EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
要点
カリン・トワロナイト
EY Global Vice Chair - Diversity, Equity & Inclusiveness
片倉 正美
EY Japan マネージング・パートナー/アシュアランス EY新日本有限責任監査法人 理事長
トワロナイト:私は会話を通じて、その人がどのようなキャリアを歩んできたのかを伺うことに非常に興味があります。特に、ステレオタイプに挑戦したり、障壁を打ち破られてきたり、前例のない役割を果たしている人たちの貴重な体験から学ぶことに強い関心を持っています。
先日は、片倉 正美さんにお話を伺う機会がありました。片倉さんは、2019年にEY Japan マネージング・パートナー/アシュアランスに就任し、日本の大手監査法人初の女性理事長となりました。また、グローバル会長兼CEOのジャネット・トランケールと私が共同で議長を務めるEY Global DE&I Steering Committee (GDEISC)のメンバーでもあります。
今回の対談では、片倉さんがリーダーになるまでの道のりや変わりゆく監査、そしてテクノロジーへの情熱がどのようにご自身のリーダーシップ戦略をけん引しているかなど、いろいろとお話を伺いました。
私が皆さんにこの対談をご紹介する理由は、片倉さんのことを知っていただきたいから、ということだけではありません。これまでの奮闘や成功にまつわるストーリーから非常に多くのことを学べると信じているからです。
片倉:まず、私が自分のアンコンシャスバイアス(無意識の偏見)を打ち破ったということです。二つ目に、EY Japanのアシュアランス組織だけでなく、より広範囲な公認会計士業界においても偏見を打破したことです。監査法人では、選挙に立候補しなければ理事長にはなれません。これまで監査法人の理事長は経済界や官公庁でも一目置かれる存在で50代後半の男性公認会計士が務めてきました。私自身、トップは男性であるべきで、男性パートナーたちが女性を理事長に選ぶことはないだろう、と思い込んでいました。
理事長としての役割は、私にとって大きな意味を持っています。これまでよりも、はるかに多くの人たちにポジティブな影響を与えることができると考えているからです。女性を組織のトップに置くことは、EY Japanアシュアランスに変化をもたらしています。また、業界の固定観念を変える布石にもなったと感じています。
トワロナイト:片倉さんはテクノロジーセクターでご活躍された経歴をお持ちですね。テクノロジーは、片倉さんのリーダーシップ戦略とアシュアランスの未来に対するビジョンに、どのように組み込まれていますか。
片倉 :監査は従来、労働集約型のビジネスモデルで、長時間労働を伴うプロフェッショナルの勘に支えられてきました。しかし、それはもはやサステナブルではなく、監査の効率と品質を同時に上げていくためにはテクノロジーを活用するしかないと思いました。
EYには、かつて「Better begins with you」という社内の表彰制度がありました。2018年には、監査で異常仕訳を検知するのに役立つAIアプリケーションを開発した日本のチームが、Pursuing Innovation (イノベーションの追求)カテゴリーで優勝しました。この取組みは、監査の未来を夢見る若手メンバー数名のある思いがきっかけでスタートしました。「手作業での処理に何時間も費やしたくない。他にもっと良い方法があるはずだ」。そう信じて取り組む彼らのモチベーションに、私は強く心を揺さぶられました。
自分がリーダーに就任してからは、このチームの規模を拡大し、投資予算もつけて支援を続けました。有志で集まった小さなグループが、今では800名規模にまで成長し、掲げたビジョンを実現すべく監査のイノベーションに日々取り組んでいます。これこそが、まさに私のリーダーとしての戦略的決断であり、それはEY全体におけるテクノロジーへの取組みと一致しています。
トワロナイト:それでは次に、リーダーになるまでの道のりについてお聞かせいただけますか。また、皆さんへのアドバイスもお願いします。
片倉: 入社当時、私は大手製造業クライアントの監査に従事していました。その後、IPO(新規株式公開)を目指す非公開会社のクライアントをサポートするチームに異動になりました。当時は、監査部門から法人内のアドバイザリー部門に異動することは非常にまれでしたが、上司からは、その仕事は私に合っているから挑戦してごらんと声を掛けられました。私は監査にやりがいを感じていましたので、「なぜアドバイザリーに異動しなければならないのか?自分はチームにとって必要な存在ではないのだろうか?」と落ち込みました。次のキャリアステップとしてアドバイザリー経験が必要だったことは後で理解しましたが、これが自分にとってのターニングポイントのひとつとなりました。まさにこの時、何か新しいことに挑戦することを恐れてはいけないと学びました。
