EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
「EY CHRO 2030 Market Insights」から読み解く、新たなCHROの要件、労働力の変容、人事機能の未来像。
最高人事責任者(CHRO)の役割は今、新たな局面を迎えています。今後5年間は、その役割の進化や人事機能の高度化、ならびに人材アジェンダの主導において、極めて重要な期間となるでしょう。EYでは、世界26カ国・15セクターの主要企業に所属する160人以上のCHROをはじめとする経営幹部を対象に、「EY CHRO 2030 Market Insights」(以下、「EY CHRO 2030」調査)を実施し、詳細なヒアリングを通じて、今後5年間において、リーダーがどのように変化を乗り越え、組織により高い価値をもたらしていくべきかについて、多くの示唆が得られました。本レポ―トでは、「EY CHRO 2030」調査のハイライトをご紹介します。また、本調査の詳細なデータやインサイトは、貴社がビジネスや人材の変革を効果的に推進する上で非常に有益な内容となっています。調査結果の全容にご関心をお持ちの方は、ぜひEYまでお問い合わせください。
企業がCHROと人事部門に、これまで以上に多くの領域でのリーダーシップを求める中、「EY CHRO 2030」調査から、両者が今後注力すべき重要なテーマが明らかになりました。本調査結果によると、89%の企業が、変化する人材面のニーズや戦略的ビジネス要件に対応するためには人事部門を変革する必要があると考えています。一方で、すでに人材優位性を確立し、ビジネスと人材面においてより高い成果を上げている企業は、わずか32%にとどまっています。このようなギャップは、人事部門にとって重要な変革の機会が存在することを示唆しています。つまり、人事部門の戦略的重要性が高まる一方で、変革の緊急性も増す中、CHROには、組織に新たな価値をもたらすことが求められています。そのための取り組みとしては、戦略アジェンダの的確な優先順位付け、即応性の高いテクノロジーの積極的な導入・活用、そして「仕事」と「人材」のあり方をビジネスの視点から再定義することなどが挙げられます。加えて、CHROは、変革を主導するだけでなく、ビジネス価値の創出に不可欠な、ビジネス、テクノロジー、人的側面における組織のケイパビリティを強化することも求められます。
目まぐるしく変化し続ける複雑なビジネス環境を乗り越え、企業の成功に欠かせないリーダーとなるために、CHROやビジネスリーダーが今、自らに問いかけるべき3つの重要な問いがあります。
回答企業の85%が、今後5年間において、戦略的人事機能が成功の鍵を握ると考えている一方で、89%は、変化するビジネスニーズに対応するためには人事部門を抜本的に変革する必要があると感じています。こうした調査結果は、人事部門を従来の管理中心の機能から戦略的パートナーとしてビジネスに貢献する機能へと早急に転換することが、CHROや人事リーダーにとって喫緊の課題であることを浮き彫りにしています。
人事部門は、従来のサポート的な機能から脱却し、人材戦略とビジネス価値をけん引する役割を果たすことが求められています。こうした変化の中で、まず必要なのは、人事をビジネスの視点で捉え、主体的に運営できるリーダーです。
CHROはすでに多くの責務を担っていますが、今後数年にわたって高い成果を上げる上で重要となる3つの主要な行動特性(コンピテンシー)が明らかになっています。
CHROに求められる将来像は、テクノロジーを戦略的に活用できるリーダーです。特に、生成AIのような即応性の高いテクノロジーを積極的に活用し、人事サービスを通じて組織全体に価値をもたらす能力が問われます。
テクノロジーを起点に新たなビジネス価値を創出するには、CHROが以下の4つの領域において変革を推進することが推奨されます。
混乱と変革の時代にかじを取るCHROにとって、テクノロジーの活用は企業に新たな価値をもたらす鍵となります。本調査の回答者は、今後5年間において人事部門による価値創出に大きく寄与するとされるテクノロジーをいくつか挙げています。これらのテクノロジーは、人事部門を管理中心の業務から戦略的な役割へと進化させる原動力となり、人事機能と従業員の業務効率の向上だけでなく、従業員エクスペリエンスの高度化にも寄与します。こうした変革をけん引すると期待される主なテクノロジーは、以下のとおりです。
