EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
2023年10月11日、経済協力開発機構(OECD)/G20の税源浸食と利益移転(BEPS)に関する包摂的枠組みは、本多数国間条約の条文を公表しました。本多数国間条約案文の目的は、対象となる企業グループの世界的な収入の10%を超過する利益の一部について、課税権を市場国・地域に再配分するための合意を形成することです。
包摂的枠組みは、本多数国間条約案文とともに、各規定がどのように適用されることを意図しているのかを明らかにする解説文書も公表しています。さらに、本多数国間条約案文には第1の柱におけるAmount Aの確実性に関する理解が添付されており、Amount Aの確実性に関する枠組みが実務上どのように運用されるかについての詳細が記載されています。追加的な概要文書では、本多数国間条約案文の概要とそのレイアウト、および主な論点が説明されています。
包摂的枠組みに従って、本多数国間条約案文の条文は、まだ署名が開始されていませんが、加盟国間でこれまでに達成されたコンセンサスを反映しており、少数の国・地域による異なる見解が脚注で示されています。
この税務ニュースでは、本多数国間条約案文の主要な構成要素および付属文書の概略を説明します。
2021年10月、OECDは、BEPS2.0プロジェクトの第1の柱および第2の柱の中核的な要素に関する包摂的枠組み加盟国のハイレベルな合意に関する声明を公表しました1。その合意が成立して以降、包摂的枠組みは2022年中に第1の柱に関する一連のコンサルテーションドキュメントを公表し、Amount Aのネクサスおよび利益配分ルールの中核的な要素、デジタルサービス税(DST)および関連する類似の措置を撤廃するための関連するコミットメント、ならびにAmount Bの基本的なマーケティングおよび販売活動に対する簡素化された移転価格アプローチを取り上げています2。さらに最近では、2023年7月17日にOECDがAmount Bに関するさらなるコンサルテーションドキュメントを公表しました3。これらの作業草案は、包摂的枠組みにおける合意事項を反映したものではなく、利害関係者からの意見を得るために公表されたものです。
2023年7月12日、OECDは、BEPS2.0プロジェクトの残りの要素について、包摂的枠組みに加盟する143カ国・地域のうち138カ国・地域が合意に達したことを反映した声明を公表しました4。2023年7月の声明では、包摂的枠組みが署名の準備に必要な第1の柱におけるAmount Aのための本多数国間条約案文の条文を作成したことを示しました。
しかしながら、同声明は、本多数国間条約案文の署名を迅速に準備することを目的として、本多数国間条約案文の特定の項目に関して複数の国・地域から提起された懸念を解決するための取り組みが進行中であることを示しました。時期に関しては、2023年後半に本多数国間条約案文の署名を開始し、年末までに署名式典を行う予定であること、また2025年に本多数国間条約案文を発効させることを目標としていることが言及されています。
2023年7月の声明では、現在2023年12月31日を期限とする新たに制定されるDSTや類似の措置を課すことに関する現行の停止協定についても言及しました。本声明は、2024年1月1日から2024年12月31日(または、本多数国間条約案文が発効する日がそれより早い場合はその日)までの間、いかなる企業に対しても新たに実施されるDSTや類似の措置を課さないという包摂的枠組み加盟国の合意を反映したものです。
ただし、この延長には、2023年末までに対象グループの最終親事業体5の60%以上を占める30以上の国・地域が本多数国間条約案文に署名することが条件となります。加えて、本声明では、2024年末までに本多数国間条約案文の実施に向けて十分な進捗があった場合、包摂的枠組みの加盟国は、この期限を2025年12月31日または本多数国間条約案文の発効日のいずれか早い日まで延長することに合意する可能性があることを示唆しています。
2023年10月11日に公表された本多数国間条約案文の条文は、包摂的枠組みにより発行について承認されたものであり、包摂的枠組み加盟国間の現在のAmount Aに関するコンセンサスを反映したものです。本条文には、特定の項目に関する少数の国・地域の見解の相違を示す脚注が含まれており、これらの相違を解決するための取り組みは継続しています。
包摂的枠組みはまた、本多数国間条約案文に付随する2つの文書、解説文書と確実性に関する理解を承認しました。10月11日に公表された3つのAmount Aに関する文書は合わせて900ページ近くにおよび、Amount Aの運用に関する重要な新たな情報を提供しています。同文書によると、これらの文書の公表は、透明性を確保し、一部の包摂的枠組み加盟国が内部プロセスに関与する能力を促し、また残された相違点を解決するとともに、本多数国間条約案文の署名を準備することを意図しています。公表された本多数国間条約案文の条文の署名は開始されておらず、包摂的枠組みは署名のための条文の公表予定時期や署名式典のスケジュールに関して、いかなる発表も行っていません。
