EYの事例

Microsoftソリューションを活用したデータ変革により、レジリエンスと信頼性を高める方法とは

SuzukiがMicrosoftの自動化ソリューションにより、顧客管理システムを変革した英国のプロジェクトをEYが支援した事例をご紹介します。

EYとMicrosoftのロックアップロゴ


EY Japanの視点

本事例では、オンプレミスの顧客管理(CRM)システムからMicrosoft Cloudへ移行し、顧客データマネジメントのあり方を再定義するに至った一連の変革プロセスにおける成功要因が示されています。業務上不可欠なデータ連携を自動化することが、データの収集・維持管理にかかる業務工数削減に加え、データ品質向上による顧客体験の強化につながった好例です。包括的なデータ管理手法と正確な顧客データの活用により、「人」を中心に据えたアプローチが可能になった企業が、顧客の「これまで」を理解することで「これから」に寄り添う存在へと進化し、今後の経営戦略や環境の変化に柔軟に対応しながら、顧客から信頼を獲得する基盤を実現しています。EYは、将来へ向けたロードマップを示しながらMicrosoftソリューションのアジャイルな適用を進めていくプロジェクト計画の策定や、その着実な実行に対して密接な支援を提供しています。


EY Japanの窓口

松本 剛
EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社 テクノロジーコンサルティング デジタル・エンジニアリング リーダー/マイクロソフト リーダー パートナー

井島 裕昭
EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社 テクノロジーコンサルティング デジタル・エンジニアリング パートナー



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The better the question

企業のデータマネジメント戦略は「情報提供型」か、それとも「変革型」であるべきか?

SuzukiがEYと協力し、リスクを軽減し顧客の信頼を向上させた方法を見てみましょう。

Suzukiの英国法人(Suzuki GB PLC、以下Suzuki)は、老朽化したオンプレミスのシステムをMicrosoft Cloudへ移行・統合したいと考えていました。その目的は、同社の顧客管理(CRM)システムをMicrosoft Dynamics 365、Microsoft Power Platform、Microsoft Azureで刷新し、価値創出に至るまでのスピードを速め、データ管理に伴うリスクを減らしながら、顧客の全体像を可視化する仕組みを構築するためでした。

アジャイル手法の導入や、業務自動化によるリソースの最適化と本業への集中、Microsoftアプリケーションを活用した支援とガバナンス、そしてデータ活用による顧客とのコミュニケーションプロセスの改善などを次々と実行する中で、あくまで変革の主軸は常に「人」にありました。

 

その結果、変革を継続するための協力体制のもと、技術的負債を圧縮し、成長とイノベーションの大規模展開を支える顧客管理システムが稼働しました。

 

Suzukiは100年以上にわたり、数々のエンジニアリングにおける成功を積み重ね、英国では50年以上にわたって製品販売を続けてきました。現在スズキ株式会社の完全子会社となっているSuzuki英国法人では、現地で長きにわたり自動車やバイク、四輪バギー、船外機を販売しています1

 

同社は長い歴史と高い信頼を背景に、ハイブリッド車のラインアップを拡大してきました。しかし一方で、老朽化したシステムがリスクを増幅させ、将来成長するための足かせとなっていることが明らかになりました。

 

顧客サービスやマーケティングチームは、複数のインターフェースや外部ベンダーによる手動処理に依存した旧来システムを使用していました。その結果、データの信頼性が低下するリスクを抱え、顧客とのコミュニケーションや分析にも悪影響が出ていました。

 

Suzukiは事業成長に適したプラットフォームを構築し、リスクを減らして自動化を進めるには、オンプレミス環境にあったCRMシステムをMicrosoft Cloudに移行する必要があることを理解していました。こうした目標達成に向けて、同社はMicrosoftのプラットフォームと、EYとMicrosoftのアライアンスにより発足したEY Microsoft Services Groupを選択しました。

 

「単純なマイグレーションではなく、プロセスを見直し、使い勝手と統合環境を同時に改善することが重要でした。EYのチームが持っていたテクノロジー変革の経験が、旧来システムの統合・移行に役立ちました。そしてデータ品質を維持・改善し、業務を自動化することでリスクを軽減できました。また、アプリケーションサポートサービスを利用し、継続的な支援も受けられました」と、Suzuki CRM Project ManagerであるRussell Brown氏は述べています。

 

プロジェクトチームは、Microsoftのエコシステム上にあるさまざまなツールやアプリを活用し、シームレスなデータ統合を進めました。最終的に顧客データを全方位で把握し、一括管理するシステムを構築する将来ロードマップを描きました。

 

こうしてSuzukiは、財務、サプライチェーン、人事などの業務アプリケーションを含むポートフォリオを整備し、将来のニーズに対応できるシームレスなプラットフォーム開発への基盤を築きました。

Aerial view of M23 M25 Motorway Junction near Redhill Surrey
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The better the answer

Microsoft Cloudへのマイグレーションが導くデータの正確性と一元管理

データ管理は、統合・自動化・連携によってシンプルになりました。

EY Microsoft Services GroupとSuzukiが緊密に連携し、投資効果とリスクを洗い出した上で、堅固なMicrosoftソリューションの適用範囲を定義しました。そして、アジャイル型のプロジェクト計画を策定し、あるべきビジネス目標の理解を深めました。こうした取り組みを背景に、データ管理の全体プロセスを変革するための移行プロジェクトが始動しました。

