ベトナム、COVID-19パンデミックの影響を受けた企業および個人に対する各種支援策を規定する決議

ベトナムJBS ‐ タックスアップデート2021年10月

2021年10月のタックスアップデートの要点は以下のとおりです。

  • COVID-19パンデミックの影響を受けた企業および個人に対する各種の新支援策
  • 電子インボイスと電子ドキュメントに関する新通達
  • 2020年10月19日付租税管理法および政令126/2020/ND-CPの複数の条項の実施ガイドラインを規定する新通達

COVID-19パンデミックの影響を受けた企業および個人に対する各種支援策を規定する決議

ベトナム国会常任委員会は、第3回会合(2021年9月)において決議を可決しました(以下、「本決議」)。 本決議は、COVID-19パンデミックの影響を受けた企業および個人に対する複数の支援策を規定しています。 財務省(MoF)は、本決議の実施ガイドラインを規定する政令草案(以下、「政令草案」)を作成しています。

2021年9月18日に財務省は、政令草案に対する関連省庁および管轄当局からの意見を求めるオフィシャルレター10771/BTC-CSTを発行しました。 政令草案は以下の構成です。

  • 第1条:法人税(CIT)の減税
  • 第2条:個人事業主・自営業世帯への免税
  • 第3条:付加価値税(VAT)の減税
  • 第4条:遅延利息の免除
  • 第5条:施行
CIT減税

政令草案におけるCITの減税に関する規定は、COVID -19パンデミックの影響を受けた企業・組織に対する2020年度のCIT納税額の30%減額を定めた決議116/2020/QH14の内容の大半をそのまま採用しています。 CIT減税の対象となる条件には、(i)年間売上が2,000億VND以下であること(決議116と同様)に加え、(ii)2021年度の総売上が 2019年度の総売上より減少していることとされています。

個人事業主・自営業世帯に対する免税

政令草案によると、あらゆる業種および地域における個人事業主・自営業世帯に対して、2021年第3四半期および第4四半期に発生する個人所得税(PIT)、VAT、およびその他の税金が免税されます。

VAT減税

政令草案によると、2021年10月1日から2021年12月31日の期間において、特定の事業分野の商品やサービスを販売する企業・組織は、VAT減税を受けることができます。当該減額の内容は、2021年10月1日以降のインボイスに記載する必要があります。

  • 控除方式に基づきVATを納税する企業・組織は、該当するVAT率が30%減税されます。
  • 直接方式に基づきVATを納税する企業・組織は、VAT算定に用いる付加価値が30%減額されます。

VAT減税の対象となる商品およびサービスには、以下の事業が含まれます。

(i) 輸送サービス;宿泊および飲食サービス;旅行代理店、ツアー事業、ツアーのプロモーションおよび開催に関するアシスタントサービス; (ii) 出版事業;映画撮影活動、テレビ番組制作、録音および音楽出版; 創作、芸術およびレクリエーション活動; 図書館、アーカイブ、美術館、その他の文化活動;スポーツ活動および娯楽、レクリエーション活動

オンライン活動は、30%のVAT減税の対象にはなりません。

また、政令草案では、2021年10月1日前までに当該政令が発行されない場合には、財務省は各省・市の税務当局に対して30%減税の対象となる商品およびサービスのインボイスの発行に関するガイダンスを提供するオフィシャルレターを発行するとされています。

遅延利息の免除

政令草案によると、2020年度において損失が発生した企業(従属支店、事業所などを含む)は、2020年および2021年において発生した税金、土地使用料、土地リース料の遅延利息が免除されます。2020年度における損失はCIT関連規定に基づき決定されます。

施行

本決議および政令は同日に発効されると見込まれています。

2021年9月17日付通達78/2021/TT-BTC(以下、「通達 78」)は、インボイスおよび資料に関する租税管理法38/2019/QH14および2020年10月19日付政令123/2020/ND-CPの条項の実施に関するガイドラインを規定しています。