包摂的枠組みはまた、2023年7月12日に公表された、2023年末に期限切れとなる新たなDSTまたは関連する類似の措置の賦課に関する現行の停止協定をさらに1年間延長するという合意に関して、今後の進展に関する声明を発表しませんでした。この延長は、2023年末までに十分な数の国が本多数国間条約案文に署名することを条件としています。
米国財務省は、Amount A文書の公表と同日、これらの文書について一般からの意見を求めていることを発表し、とりわけ明らかになった新たな問題点、実施および管理上の問題点、そして誤りに対処し、本多数国間条約案文の運用に関する技術的な調整に関する意見を求めています。意見書の提出期限は2023年12月11日です。
同じく2023年10月11日、OECDは、OECD事務局が作成したAmount Aの経済および歳入への影響に関する最新の試算を示すワーキングペーパーを公表しました。この試算は、本多数国間条約案文に反映されているAmount Aの設計に基づいており、経済および歳入への影響はおおむね2017年から2021年のデータに基づいて予測されています。この文書には、本試算はAmount Aの影響の大まかな範囲を示すものとして解釈されるべきであるという注意書きが含まれています。
本ワーキングペーパーで強調されているOECD事務局の主な調査結果は以下の通りであり、いずれも2021年のデータに基づくものです:
さらに、OECDは、本多数国間条約案文の概要を示す文書を公表しました。
第1部では、本多数国間条約案文の運用方法とその適用範囲について概説します。
第1条では、対象グループの事業体のみに適用されると規定しています。また、適用対象グループの特定、Amount Aの管理、およびAmount Aに関連する本多数国間条約案文締約国によって制定された特定の措置以外には、何も影響を及ぼさないとされています。
第2部には、全ての条文に関連する用語が定義されています。また、収入と収入性の定量的基準値や、特定のセグメントが適用範囲に入る可能性に関する規則など、適用範囲に関する規定も含まれています。特定の産業や国内志向の事業に適用される適用除外についても第2部に記載されています。
附属書Bには補足的な定義が記載されており、運用規定の基礎として使用される調整税引前利益の計算方法に関する詳細な定義が含まれています。附属書Cは、組織再編に伴う規則の適用について説明し、金融、採掘に関連する事業、防衛に関連する事業、および主として国内で事業を行う場合の適用除外について示しています。
第2条では、「許容可能な財務会計基準」の定義を含め、文書全体で使用される用語の一般的な定義を定めています。また、第2条では、「調整収入」などの用語を定義しています。調整収入とは、付加価値税、物品およびサービス税、その他類似の消費税を除いた収入と定義され、附属書Bでカバーされている特定の除外項目を修正したものです。
第3条は、対象グループの定義について規定しています。対象範囲内にある対象グループの定義は、対象期間中の調整収入が200億ユーロ(1ユーロ=160円換算として約3兆2000億円)を超過し、税引前利益率が10%を超える場合、そのグループはAmount Aの対象範囲内となります。
対象期間以前の2期間において当該グループが対象グループでなかった場合(すなわち、売上高および税引前利益の基準を満たさなかった場合)、追加基準を満たさない限り、かかる対象期間において対象グループとはみなされません。対象グループとして認定されるための追加基準は、(i)当該期間の直前の4期間のうち、少なくとも2期間においてグループの税引前純利益率が10%を超えていること(「過年度テスト」)、および(ii)当該期間までの5年間の税引前純利益率の平均が10%を超えていること(「平均テスト」)とされています。
附属書Bには、政府機関、国際機関、投資ファンド、非営利組織、年金基金および年金サービス事業体などを除外する除外事業体に関する規定があります。附属書Bはまた、対象グループの調整税引前利益の定義を更新しており、これは、適格財務諸表から以下を控除した後の財務会計上の利益(または損失)と定義されています:(i)当期および繰延税金費用(または収入)、(ii)配当またはその他類似の分配、(iii)特定の取引から生じる利益または損失、(iv)最終親会社、当該支払いを行ったグループ事業体または当該費用を負担したグループ事業体の国・地域において違法とみなされる支払いに関する費用、および、(v)5万ユーロを超える費用または罰金。附属書Bはまた、公正価値または減損に起因する損益、その他の事業体の持分取得、棚卸資産以外の資産の処分に関連する調整税引前利益の追加調整についても規定しています。
附属書Cは、グループ合併・分割、内部細分化、二元上場の取り決めおよびステープルストラクチャーに関する特別規定を定めています。また、金融や採掘に関連する事業の適用除外、開示セグメントの取り扱いについても詳述しています。新たに、一国内でほぼ完結する事業の除外および防衛に関連する事業を行う場合の調整について規定しています。
主として国内で事業を行う場合の除外