“Joe Dettmann, PhD従来のやり方では、新しい成果は生み出せません。今こそ、リーダーシップと仕事のあり方を見直す時です。テクノロジーの進化や社会の変化は、脅威にもなれば、大きなチャンスにもなります。
CHROの役割が進化する中、労働力のあり方も大きく変化しています。「EY CHRO 2030」調査でも、人事リーダーが向き合うべきテーマとして、労働力のダイナミクスが変化していることが明らかになっています。2030年までに、世界全体で8,500万人を超える人材不足が予想されており、企業は人材戦略や人材マネジメントのあり方を根本から見直す必要性に迫られています。
従業員の期待は急速に変化しており、画一的な対応ではなく、個々のニーズに応じたパーソナライズされた体験が求められるようになっています。彼らは、単に競争力のある給与だけではなく、仕事の意義、柔軟性、そして心理的安全性のある職場環境を重視しています。しかし、従業員一人一人の多様な期待に応えるために、人事制度、テクノロジー、企業文化といった側面から人材優位性を実現できていると自信を持って言える企業は、わずか32%にとどまっています。
一方で、新たなビジネスニーズへの対応や業績の向上、潜在的な価値の創出に貢献できる、新たなスキルを備えた人材の確保が急務であると回答した企業は70%に上り、この課題の深刻さが際立っています。これは、人材育成を企業の戦略目標と整合させて進めることの重要性を強く示しています。これらの変化に的確に対応するためにCHROには以下の2つのテーマに重点的に取り組むことが推奨されます。
“Randy BeckEYのメンバー一人一人の成長と活躍を後押しすることが、クライアントへの価値提供につながっています。
人事部門は今、重要な転換点を迎えており、新たな期待やニーズに応えるだけでなく、より高い価値と成果を創出する機能へと、迅速に進化することが求められています。こうした進化を加速させるために、CHROと人事リーダーは、以下の重要な領域に重点的に取り組む必要があります。
「EY CHRO 2030」調査を通じて得られたインサイトは、CHROと人事リーダーにとって、これからの道のりが優先順位の明確化を求められる数多くの課題と機会に満ちていることを示唆しています。中でも、スキルギャップや多様化する従業員ニーズへの対応は特に重要であり、人事部門が経営の意思決定において戦略的パートナーとしての地位を維持し続けるための鍵となります。課題は依然として大きいものの、生成AIをはじめとする新たなテクノロジーは、変革に向けた大きな可能性をもたらします。こうした技術を取り入れるには、ビジネスと人材の両面で変革を主導する力がリーダーに求められます。2030年を見据えると、こうした課題に対処し、機会を確実に捉えるためには、CHROにはこれまで以上に高度で複雑な役割を果たすことが求められます。特に、スキルを軸とした人材優位性を確立することや、ビジネス側の高まる期待やニーズに応えるために人事機能を進化させることが極めて重要となります。人事の戦略的リーダーシップを重視し、テクノロジーを積極的に活用し、従業員エクスペリエンスの向上に注力する企業は、現在および将来における複雑な状況を的確に乗り越えていくことができるでしょう。
これからの人事は、変化に対応するだけでなく、新たな価値を引き出す革新的な職場づくりを主体的にけん引するリーダーシップが重要となります。
最新の見解
スキルベース組織とは――『スキルベース組織の教科書』監修者が語る新たな人材マネジメント手法
今、「スキルベース組織」と呼ばれるスキルを起点にした人材マネジメント手法が注目されています。書籍『スキルベース組織の教科書』(日本能率協会マネジメントセンター)監修者でEY Japan ピープル・コンサルティングリーダーの鵜澤慎一郎が、その要諦を解説します。
場所に縛られない働き方の増加は未来の人材の在り方をどう塗り替えるか?
仕事の在り方は、キャリア、リワード(報酬)、働く場所などにおいて従来の価値観とは異なるものへと変化しています。人材の優位性について詳しくは、EY 2024 Work Reimagined Surveyをご覧ください。