通達 78により、以下の点が新たに規定されました。

  • 政令123/2020/ND-CPに基づく電子インボイスの適用が2022年7月1日から開始されることが改めて明示されました。ただし、財務省は、本通達の発効日(2022年7月1日)より前に、税務総局(GDT)の評価および要請に基づき、本通達に従って電子インボイスを適用するためのインフラ要件を満たす特定の事業地域に関する決定を発行することとなります。インフラ要件を満たしこれらの事業地域に所在する企業は、税務総局の指示に従って2022年7月1日より前に電子インボイスを適用しなければならない可能性があります。
  • 電子インボイスの発行の委任に関する新しいガイダンスが導入されました。委任者および受任者は、政令123/2020/ND-CPに添付されたフォーム01DKTD/HDDTを使用し、税務当局に通知する必要があります。
  • 電子インボイスに用いられる記号体系が明確化されました。この新しい体系に従って電子インボイスに付される記号により、通達78に基づき発行された電子インボイスが判別しやすくなります。
  • 電子インボイスのデータを税務当局のシステムに送信する際に発生したエラーの処理に関するガイダンスが示されました。
  • 本通達は、2022年7月1日より発効されます。

財務省は租税管理法および 2020年10月19日付政府発行政令 126/2020/ND-CPの条項の実施に関するガイドラインを規定する2021年9月29日付通達80/2021/TT-BTC(以下、「通達 80」)を発行しました。その概要は以下のとおりです。

1. 税務申告、税額計算、税務確定申告、納税額割当の事例、企業が事業を行っている各省への納税額の割当方法、および各種税金(VAT、特別消費税、 天然資源税、環境保護税、CIT、PIT)の納税に関するガイダンスが第13、14、15、16、17、19条に規定されています。

  • 地方税務当局への省外取引活動のVAT申告に関する規制が削除されます。
  • 納税者が本拠地を置く省以外の省での不動産譲渡および建設事業活動に対し、VATの割当率は従前の2%から1%に引き下げられます(第13条2b項、2c項)。
  • 納税者が本社から独立して会計を行う支店を有する省でのCITの申告・納税に関する規定がなくなりました。なお、現時点ではこの場合の税務上の取扱いは明らかになっていません。
  • 納税者が本拠地を置く省以外に生産施設(従属支店、事業所)を置く省へのCITの割当については、割当比率の決定に用いる費用は、課税期間中に発生した実際の費用となります(第17条2c項)。
  • CIT優遇措置の対象となる生産施設(従属支店および事業所)は、優遇措置の対象となる事業活動の実績および優遇措置のレベルに基づき税務申告を行う必要があります(第17条2c項)。
  • 不動産譲渡が行われた省へのCITの割当の決定に用いられる四半期および確定申告の納税割合は、すべての不動産譲渡活動(インフラに対する投資や、譲渡または貸与のための住宅の計画、進捗に伴う顧客からの前払金の徴収などを含む)において収入の1%となります。つまり、従前のように収入から費用を差し引いた金額に基づいて税金を計算する方法は適用されなくなります。不定期的に不動産譲渡取引を行っている企業は、今後、不動産譲渡取引が発生する都度CIT申告を行うことはなくなります。各省で年度中に納税された税額は、本社での確定申告に基づき不動産譲渡活動から納税されるCITと相殺されます(第17条2b項および3b項)。
  • 給与・賃金に対するPITについては、雇用主は、各省で勤務する各従業員の給与・賃金収入に対して納税しなければならないPITの額を、各従業員の実際の源泉徴収税に基づいて個別に決定する必要があります。
  • 納税に関して、納税者は、本社の所在地および関係のある各省に納税するために、一つの納税資料のみを作成します。 納税資料を受け取った国庫は、各省に割り当てられた徴税額を会計処理するものとします(第12条4項)。