主として国内で事業を行う国・地域である場合、二重課税の除去およびAmount Aの利益配分のために、当該国・地域内において実質的に国内で事業が完結している場合の財務業績を除外する調整が行われます。国・地域が主として国内で事業を行う場合であるためには、同時に3つの条件を満たす必要があります。第1に、国・地域に源泉される収入は、事業体の財務会計上の収入(第3者の収入)の95%から105%の範囲内でなければなりません。この条件は、当該所在国・地域の第3者への販売を行っている対象グループを捕捉することを意図しています。第2および第3の条件は、ある国・地域におけるクロスボーダーなグループ内収入および費用を、当該国・地域における収入および損益算入費用の合計額と比較するものです。第2および第3の基準は、それぞれ、クロスボーダーなグループ内の収入および費用が、収入および費用の合計額の15%を超えない場合に満たされることになります。
対象グループがある国・地域の適用除外に該当する場合、当該国・地域は、二重課税除去の枠組みの下で、Amount Aの利益を配分されず、Amount Aを軽減する義務も負いません。加えて、その国・地域の減価償却費および人件費の利益は、その他のグループ事業体の二重課税の除去額を計算する際に考慮されません。
「防衛に関連する事業をおこなう場合」の調整6
「防衛に関連する事業をおこなう場合」とは、それがグループの主要な活動であるか否かにかかわらず、あらゆる額の「防衛収入」を得ているグループと定義されます。「防衛収入」とは、「防衛目的」を有する供給によって得られる収入と定義されます。「防衛目的」の定義は、「防衛または諜報サービス」および「防衛または諜報サービスにより保全される安全保障上の利益」という定義に基づきます。
防衛グループの調整は、事実上、防衛の収入と利益を対象グループの収入と利益の計算から除外し、二重課税除去の計算と義務が非防衛の収入と利益にのみ適用されるようにするものです。本多数国間条約案文は、その金額に関係なく、対象グループの残りの収入および利益に適用されます。こうしたことにもかかわらず、適用範囲の閾値は、対象グループの収入および利益から防衛に関する収入および利益を除外する前に適用されます。これは、金融および採掘に関連する事業をおこなう場合に適用される除外アプローチとは異なります。
第3部は、マーケティング・販売利益セーフハーバー調整を含む、Amount Aの利益の各参加国・地域への配分に関する規則の概要を示しています。また、収入源の決定と収入に基づくネクサステストに関する規定も含まれています。
附属書Dは、各カテゴリーの収入に関する追加的な詳細を提供し、また、列挙された指標と使用される関連配分キーを定義しています。
第4条および第5条
Amount Aに基づいて配分される利益の総額が決定されると、第4条および第5条において、Amount Aを市場国・地域それぞれに配分するための規則を定めることになります。基本的な配分の仕組みは、2022年7月のコンサルテーションドキュメントに記載された仕組みとおおむね類似していますが、重要な相違点とともに明確化された点があります。
2022年7月コンサルテーションドキュメントにおけるアプローチ
Amount Aの配分に関する取り扱いを説明するためには、まず2022年7月のコンサルテーションドキュメントから始めることが有益です。同文書では、ある国・地域のグローバルAmount Aの利益配分方式は、主として、その国・地域がグローバルな収入に占める割合に基づいています。Amount Aの国・地域別の配分は、その国・地域のマーケティング・販売利益セーフハーバー(MDSH)の調整により減額されています。従って、
Amount A=グローバルAmount A×(国・地域の売上高/グループの売上高)-MDSH
MDSH調整は、通常の税制度に基づいて課税されるとみなされる超過利益を計算式によって測定したものであり、その結果に従って、ある国・地域におけるAmount Aの配分が減額されます。超過利益とは、減価償却費および人件費(D+P)の利益として明確にされ、通常利益を超過する利益として定義されています。MDSH調整が国・地域のAmount Aの配分を低減できるのは最大限見積もってもゼロまでとなり、MDSH調整は、以下のように定義されています:
MDSH=[除外対象利益-(最大((D+Pの除外対象利益率)、D+Pの利益率40%))×Y]
除外利益率は、グループの調整税引前利益の10%をグループのD+Pの合計で除したものです。これと代替的なD+Pに対する40%の利益は、Amount Aの利益の二重計上の基準を提供するため、「通常」利益の基準を示すことを意図したものです。
コンサルテーションドキュメントでは、「Y」という変数に多くのコメントが寄せられました。「Y」は、MDSHの全体的な調整に対する未定義かつ説明不能のヘアカットです(例えば、「Y」の値が1.0であれば、MDSHのヘアカットはゼロとなり、0.0であれば、MDSHはすべて除外となります)。
なお、コンサルテーションドキュメントでは、源泉税については何も考慮されていませんでした。(EYが提出したグローバルコメントレターを含む)寄せられた多くのコメントでは、概念的に、Amount Aが市場国・地域が既存の国際租税ルールの下で「十分な」課税権を持っていないという懸念に対処することを意図しているのであれば、その国・地域が、控除可能な支払いに対するグロス・ベースの源泉税を通じて課税権を行使するのか、純利益に対する課税を通じて課税権を行使するのかを問わず、その国・地域が課す税金すべてを考慮すべきであると強調されています。この考え方によれば、MDSHの調整は源泉税を考慮に入れるべきと考えられます。
