英国、スポンサー会社に対するコンプライアンス措置の強化を議論

エクゼクティブサマリー

英国入国管理局(UKVI)が公表した最新データによると、外国人労働者の身元引受スポンサー会社に対する措置件数が大幅に増加しています。これは英国政府が掲げる、組織および個人の英国移民法と政策遵守強化方針に沿ったものです。


背景

英国でスポンサーライセンスを保有する事業体は、英国の法律の遵守、移民制度の乱用を防ぐ役割の履行など、特定の要件を満たすことを条件に、移民労働者を受け入れることができます。スポンサーがこれらの要件を遵守しているかどうかを監視するために、UKVIはコンプライアンス・チェック(ライセンス取得前後の訪問、他省庁への確認、デジタル・コンプライアンス・チェックなど)を重要な手段として採用しています。コンプライアンス違反がある場合、民事上、場合によっては刑事上の制裁を受ける場合もあります。

2025年1月、UKVIはコンプライアンス案件の判断方法に関する新しいガイダンスをスポンサー会社の担当者向けに公表しました。2025年には、英国スポンサーシップライセンスを保有する企業・団体への抜き打ちまたは事前通知による訪問調査が増加すると予想されています。これは近年見られるスポンサーライセンスの一時停止や取消が増加傾向にあることを受けたものです。このことは、UKVIによる執行措置が前例のない速度で強化されており、2025年にも継続すると予想されることを裏付けています。


主な動向

UKVIが2025年2月27日に発表したスポンサーの透明性に関するデータは、スポンサーに対する措置の数が2023年以降、大幅に増加していることを裏付けています。

スキルドワーカー(技能労働者)ライセンス一時停止件数

2023年

2024年

第1四半期

148件

第1四半期

309件

第2四半期

89件

第2四半期

524件

第3四半期

91件

第3四半期

509件

第4四半期

241件

第4四半期

351件

合計

569件

合計

1,693件

スキルドワーカー(技能労働者)ライセンス取消件数

2023年

2024年

第1四半期

139件

第1四半期

210件

第2四半期

28件

第2四半期

499件

第3四半期

65件

第3四半期

513件

第4四半期

105件

第4四半期

272件

合計

337件

合計

1,494件

2025年の技能労働者ライセンスの一時停止および取消件数はまだ公表されていませんが、高止まりすると予想されます。


スポンサーの義務

スポンサーは、スポンサーの義務およびコンプライアンスのガイダンスに記載された要件に沿って、スポンサーの義務を果たすことが求められています。これらの義務は主に5つの分野に分けられます。

  • 報告業務:スポンサーは、スポンサー対象の労働者に関していかなる変更があった場合もUKVIに通知する必要がある。また、スポンサーを提供した組織に変更があった場合もUKVIに通知する必要がある。
  • 記録保持義務:スポンサーは、関連するAppendix D ガイダンスに記載されている全ての文書の最新の記録を入手して保持する必要がある。
  • 移民法の遵守:スポンサーは、移民法ならびに労働者および一時労働者スポンサーガイダンスの全ての条項を遵守しなければならない。
  • 英国のその他広範な法律(雇用法、最低賃金法、労働時間規則など)を遵守すること。
  • 公共の利益に資さない行動や行為に関与しないこと:全てのスポンサー(身元引受人)には、基本的価値観に合致し、広範な公共の利益に悪影響を与えないよう行動する責任がある。

スポンサーは、ライセンスが付与された日からライセンスを返上する日またはHome Officeがライセンスを取り消す日まで、一定の義務を果たす責任があります。UKVIはスポンサーがこれらの責任を果たすことを確実にする義務があり、スポンサーが義務を怠った場合や移民管理に危険をもたらす場合には、必要に応じてコンプライアンス措置を実施する義務があります。UKVIは主に以下の審査を行います。

  • ライセンスを持つスポンサーがスポンサーシップ義務を果たしているか。
  • スポンサー候補がスポンサーシップ義務を果たすために必要なシステムと手続きを整えているか。
  • スポンサーライセンス申請書に記載された情報の正確性。
  • スポンサーが不法就労防止義務を遵守しているかどうか。

コンプライアンス違反が特定された場合、次のいずれかの結果につながる可能性があります。

  • スポンサーライセンス申請の拒否、現在のライセンスの喪失、スポンサーシップ証明書(CoS)や就学受入確認書(CAS)の割当の削減・一時停止。
  • 労働者および一時労働者向けスポンサーの場合、B評価への格下げおよび期間限定の行動計画の発行。学生向けスポンサーの場合、期間限定の行動計画の発行。
  • ライセンスの一時停止または取消。

コンプライアンス・チェック中、UKVIのコンプライアンス担当者は関連する確認を行い、スポンサーや外国人労働者へのインタビューを行うことがあります。コンプライアンス担当者は以下を行うことができます。

  • スポンサー申請書に記載された情報の確認(場所および施設の写真撮影を含む)
  • 労働者の入国許可申請を裏付けるために提供された情報の確認
  • 事業者が全てのスポンサー義務を遵守しているか(またはライセンス申請の決定前にチェックが行われる場合、遵守できるかどうか)の確認
  • スポンサー対象の労働者(過去にスポンサーを受けた労働者を含む)への聞き取り
  • スポンサー対象労働者の採用に関わる従業員への聞き取り
  • 事業者がスポンサー義務を果たし、規則に従っていることを確認するための記録やシステムの検査

スポンサーシップに関する雇用主・教育機関向けガイダンスでは、スポンサーシップ義務を怠った組織への罰則が記載されており、以下が含まれます。

  • 国際的な人材の雇用資格の喪失
  • 事業者の評判の毀損
  • 不法就労が発覚した個人1人につき最高6万英ポンドの罰金


雇用主への影響

スポンサーは、民事および刑事責任やその他の重大なビジネス上の影響を避けるため、自らの役割と義務を理解しておく必要があります。


重要なステップ

EYは今後もこうした動向を注視していきます。ご質問がある場合はEY行政書士法人の専門家にご遠慮なくお問い合わせください。


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EY 行政書士法人

木島 祥登 パートナー
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※所属・役職は記事公開当時のものです