2. 税金還付・相殺

  • 納税者が本拠地を置く省と異なる省で不動産譲渡または建設事業活動を行った場合に関するCIT還付に関する事例が追加されます(第45条1g項)。
  • 解散、破産、または活動が終了した企業・組織について、特定の場合におけるVAT還付を申請するための手順および申請書類に関するガイダンスが追加されます(第31条、第33条1c項)。
  • 税金還付申請に関する申請書類について、詳細なガイダンスが規定されます(第28条、第29条、第30条、第31条)。
  • VATが誤って還付されたが控除の条件を満たす場合、誤りが発見された期間の翌期に控除を申告するか、税務当局または管轄当局からの還付回収決定文書を受け取った期間に申告することができます(第40条4項)
  • 税関当局による税金(通関手数料および手数料を除く)は、還付額または過払の税額と相殺されます(第34条2d項)。
  • 本社での還付対象または過払の税額は、従属支店が納税すべき税金と相殺され、その逆も同様になります(第34条2d項)。
  • 納税者が自身の納税義務を解決した後も還付対象または過払の税額を有する場合、当該金額を別の納税者の納税義務と相殺することができます(第34条2dd項)。
  • 会計帳簿上で10年以上経過した納税者の過払額と、登録住所で営業していない納税者の過払額を税務当局が解消するための手順および手続に関する規則が追加されます(第26条2項、3項)。
  • 納税者が租税条約に基づく還付申請を目的として、国庫および商業銀行により発行された納税証明書を提出することは不要になります。その代わりに、納税者はフォームにしたがい、納税に関する資料のリストを提出することができます(第30条1項b5)。
  • 税務還付の回収(第40条1項および2項、第50条):
    • 管轄当局による監査および検査を通じて納税者が誤って還付を受けたことが判明した場合、納税者は過払の還付額を返金し、また、還付額の支払日または国庫が還付金を他の支払義務と相殺した日からの遅延利息を納付する必要があります。 
    • 納税者が自ら還付額が規制に適合しないことを発見した場合には、規定に基づき追加の申告を行い、過払の還付金額を返金し、還付額の支払日または国庫が還付金を他の支払義務と相殺した日からの遅延利息を納付する必要があります。

3. 税務調査

  • 納税者がテクノロジーアプリケーションを使用するための条件を満たす場合、納税者の所在地での調査実施は必須ではなくなります(第72条7項)。
  • 納税者の本社所在地での税務調査チームの活動の監督に関する規定が追加されます(第72条6項)。
  • 税務調査の議事録の草案は、税務調査チームおよび納税者に公表される必要があります。納税者は異議を申し立てることができますが、調査完了日から5営業日以内に、議事録に署名する必要があります。その後も納税者が引き続き異議を有する場合には、当該異議は議事録に記録されるか、署名された議事録に添付されるものとします(第72条7.e1)。
  • 税務当局の事務所において税務申告書類を調査する場合、税務当局は納税者に対し調査ごとに2回まで情報および資料の追加・説明を要求するものとします(第71条4項)。このような上限はこれまで規定されていませんでした。
  • 年次税務調査計画(調整後計画を含む)は、計画、又は調整後計画が決定された日より30日以内に税務当局のウェブサイトで公開されるか、納税者および納税者を直接管理する税務当局に書面、電話または電子メールにて通知されます(第72条4項)。

4. その他の事項

  • 遅延利息の調整(第21条3項):
    • 修正申告により納税すべき税額が減額された場合、納税者は追加申告により減額される遅延利息を自ら確定するものとします。
    • 税務当局または管轄当局が納税すべき税額の減額を認識した場合、または納税すべき税額の減額を決定した場合、それに応じて遅延利息を減額するための調整を行うものとします。
  • 税務当局は、納税者が租税条約またはその他の国際条約に基づく免税・減税の対象であるかどうかを通知します(第64条1項)。
  • 租税条約に基づく免税・減税に属する通知の書類に関して、翻訳が必要な資料および合法化が必要な場合の詳細が規定されます(第85条)。
  • ベトナム居住者である納税者は、外国の税務当局が租税条約の規定と異なる方法で納税者に課税すると思われる場合、ベトナムの税務当局に二国間協定手続の適用を要求することができます。 (第62条4項)。