本多数国間条約案文のアプローチ
2023年10月の本多数国間条約案文における基本的な枠組みは、2022年7月のコンサルテーションドキュメントと同様です。しかし、その詳細な表現には大幅な修正と明確化が加えられています7。
第1に、ネクサスを有する全ての国・地域は、その国・地域に配分可能なAmount Aの利益について、指定支払事業者に課税することができると定めています。コンサルテーションドキュメントでは、複数の事業体がAmount Aの納税者となりうるアプローチが含まれていました。
第2に、二重課税を除去すべき国・地域(「二重課税除去国」)が本多数国間条約案文の締約国・地域ではなく(非参加国・地域)、かつ非参加国・地域との間にOECDモデル租税条約または国連モデル租税条約の第7条を盛り込んだ二国間租税条約が存在する場合に限り、国・地域に配分されるAmount Aの利益を比例配分により減額することを規定しています。このような非参加国・地域は課税権を放棄しておらず、国・地域に割り当てられるAmount Aの比例配分による減額は、二重課税を防止することを目的としています8。
第3に、超過利益(国・地域の調整超過利益と呼ばれる)を決定するために使用される通常利益は、もはやグループのD+Pに対する除外対象利益率または40%としては定義されません。その代わりに、対象グループのD+Pに対する除外対象利益率に当該国・地域における対象グループの国・地域別D+Pを乗じたもの、または当該国・地域の調整収入の3%のいずれか高い方と定義されます9。
第四に、MDSH調整「ヘアカット」(旧称「Y」)は、「相殺割合」と名称を変更し、以下のように定義されました:
最後に、対象グループへのクロスボーダーの控除対象支払いに係る源泉税を加算することにより、MDSH調整をします11。具体的には、国・地域の調整超過利益は、源泉税の上方修正額を含めて計算され、他のすべての条件が同じであれば、MDSH調整を増加させ、国・地域へのAmount Aの配分を減少させる役割を果たします12。
源泉税の上方修正額は、対象となる源泉税を当該国・地域の所得税率で除した額となります。これは、MDSHの目的上、源泉税額と同額を得るために必要な所得税の利益額を決定し、源泉税に関連する利益と所得税に関連する利益を実質的に等しくする効果があります。
所得税に適用されるMDSHと同様に、源泉税に超過利益の概念を適用するために、いわゆる通常利益から定式の除外が定められています。これは、D+Pが5万ユーロ未満の国・地域については30%または60%(または低所得国・地域については40%または70%)、それ以外の国・地域については15%と定義されている「源泉税の上方修正減額係数」を差し引いた調整によって計算されます。従って、MDSH調整に含まれる源泉税に関連する超過利益は、D+Pが5万ユーロ未満の国・地域では70%または40%(または低所得国・地域では60%または30%)となり、それ以外の国・地域では85%となります。
特別な移行ルールに基づき、適用当初の2年間は、MDSH調整に対する源泉税の上方修正は適用されませんが(厳密には、最初の2年間は「源泉税の上方修正減額係数」は100%です)、2年目終了後以降は、Amount Aの適用範囲となる200億ユーロの収入基準が100億ユーロに引き下げられるまで、D+Pが5万ユーロ未満の国・地域については、MDSH調整に対する源泉税の上方修正の25%のみが適用されます(これは、本多数国間条約案文発効7年目以降に実施されるレビューに従うことになります)。
第6条 – 第8条
レベニューソーシング(収入の源泉判定)は、いわゆる製品、デジタルコンテンツ、部品、サービス、無形資産、ユーザーデータ、不動産、政府補助金、非顧客収入の収入カテゴリーごとに個別に決定されます。カテゴリーは基礎となる取引の通常または支配的な性質に基づいて決定されます。収入分類の目的上、「取引」を顧客に対して個別に価格設定された品目と定義され、取引の集計は認められています。どのカテゴリーにも該当しない収入は、最も類似したカテゴリーを参照することにより源泉を決定することができます。
「信頼できる方法」を用いてレベニューソーシングを決定する必要があります。信頼できる方法とは、信頼できる指標に基づいて、あるいは一定の条件を満たした場合、配賦キーに基づいて、収入の源泉地を判定する方法です。一般的に、信頼できる方法は、製品やサービスの性質、量、そして価格の違いを考慮しなければなりません。いわゆる「追加収入」については、この規則を簡略化したものであり、他の取引グループによって生み出される必要性がなければ締結されなかったであろう取引グループから得られる収入です。このような収入は、他の取引グループの源泉に基づいて決定することができます。ただし、このような追加収入には金銭的な上限があり、その上限を超過した場合は、当該収入を個別に決定する必要があります。
信頼できる指標を使用してレベニューソーシングが特定できない場合、次の場合には、配賦キーを適用することができます:(i)附属書Dで配賦キーが明示的に認められている場合、(ii)納税者が、附属書Dに列挙された信頼できる指標を特定するために合理的な措置を講じたことを証明する場合、(iii)収入が発生し得ない特定の国・地域が配賦キーの適用から除外される場合(「ノックアウトルール」)。