その後のキャリアステージは、マネジメント経験を積むことでした。ここでは、個人ではなくチームをうまく組み立てて、チームとして最大限の力を発揮して結果を出すことを学びました。後に、職階が上がり、政府機関に出向することになり、国の政策立案に携わりました。このようにさまざまな経験が得られるチャンスがあることが、EYでのキャリアの素晴らしい点です。皆さんも、新しい機会が与えられた時には、常にオープンな姿勢で臨んでほしいですね。
トワロナイト:EYにおいて私たちは、すべてのメンバーがSense of Belonging(相互信頼)を感じることが大切だと考えています。ジェンダーについて少し触れましたが、ジェンダー以外にもさまざまな多様性が存在します。例えば、能力、ニューロダイバーシティ、性的指向、人種、民族性などです。片倉さんはメンバー全員が職場で相互信頼を確実に感じられるようにするためにどのようなことをなさっていますか。
片倉:誰もがマジョリティにもマイノリティにもなり得ることを、身をもって理解することが大事だと考えています。私自身の経験では、父が身体に障害を持っており、祖父も晩年に障害を抱えるようになりました。その経験から、彼らが他の人と何ら変わらないこと、また、必要以上に親切にすることで、居心地の悪さを感じることがよくあることに気付きました。
このため、相互信頼を形成するためには、他者と対話し、相手が何を望んでいるのか、どのような接し方を望んでいるのかを学ぶことが大切だと考えています。対立を恐れずに対話することがとても大事だと感じます。
EY Japanでは、「健全な衝突」によって、異なる立場の人がどのように融合し得るかについて理解を深める取組みを行っています。このような考え方に基づいてうまく対処することができれば、「健全な衝突」を通じて、相互理解や関係性を深めることにつながるからです。
トワロナイト:片倉さんは多くのプロフェッショナル、特に女性たちのロールモデルです。ステップアップしてリーダー職に就くことを目指している女性たちにアドバイスをお願いします。
片倉:これまで周囲の方々からいただいた応援や支援に恩返しする番だと感じています。そのため、女性の皆さんに挑戦を促し、次のレベルへと引き上げていきたいと思っています。若手女性には、自分を客観的に見つめてみるよう勧めています。可能性を自ら制限していないか、素晴らしいチャンスを見逃していないか。自問自答して、よく考えてみて?と言うようにしています。私たちの多くは、自分が思っている以上に大きな可能性を秘めているはずなので、より多くの方、特に女性の皆さんには、自分には能力がないなどと決めつけずに、積極的にチャレンジしてほしいと願っています。
キャリアの階段を一段上るだけでも、世界は少し違って見えてくるはずです。ひとつ上のポジションに就くことによって、自分自身のみならず、他者に与える影響も大きくなるからです。私たちがリーダーとしてこのことを語り、自らのストーリーを共有することがとても大事だと考えています。
トワロナイト:今回のインタビューでご自身の体験を語ってくれた片倉さんに感謝します。私たちのキャリア・ジャーニーは決して真っすぐ進める道のりではなく、キャリアにおける最も貴重な経験の中には、まったく思いがけないタイミングや局面で訪れるものもあることでしょう。現在、片倉さんは人々を鼓舞し、日本内外における監査業界の変革に資するべく尽力されています。片倉さんの多くの功績を誇りに思うとともに、片倉さんのリーダーシップとテクノロジーに対する情熱が私たちを次にどこへ導いてくれるのか、楽しみでなりません。
ニュースリリース
EY Japan、日経WOMANの「女性が活躍する会社BEST100」において総合7位に選出
EY Japan(東京都千代田区、チェアパーソン 兼 CEO 貴田 守亮)は、女性社員の活躍を推進している企業を認定する「日経WOMAN」(発行:日経BP社)の「女性が活躍する会社BEST100」において、回答企業479社の中で総合第7位に選出されました。昨年度より1ランク上昇し、2年連続のトップ10入りになります。
EY Japan、ホワイト500、健康経営優良法人2024(大規模法人部門)に認定
EYのメンバーファームであるEYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社、EY Japan株式会社は、「健康経営優良法人2024(大規模法人部門(ホワイト500))」に、EY新日本有限責任監査法人、EY税理士法人は、「健康経営優良法人2024(大規模法人部門)」に、経済産業省より認定されたことをお知らせいたします。
ビジネス界からインクルージョン推進に尽力するリーダーを選出する「INvolve Role Model Lists」に、片倉正美が日本初の殿堂入り
EYのメンバーファームであるEY新日本有限責任監査法人(東京都千代田区、理事長:片倉 正美)は、理事長である片倉 正美が、Executive Role Modelとして殿堂入りしたことをお知らせします。
リーダーの役割に就くことで、自らの経験を共有し、より多くの人々にポジティブな影響を与えることができます。相互信頼を形成するためには、他者と対話し、相手が何を望んでいるのか、どのような接し方を望んでいるのかを学ぶことが大切です。自分が思っている以上に大きな可能性を秘めていることに気付づき、積極的にチャレンジしていく意志を持ってほしいと考えています。