5. 電子商取引(第IX章)

  • 海外のサプライヤーは、(1)直接登録し、申告および納税を行うか、(2)ベトナムの法律に従って運営される組織または代理人に対し、代わりに登録、申告および納税を行うことを委任することができます。 海外のサプライヤーが上記のいずれかに従わない場合には、以下の規定が適用されます。
    • 海外のサプライヤーから商品およびサービスを購入したり、海外のサプライヤーの代わりに商品を流通したり、サービスを提供したりするベトナムの法律に基づき設立され、運営・営業登録された組織は、通達103/2014/TT-BTCの規定に基づき、海外のサプライヤーに代わり、申告、源泉徴収および納税を行う義務を負います。
    • 個人が海外のサプライヤーの商品およびサービスを購入する場合、商業銀行、決済代行サービスを提供する機関が毎月20日までに海外のサプライヤーに代わり、源泉徴収し、納税を行う責任を負います。
  • 税務申告および計算のためにベトナムで発生する売上を確定する際の原則:ベトナムで発生する商品およびサービスを購入する組織や個人の取引を特定するために以下の購入者情報が使用されます。

1) 銀行識別番号(BIN)、銀行口座の情報、またはそれと類似の情報に基づくクレジットカード情報などのベトナムの組織および個人の支払に関する情報

2) ベトナムにおける組織(個人)の居住状況に関する情報(組織《個人》が海外のサプライヤーに登録した請求先住所、配送先住所、自宅住所、または類似の情報)。

3) 購入する組織や個人のSIMカードの国番、IPアドレス、固定電話回線の場所や類似の情報などのベトナムの組織(個人)のアクセスに関する情報

原則:(1)と(2)または(1)と(3)が矛盾しない場合、この2つの情報を使用します。 (1)が利用できない場合、または残りの2つの情報と矛盾する場合は、矛盾がない情報(2)と(3)を使用します。

  • 海外のサプライヤーは、売上に対する一定のみなし税率に基づきVATおよびCITを納税する必要があります。売上に対するVATおよびCITの税率は、政令209/2013/ND-CPおよび政令218/2013/ND-CPに規定されています。各取引の商品およびサービスの種類を特定できない場合は、最も高いみなし税率を適用し、VATおよびCITを計算することになります。
  • 直接登録し、申告および納税を行う海外のサプライヤーの場合、本通達の規定は、電子ポータルにおける登録、申告および納税のシステムの稼働開始を税務総局が通知した時点から発効します。
  • 個人が海外のサプライヤーから商品やサービスを購入し、商業銀行および決済代行サービスを提供する機関が代わりに源泉徴収・納税を行えないクレジットカードまたはその他の方法で決済する場合、商業銀行および決済代行サービスを提供する機関は、海外のサプライヤーに送金された金額を監視し、提供されたフォームにしたがって毎月10日に税務総局に提出する責任を負います。

 

6. 発効(第87条)

  • 本通達は2022年1月1日から発効されます。
  • 本通達に記載される税務申告書のフォームは、2022年1月1日以降の期間に適用されます。 2021年度の確定申告については、本通達に記載される税務申告書を適用する必要があります。
  • 本通達の発効日より前に発生した返金不可の過払税額、過払遅延利息、および過払罰金は、本通達の規定に基づき処理されます。
  • 本通達の発効により廃止される通達には、(1)2013年11月6日付財務省通達156/2013/TT-BTC、 (2)自動車および二輪車分野の事業所への課税を規定する通達71/2010/TT-BTCが含まれます。

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