第7条は、信頼できる収入の源泉を判定するためのレベニューソーシング原則を規定しています。製品、デジタルコンテンツ、部品、サービス、オンライン広告、非オンライン広告、有形財、デジタルコンテンツもしくはサービスの販売または購入を促進する仲介サービス、輸送サービス、顧客報奨プログラム、その他のサービス、無形資産、ユーザーデータ、不動産、補助金、助成金、返金可能なクレジットに関するレベニューソーシング原則を定めています。
本多数国間条約案文の収入源泉ルールは、コンサルテーションドキュメントに忠実に従ったものです。附属書Dは、列挙されたすべての指標に関するより詳細なルールを示しています。
第8条のネクサスルールは、コンサルテーションドキュメントからおおむね変更されていません。国内総生産(GDP)が年間400億ユーロ以上の国・地域では、対象グループの調整収入が100万ユーロ以上であり、年間GDPが400億ユーロ未満の国・地域では25万ユーロ以上である場合、その期間においてネクサステストは満たされます。ネクサステストは、市場国・地域がAmount Aに関する利益の再配分を受ける適格性を有するか否かを判断するためだけに適用されます。例えば、第8条のネクサスルールを満たす対象グループ事業体は、二国間租税条約における恒久的施設の定義に基づく恒久的施設を有するとはみなされません。
第4部には、二重課税除去事業体の特定を含む、ある国・地域におけるAmount Aの利益に対する課税の結果として生じる二重課税を除去するためのルールが含まれています。
要するに、これらのルールは、課税権を放棄すべき国・地域(すなわち、課税対象利益が配分される国・地域)を決定するものです。適用されるステップは3つあります:
ステップ1(第10条)
国・地域が3つのグループのいずれかに該当する場合、特定の国・地域となります:
a. 第1グループは、除外対象利益(または損失)がグループ全体の95%以上となる国・地域
b. 第2グループは、上記のグループには属さないが、除外対象利益(または損失)が5,000万ユーロ以上の国・地域
c. 第3グループは、上記いずれのグループにも属さないが、除去対象利益(または損失)が1,000万ユーロを超過し、RODPが1,500%を超え、実効税率が15%以下の国・地域
ステップ2(第11条)
二重課税を除去する義務を配分する仕組みは、対象グループが残余利益を得ている国・地域において当該義務の負担を確実にすることを目的としています。この配分は、基本的にウォーターフォール型アプローチを用いて行われ、特定された国・地域のうち、二重課税除去を行う国・地域(「二重課税除去国」)を決定します。
特定された国・地域は、そのRODPに応じて4つのティア(階層)に分類されます:
a. ティア1には、RODPがグループ全体のRODPの1,500%を超え、40%を超える最も収入性の高い国・地域が含まれます。最初にティア1の国・地域において、課税利益の減額を通じて二重課税を除去します。ティア1でRODPが最も高い国・地域は、RODPが2番目に高いTier1の国・地域と等しくなるまで課税利益を減額します。1番目のRODPが2番目のRODPと等しくなった段階で、これらの国・地域はともにRODPを3番目の国・地域と等しくなるまでRODPを減額し、3番目の国・地域も減額に加わります。これは、Amount Aに関する二重課税の除去義務が完全に配分されるか、または、それぞれの国・地域のRODPがグループ全体のRODPの1,500%または40%のいずれか高い方に等しくなるまで続けられます。
b. ティア1の利益によって二重課税が完全に除去されない場合、ティア2の国・地域(RODPがグループ全体のRODPの150%を超え、かつ40%を超える国・地域)は、Amount Aの利益に関する二重課税を除去する義務が完全に配分されるか、または、ティア2の国・地域それぞれのRODPがグループ全体のRODPの150%または40%のいずれか高い方まで減少するまで、ティア2の利益の金額に応じて負担額を比例配分します。
c. 同様の配分方法が、ティア3A(RODPがグループ除去基準RODPを上回り、かつ40%を超える)、次いでティア3B(RODPがグループ除去基準RODPを上回る。要するに、グループの残余利益を、収入ではなく、減価償却費および人件費率で表したもの)にも適用されます。
これらティアのいずれにも残余利益がない国・地域は、Amount Aから生じる二重課税の除去を要求されることはありません。
また、過年度に実施されなかった累積的影響額を伴う二重課税の除去に関する仕組みもあります。
二重課税を除去するため、ある国・地域における除去対象利益(または損失)は、MDSHの調整、源泉税の上方修正額、および当該国・地域によってすでに救済されたAmount Aによって減額されます。
ステップ3(第12条および第13条)
二重課税除去国は、二重課税除去事業体を特定し、二重課税除去事業体間でAmount Aの利益に対する二重課税の除去義務の金額を配分しなければなりません。この配分方法は、以下の利益基準のいずれかに基づいて行われます:
a. 超過利益
b. 課税利益
c. 会計上の利益
二重課税除去国は、以下のいずれかの要件が満たされるまで、二重課税除去事業体にAmount Aの利益に対する二重課税の除去義務の金額を配分しなければなりません:
