保険IFRSアラート(20223月):IFRICIFRS17号保険契約の利益の認識に関する暫定的なアジェンダ決定を公表する予定

2022年3月にIFRS解釈指針委員会でIFRS第17号保険契約における利益の認識の解釈に関する照会について議論が行われました。 今後、パブリックコメントを募集するために、暫定的なアジェンダ決定を公表する予定です。

  • 3月15日に開催されたIFRS解釈指針委員会 (以下、当委員会) では、生命年金によって提供されるサービスと、CSMのリリースを通じてそのサービスをどのように認識するかという、IFRS第17号保険契約(以下、IFRS第17号)の解釈に関する照会について議論が行われました。

  • 当委員会は、IFRS第17号に適用される規定を識別し、照会文書にある年金契約のグループにおいて提供される給付の量の決定方法を説明した暫定的なアジェンダ決定(Tentative Agenda Decision、以下、TAD)を公表することに合意し、広くコメントを求めることとなりました。

  • 寄せられるコメントを検討し、当委員会は、将来の会議で、(国際会計基準審議会(以下、IASB)による反対がないことが前提ではあるが)TADの内容を確認し、最終的なアジェンダ決定の公表を決定することになります。

  • もし現案どおりに最終化される場合、このアジェンダ決定により、CSMのリリースについて保険金額法(“sum assured” method; 以下のアプローチB)はIFRS第17号の原則に照らして正当な解釈にはならないことになります。 当委員会がIFRS第17号と整合的と考える方法は、当期に支払われうる給付額に基づいてCSMをリリースするもの(以下のアプローチA)です。

  • 当委員会は、IFRS第17号が提供された給付の量を算定するにあたり適切な基礎を既に提供していると考え、基準設定プロジェクトをワークプランに追加しないことに合意しています。

照会の内容:

本照会は、生命年金によって提供されるサービスに関するIFRS第17号の解釈及びそのサービスを認識するためにCSMのリリースを求める規定の適用に関して、当委員会の見解を求めるものです。

本照会におけるファクト・パターンは、保険契約者が保険料を前払いし、解約することができない、即時開始年金契約のグループであり、提供されるサービスは、生存に対する保険カバーのみです。保険契約者は、生存する限り、定期的な年次給付を受けることができます。

本照会では、2つの解釈が示されています。それらは、契約の存続期間に亘り提供される、保険カバーに関する見方が異なるものであることから解釈が分かれ、それゆえにCSMのリリース及び収益認識に関するアプローチに相違が生じています。本照会では、いずれの解釈もIFRS第17号の原則に合致しているか否かが論点となっており、カバー単位とグループ内の各契約において提供される給付の量の算定が分析の主たる対象でした。

アプローチ A:当期に支払われうる給付額

  • このアプローチは、本照会において支払法(“payments method”)と呼称されており、
    このアプローチでは、ある期間に提供されたサービスの量及びCSMの配賦額は、サービスが提供される各期に支払われうる定期的な給付額に基づいて決定されます。

  • 定期的に支払われうる給付額は、各離散的な保険事故、つまり、支払時までの生存、に対する給付の量を表しています。

アプローチ B:契約の残存期間に亘って支払いが見込まれる総給付額

  • このアプローチは、本照会において保険金額法(“sum assured” method )と呼称されており、特定の法域において、アプローチAによる収益認識では年金契約の商業実態を反映しないケースがありうるという懸念に対処すべく開発されたものです。
  • アプローチBでは、 ある期間に提供されるサービスには、カバー期間を通じて保険契約者に保険金を支払う準備をしておくというサービスが含まれます。
  • サービスには、当期の年金支払だけではなく、保険契約者の生存中に亘って継続的に受ける将来の年金支払へのアクセスも含まれ、ある期間に提供されるサービスの量及びCSMの配賦額は当期に支払われうる給付額及び将来において支払いが見込まれるすべての給付額の現在価値に基づいて算定されます。

本ミーティングのスタッフ・ペーパーの数値例(及び照会文書中の数値例)では、アプローチB は、アプローチAと比較して、CSMのリリースが大きく前倒しとなります。

スタッフは、アプローチAはIFRS第17号の規定に沿ったものであるが、アプローチBはそうではないと考えています。これは、契約の残存期間に亘って支払いが見込まれるすべての給付額の現在価値は、各期に提供される保険カバーを反映するというIFRS第17号B119項の原則に整合していないためです。

委員会での状況:

当委員会メンバーの多くはスタッフ・ペーパーにおける分析及び結論に同意しているが、メンバーの1人は反対を表明しました。当メンバーは、アプローチAは一部の単純な年金商品には適切であるかもしれないが、アプローチBの方がより適切であり、プライシング方法とも整合的であると考えています。本TADは公開協議に付され、またIASBにより検討がされます。

今後の予定:

当委員会は、パブリックコメントを募集するために、暫定的なアジェンダ決定を公表する予定です。寄せられるコメントを検討し、当委員会は、将来の会議で、(IASBによる反対がないことが前提ではあるが)TADの内容を確認し、最終的なアジェンダ決定の公表を決定することになります。

※ 詳細は下記英語版のリンクをご参照ください。

Insurance Accounting Alert March 2022



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