月決算)は、20X1年3月期中の取締役会において、同じく製造業を営む国内子会社S社の清算を決議し、同日に対外公表した。また、同時に、本社の退去、工場の撤去及び従業員の早期退職の募集を決議している。

S社の状況は以下のとおり。

  • S社の本社は、都内のビルの1フロアにある。定期建物賃貸借契約を締結しており、契約期間は10年、早期解約時には残存期間分の家賃を支払う契約となっている。20X1年3月末時点での入居期間は7年である。契約上原状回復義務を有している。なお、実際の退去は20X1年4月以降となる。

  • S社は、親会社の保有する土地に工場を有している。契約上原状回復義務はなく、法令上の撤去の要請もない。なお、実際の撤去は20X1年4月以降に着手となる。

  • S社の従業員の早期退職については、20X1年3月期中に募集が開始されている(仮に応募しない場合、P社へ転籍となる)。なお、早期退職に応募した場合、割増退職金が支払われる。


本事例の20X1年3月期における引当金の第2要件の考え方

本社の退去について

本事例の賃貸借契約では、早期解約時には残存期間分の家賃を支払う契約となっています。このような、リストラクチャリング計画の一環として支払うこととなる、過去の契約に基づく違約金について、どの時点で費用を認識すべきかについて会計基準上明確な定めがないため、論点となります。この点、実務的には、取締役会決議などの会社としての意思決定がなされたタイミングで、残存期間の3年分の家賃の支払い義務の発生が当期以前の事象に起因していると判断し、引当金の第2要件を満たすものと判定することが多いと考えられます。しかし、機関決定時から解約契約の締結時まで、いつの時点で当該事象が発生しているかについては検討の余地があると考えられます。

なお、本事例におけるS社の本社固定資産に対しては、契約上原状回復義務を有していることから、資産除去債務が計上されているものと考えられます。このため、賃貸借契約に基づく退去に要する費用のうち、原状回復義務の履行に要すると見込まれる費用については、企業会計基準第18号「資産除去債務に関する会計基準」等に従い会計処理を検討することになると考えられます。

工場の撤去について

本事例におけるS社の工場には契約上原状回復義務がなく、法令上の撤去の要請もないことから、資産除去債務は計上されていないことが考えられます。このように、法令や契約において撤去することが要請されない場合における、引当金の第2要件の考え方が論点となります。

この点、親会社の保有する土地に建てられている工場の撤去に要する費用について、その発生の原因となる事象は、あくまで工場の撤去の実行により財またはサービスの提供を受けた時点で発生し、その時点で義務を負うものであり、意思決定や契約により債務を負う性質のものではないと考えられます(「引当金に関する論点の整理」第42項(3)参照)。

このため、取締役会等でリストラクチャリングの一環として工場の撤去の決議をし、業務請負契約を締結していたとしても、本件のように実際の撤去は20X1年4月以降となり、期末日時点で実際に工場の撤去が未だ行われていない場合、費用の発生が当期以前の事象に起因しているとは判断されず、引当金の第2要件を満たさないものと考えられます。

従業員の早期退職の募集について

本事例におけるS社の従業員の早期退職については、20X1年3月期中に募集が開始されています。また、早期退職に応募した場合、割増退職金が支払われることになっています。

この点、割増退職金の制度について取締役会決議がなされており、従業員が早期退職に応募可能となっている状況下であれば、割増退職金の実質的な発生原因は存在していると考えられるため、引当金の第2要件を満たすことになると考えられます。なお、従業員の早期退職の募集に係る早期割増退職金については、従業員が早期退職金制度に応募し、かつ、当該金額が合理的に見積られる時点で費用処理することになるため(退職給付適用指針第10項)、実際に従業員の応募があることが引当金計上の要件となると考えられます。


本事例における引当金の計上の要否

前記の20X1年3月期における引当金の第2要件の考え方より、本社の退去に係る賃貸借契約の早期解約費用及び従業員の早期退職の募集に係る早期割増退職金について、その発生が当期以前の事象に起因する将来の特定の費用又は損失であると捉え、その他の引当金の要件(発生の可能性が高く、かつ、その金額を合理的に見積ることができる場合)を満たすのであれば、引当金を計上することが考えられます。他方、工場の撤去に係る費用については、その発生が当期以前の事象に起因しているとは判断されないと考えられるため、引当金は計上されないものと考えられます。

 

Ⅴ 引当金に関する日本基準と国際財務報告基準(IFRS)との比較

国際財務報告基準(IFRS)における引当金に係る会計処理等は、国際会計基準(IAS)第37号「引当金、偶発負債及び偶発資産」(以下、IAS第37号)に定められています。本章では、IAS第37号の定めについて、日本基準との主な相違点について解説します。


1. 引当金の認識要件

日本基準では、注解18において、将来の特定の費用又は損失であって、その発生が当期以前の事象に起因し、発生の可能性が高く、かつ、その金額を合理的に見積ることができる場合には、当期の負担に属する金額を当期の費用又は損失として引当金を計上することとされています。

他方、IFRSでは、IAS第37号第14項において、引当金は以下の要件をすべて満たすときに認識するものとされています。

  • 企業が過去の事象の結果として現在の義務(法的又は推定的)を有していること

  • 当該義務を決済するために経済的便益を有する資源の流出が必要となる可能性が高いこと

  • 当該義務の金額について信頼性のある見積りができること

日本基準では、債務性は要件とされていない一方、IFRSでは、現在の債務であることが要件とされています。

このため、例えば修繕引当金のような債務性を有しない引当金については、日本基準では、注解18の要件を満たす場合には引当金を計上することになる一方、IFRSでは、その計上は認められないことになります。


2. 推定的債務

日本基準では、推定的債務の考え方を示す定めはありません。

他方、IFRSでは、IAS第37号第10項において、引当金とは、時期または金額が不確実な負債をいうとされています。この負債には、法的債務のみならず推定的債務も含まれます。推定的債務とは、以下のような企業の行動から発生する義務をいいます。

  • 確立されている過去の実務慣行、公表されている方針又は十分に具体的な最近の声明によって、企業が外部者に対しある責務を受諾することを表明している

  • その結果、企業はこれらの責務を果たすであろうという妥当な期待を外部者の側に生じさせている


3. 引当金の算定

日本基準では、Ⅰに記載のとおり、具体的な算定方法などを定めた包括的な会計基準はありません。

他方、IFRSでは、IAS第37号第39項において、複数のシナリオが想定されるときのように、測定対象の引当金が母集団の大きい項目に関係している場合には、債務はすべての生じ得る結果をそれぞれの関連する確率により加重平均して見積もられます(期待値法)。

また、IAS第37号第40項において、単一の債務が測定される場合は、見積もられた個々の結果のうち、最も可能性の高い結果が、当該負債に対する最善の見積りとなり得るとされています(最頻値法)。ただし、この場合であっても、最も可能性の高いシナリオ以外の結果の確率がほとんどを占めている場合には、最善の見積りは、最も可能性の高いシナリオとは異なる金額となります。


4. 割引計算

日本基準では、3.のとおり、該当する基準はありません。

他方、IFRSでは、IAS第37号第40項において、将来支出する引当金について貨幣の時間価値の影響に重要性がある場合には、債務の決済に必要と見込まれる支出の現在価値を用いなければならないとされ、割引計算が求められることになります。

そのほかに、IFRSでは不利な契約やリストラクチャリング引当金についても個別に定めが設けられています。



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