a. そのグループ事業体の利益が、その国・地域で2番目に高い利益を上げているグループ事業体の利益と等しい。
b. 二重課税除去国の除去義務が完全に満たされている。
これは、以下のいずれかの要件が満たされるまで繰り返し適用されます:
a. 二重課税除去国の二重課税の除去を実施する義務が完全に満たされている。
b. 二重課税除去国に課税対象拠点を有するすべてのグループ事業体の利益を使い果たしている。
二重課税除去国は、以下のいずれかの方法を用いて、二重課税除去事業体に対して二重課税の除去を実施します:
a. 指定納付事業体が納付した税額の一定の割合(「二重課税除去事業体関連納付税額」)を二重課税除去事業体に支払う方式。
b. 二重課税救済事業体関連納付税額を二重課税除去事業体の税額から控除(控除しきれない金額を還付する方式もしくは繰延を認める方式)する方式。
c. 損金算入を提供する。
これは、二重課税の救済方法として、免除または控除について規定していたコンサルテーションドキュメントとは異なるものです。二重課税の除去方法として、支払、控除、損金算入の選択肢を提示していますが、免除方法については言及していません。
第5部には4つの章があり、管理、税の確実性の提供、情報交換および国際協力について取り上げています。
第1章:執行
全世界の対象グループのAmount A納税義務をカバーする単一のAmount A納税申告書を、共通文書化パッケージとともに、調整事業体がリード税務当局(通常、最終親事業体の国・地域)に提出し、リード税務当局は、影響を受けるすべての国・地域にパッケージを配布します。申告期限は、リード税務当局が定めるところにより、期間終了後9カ月から12カ月の間となります。
締約国会議は、Amount A納税申告書および共通文書パッケージの目的に使用される標準的な雛形を作成します。このテンプレートには、対象グループ、最終親事業体、指定納付事業体に関する情報、Amount Aの計算に必要な財務情報など、税務当局がAmount Aに基づく指定納付事業体の納税義務を評価するための情報が含まれます。
その国・地域における合理化されたプロセス要件に準拠して、指定納付事業体は、第4条に従って、納税義務がある所得および最終源泉税が課される所得以外に、当該国・地域において納税義務がある所得がなく、かつ、当該期間において、対象グループのその他のグループ事業体の所得に対する税金の特質を利用することを認める当該国・地域の制度の恩恵を受けていないこと、その他のグループ事業体の所得に帰属する税金の減額がなく、事業利益に対するその他の税金とは独立して課税される制度の下で、その国・地域において納税義務を負い、第4条に従って課税される目的以外の国内税務準拠要件を求められることなく、期間終了後18カ月以内にAmount Aへの課税を各税務当局に納付します。Amount Aの申告書および共通文書パッケージが本多数国間条約案文に従って提出される場合、指定納付事業体は、第4条に従って課税される所得に関して、当該国・地域におけるすべての所得税の申告義務を満たしたものとして扱われます。
指定納付事業体が、ある国・地域における合理化された準拠プロセスの要件を満たさない場合、当該国・地域において納税義務がある所得は、指定納付事業体によって所得税法上稼得されたとみなされます。
二重課税除去事業体は、指定納付事業体に資金を提供するため、補償金を支払う必要があります(これらの支払いは税務上無視されます)。二重課税除去事業体は、該当する二重課税除去国の国内法に基づき、請求から90日以内に二重課税の除去を受ける権利を有します。
対象グループに対し、Amount Aの規定の正確な適用を確保するためにグループの上級管理職によって承認されたグループの方針、プロセスおよび手続を示す内部統制の枠組みを保持することを求めています。
附属書Eは、移行期間と簡略化された範囲の算定に関する規定で第1章を補足するものです。
第2章:Amount Aの税の確実性の枠組み
対象グループは、すべての関連する国・地域において、Amount Aルールのすべての側面について拘束力のある多国間の確実性を提供することを意図した仕組みを利用することができます。Amount Aへの税の確実性の枠組みには、拘束力のある多国間の確実性を提供するための3つの仕組みが盛り込まれています:
これらの確実性の仕組みには、見直しの各段階について具体的な期限が盛り込まれています。
確実性の要請に際して、締約国会議が合意する税の確実性の受益者負担金の支払いが求められます。確実性の要請を提出した対象グループがその要請を取り下げたとみなされる、もしくは、そのプロセスにおいて協力的でなく、また透明性がないとみなされない限り、拘束力のある確実性の結果を得られるようにすることを意図して、未解決の意見の相違は、最終的な解決のために決定パネルに委ねられます。
Amount Aへの課税の確実性の枠組みには、第1の柱におけるAmount Aの確実性の適用に関する理解が付随しており、Amount Aへの課税の確実性の仕組みが実際にどのように運用されるかについての詳細が記載されています。
附属書Fは、確実性の見直し、意見の相違を解決するための決定パネル、決定パネルの構成、本多数国間条約案文第5部に関連する定義に関する規定で、第2章を補足するものです。
第3章:Amount Aに関連する課題に対する税の確実性の枠組み
対象グループは、Amount Aに関連する課題に対する税務紛争について、拘束力のある強制的な紛争解決手続を利用することができます。
これらは、OECDモデル租税条約または国連モデル租税条約の第5条、第7条もしくは第9条に基づく、またはこれらに相当する対象租税協定の規定が適用される事項に関する:(a)Amount Aに関する二重課税の除去に影響を与えるもの、(b)対象国・地域の除外対象利益(または損失)、またはAmount Aの利益に重大な影響を与えるもの、ならびに移転価格、恒久的施設、源泉税などが、関連する課題となり得ます。
この「関連する課題」における税の確実性のプロセスは、それぞれの国・地域間の二国間租税条約に含まれる相互協議手続に基づいています。相互協議手続で問題が解決しない場合、強制拘束力のある紛争解決手続きを開始することができます。これは、強制拘束力のある解決の対象とならない紛争をパネルが解決することを可能にする強化されたプロセスです。各パネルは、関係する2つの主管庁、2人の独立専門家(各主管庁が選出)、独立専門家の議長で構成されます。
附属書Gは,第3章を補足するものであり,情報提供書および付託事項,申請方法に関する管轄当局の合意,紛争解決パネル委員の任命,紛争解決パネル手続の情報伝達および秘密保持,紛争解決パネル手続および紛争解決パネル手続の費用に関する規定が含まれています。
第4章:Amount Aに関する情報交換および国際協力の枠組み
それぞれの税務当局は、本多数国間条約案文およびAmount Aに課される税金に関する国内法の執行に予見可能な関連情報を交換しなければなりません。
第6部には、締約国が制定した特定措置の取り扱いに関する規定が含まれています:
附属書Aには、第38条に規定される撤廃の対象となる既存の措置が列挙されています。
附属書Hには、DSTやその他の類似措置に関する検討プロセスや早期の明確化に関する規定が盛り込まれています。
本多数国間条約案文では、オーストラリア、フランス、イタリア、スペイン、チュニジア、トルコ、イギリスのDSTと、オンライン広告サービスおよび電子商取引に対するインドの均等割課税の措置を撤回するよう締約国に求めています。
締約国は、Amount Aの適用範囲にあるかどうか、または本多数国間条約案文が適用される国・地域に居住しているかどうかにかかわらず、いかなる者に対してもこれらの措置を適用することは認められていません。
特定措置の第2のカテゴリーは、「DSTまたは関連する類似措置」です。本多数国間条約案文は、そのような措置が期間中に効力を有した場合、締約国に対するAmount Aの配分を否認します。「デジタルサービス税または関連する類似措置」という用語は、表現を問わず、3つの累積条件を満たし、例外リストに記載されていない締約国が課す税と定義されています13。
3つの累積基準は以下のとおりです:
上記(2)は、2つの代替テストで構成されます。1つ目のテストは、その措置が非居住者や外資系企業によって営まれる事業にのみ適用されるかどうかを確認することです。2つ目のテストは、表面上は居住者や外国人所有者に関係なく適用されるものの、事実上の囲い込み(リングフェンシング)をもたらす特定の設計上の特徴を有する措置を対象とするものです。この2つ目のテストでは、以下の3段階の評価が必要となります:
すべての質問に肯定的な回答が得られた場合、その措置は事実上、特定目的とみなされます。
本多数国間条約案文の関連規定では、リングフェンシングをもたらす可能性のある「立法上の特徴」として、(i)収入の閾値、(ii)当該締約国における国内法人所得税の免除、(iii)課税対象となる特定の活動や特定のカテゴリーの納税者の定義など、に言及しています。
例外リストには、「デジタルサービス税または関連する類似措置」の定義から除外される措置の3つのカテゴリーが記載されています:
附属書Hの詳細な規定では、締約国会議は、措置が「デジタルサービス税または類似措置」であるか否かを決定するための手順を規定しています。この規定では、措置に関する締約国会議の決定について、期限内に公表しなければならないことが明記されています。締約国会議が合意に達しない場合は、諮問委員会を設置します。決定の実行にあたっては、附属書Hは、特定の状況におけるAmount Aの配分を否認する時期を定めており、特定の基準を満たした場合には、遡及的に適用が否認される可能性があります。附属書Hはさらに、一般的に、締約国の地方自治体によって制定された措置の見直しについても、同様のプロセスが踏まれることを示しています。Amount Aの配分の否認は、附属書Hの手続きに基づく措置の見直しの対象となります。
このプロセスは、特定の措置が事実上、リングフェンシングの基準を満たすかどうかを検証する上で重要です。また、Amount Aの配分の否認は、締約国の当局や司法による本多数国間条約案文の条項の解釈ではなく、締約国会議による解釈と決定の対象となります。
さらに、本多数国間条約案文は、締約国が国内法の下で源泉税を課すことを制限するものではないことを明記しています。
条約を適用するために取るべきステップ
本多数国間条約案文は、いくつかのステップが踏まれ、決定がなされて初めて発効します:
署名…合意未成立の日付で署名のために公開されます。署名の機会はすべての国に対して開かれています。適用地域の拡大については特別規定があります。
批准…署名に続き、特定の署名国の国内法上の要件に応じて、批准、受諾または承認が行われます。署名国は、批准書、受諾書または承認書をOECD事務総長である受託機関に預託する必要があります。
発効…受託者は締約国に対して、発効時期を決定するよう要請します。このため、2つの条件が満たされた後、遅くとも3カ月以内に受託者は会議を招集します:
附属書Iに記載されている国・地域に帰属する合計999ポイントのうち、486ポイントが米国に帰属し、残りのポイントはその他の17カ国・地域に帰属します。
最初の会議で合意が得られない場合、受託者は締約国に対して、合意が得られるまで定期的に会議を開催するように要請します。
会議が招集された時点で締約国の単純過半数の賛成と、附属書Iに記載されている600ポイント以上の締約国の支持を得た場合にのみ、発効の決定を行うことができます。これはつまり、本多数国間条約案文は米国の支持があって初めて発効することを意味します。
発効の決定を行うにあたり、締約国が(i)二重課税の除去義務を負うと予想される締約国の参加レベル、(ii)締約国の地理的多様性、そして(iii)締約国が世界の国内総生産の約60%以上を占めるかどうか考慮することを示唆しています。
本多数国間条約案文を批准、受諾または承認した署名国については、発効の決定後、その署名国における発効は、発効日またはその批准書の預託日から3カ月後の暦月の初日のいずれか遅い日となります。
施行…本ルールは本多数国間条約案文の発効から6カ月の期間が満了する暦年以降に開始する期間について、締約国に適用されます。例えば、本多数国間条約案文が2026年8月1日に発効する場合、Amount Aを実施する規定は、対象グループに対して2028年に開始する期間に最初に適用されます。
締約国会議
締約国会議は、OECDに事務局を置き、本多数国間条約案文の解釈や実施に関する問題への対応を含め、本多数国間条約案文において要求される、あるいは適切な機能を行使します。締約国会議はまた、附属書Iの国・地域に帰属するポイントを更新します。この更新はまず、本多数国間条約案文が少なくとも1年間成果をもたらしたものとみなされた時点で行われます。さらなる改定は5年ごとに実施されます。
別段の指定または合意がない限り、締約国会議は意見の一致による決定を行います。
留保、改正および議定書
BEPS防止措置実施条約とは対照的に、本多数国間条約案文には留保を付すことはできず、署名国は本多数国間条約案文の全条項を受諾することになります。ただし、締約国は本多数国間条約案文の改正を提案し、締約国会議で検討することができます。本多数国間条約案文は議定書で補完することができます。
収入基準引き下げプロセスの見直し
本多数国間条約案文の導入が成功したとみなされた場合、本多数国間条約案文は、対象グループを決定するための調整収入の閾値が200億ユーロから100億ユーロに引き下げられる可能性があると想定されています。この閾値の引き下げは、導入が成功したとみなされた日から1年以降に開始する期間に適用されます。
レビューは、本多数国間条約案文の最初の発効から7年後に開始され、1年以内に完了することになっています。本多数国間条約案文には、このレビューで考慮されるべき実施状況の具体的な側面が記載されています。
レビュー終了から3カ月経過すると、自動的に導入が成功したものとみなされます。ただし、締約国の単純過半数、または少なくとも20カ国、600以上のポイントの締約国からなるグループによる異議申立書の提出によって、これを阻止することができます。
既存の租税条約との適合性
既存の租税条約の規定に抵触する場合は、本多数国間条約案文の規定が優先されます。本多数国間条約案文には、BEPS防止措置実施条約に盛り込まれているような、詳細な両立適合性条項は含まれていません。
脱退および終了
本多数国間条約案文は、最初の発効から5年以内に脱退することを認めています。
このような脱退は、残りの締約国に割り当てられたポイントの合計が550を下回った場合、自動的に終了する可能性があります。附属書Iに反映されているポイント配分によりますと、米国が脱退した場合、本多数国間条約案文は自動的に終了することになります。
また、実施レビュープロセスで記述された目標が達成されなかった場合においても、本多数国間条約案文は終了する可能性があります。さらに、締約国の合意により本多数国間条約案文を終了することもできます。
第1の柱の本多数国間条約案文は、グローバルな課税において前例のない進展であり、発効した場合、企業グループの所得が国・地域間に配分される画期的な変化をもたらすことになります。重要なことは、デジタルサービス税や関連する類似措置の賦課を廃止することも意図されているということです。
事業者は、本多数国間条約案文の最終化、署名および批准に関する動向ならびにDSTおよび類似措置への影響に細心の注意を払うべきです。また、本多数国間条約案文が発効していなくても、国・地域がAmount Aの概念を一方的に適用しようとする動向についても注視する必要があります。
巻末注
角田 伸広 パートナー
須藤 一郎 パートナー
関谷 浩一 パートナー
西村 淳 パートナー
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