「私たちは目指すべきゴールの共有ができていました。両チームが十分な時間を確保し、アジャイル型の導入アプローチを採用したことで、迅速で効果的な意思決定ができました。もともと別のパートナーが支援していた大規模プロジェクトでしたが、そこから体制変更し、滞りなくプロジェクトを進行させることができたのです」と、Ernst & Young LLP Technology Consulting ManagerのLivvy Cowleyは述べています。

EYのチームは、システム構造を簡素化し、データ品質を向上させ、また強固なセキュリティ環境におけるデータ管理を実現するために、Microsoftソリューションを軸にしたアプローチで取り組みました。そのために、EY Microsoft Services Groupは、データベースのインターフェースやタッチポイントの数を減らし、すべてのデータを一元管理するためのクラウドソリューションを構築しました。Microsoft Cloudへの移行により、物理インフラの運用や継続的なアップグレード作業の負担がなくなりました。

Dynamics365CRMシステムの構築後、既存データの慎重な移行が実施されました。EYのMicrosoftサービスチームは、旧システムで劣化していた既存データを自動で整理・修正するツールを組み込みました。さらに、新システムに取り込まれるデータの品質チェックを行い、すべてのデータにおいて個々の連絡先情報と正確に一致させ、データの損失を防止しました。これは複雑なプロセスでしたが、Brown氏は新システムについて、「素晴らしく、正確で、何よりも強固だった」と評価しています。

この変革プロジェクトの対象範囲には、主要なマーケティングシステムや業務システム、Suzukiの販売店ネットワーク、さらにSNSとの連携機能などが含まれていました。これらを支えるためにAzure Service Busを導入し、あらゆる顧客接点を総合的に可視化できる仕組みが構築されました。さらに、業界イベントでのデータ収集用に、カスタマイズ可能なMicrosoft Power Platformのキャンバスアプリも開発されました。これらの取り組みにより、データ管理とリスク管理の機能が強化され、顧客コミュニケーションの質も向上しました。

正確なデータがあることで、システム内の個人やグループに対して、正しい情報を安全に発信できるようになりました。Suzukiは現在、SNSで関心を示している顧客に対し、メールまたは他のコミュニケーションチャネルを通じて的確にアプローチし、同時に安全にデータ基盤を開発しています。その結果、リスクが減少し、顧客にとってより良い体験を創出できています。こうした「人」中心のアプローチが、社員と顧客双方の負担を軽減します。

「Suzukiの業務オペレーションにおいて、多くの重要なデータ連携が自動化されたことで、人手による作業を大幅に削減できました。その結果、正確でタイムリーかつ一元化されたデータを活用し、システムが管理するマーケティング施策の効果を大きく高めている、もう1つの大きな改善も実現しています」と、Ernst & Young LLP Technology Consulting Senior ManagerであるIan Cummingsは述べています。

Cheerful family enjoying road trip in electric car
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The better the world works

データ管理を変革し、信頼と成長の両立へ

EYは、Suzukiの持続的な事業成長を支えるデータ基盤を構築する支援をしました。

Suzukiは最終的に正確なデータを一元管理するシステムを構築し、顧客一人一人とのあらゆる接点を総合的に把握できるようになりました。その結果、顧客とのやり取りの過程が、長期視点で見たリレーションの節目として位置付けられるようになりました。同社は、顧客の過去の行動を深く理解することで、今では「その人に合ったタイミング」で「関心のある製品」について「好ましいチャネル」を通じて、よりスマートにかつ効率的にコミュニケーションを取ることができるようになりました。つまり、Suzukiは顧客の「これまで」を理解することで、「これから」に寄り添う存在になっているのです。

「本プロジェクトの結果、今あるニーズに対応するだけでなく、今後の企業戦略や方向性の変化にも柔軟に対応できるプラットフォームを構築できました。」

2022年7月、Suzukiは英国カスタマーサービス協会(Institute of Customer Service)が年2回発表する「英国顧客満足度指数(UK Customer Satisfaction Index)」で、自動車ブランド部門の第1位に返り咲きました。この受賞は、同社の取り組みが確かな成果につながったことを示す一例です。Suzukiは新たなMicrosoftソリューション上で顧客リレーションをさらに強化し、またこの顧客プラットフォームが、事業成長の重要な柱として製造業界が提示すべきグリーン戦略の効果的な発信をサポートしています2

Microsoft Cloudの研究開発投資は継続的に行われ、ユーザーも便益を得られます。例えば、Microsoftは年2回大規模なアップデートを実施し、各リリースにはDynamics 365、Industry Cloud、Power Platformなど数百にわたる新機能が含まれています。これらを利用することで、ユーザーは常に最新かつイノベーションが組み込まれたアップグレード機能を駆使し、ビジネスを変革する原動力にできるのです3

さらに、EY Microsoft Services GroupとSuzukiの継続的な協働体制によって、こうした取り組みを強化しています。SuzukiはMicrosoftアプリケーションサポートを利用し、人を中心に据えたサポート体制のもとで、EYの専任チームによる最新のプラットフォームへのアップグレードに迅速に対応できるようになっています。こうして、システム障害を最小限に抑え、問題がエンドユーザーに影響する前に解決できるよう支援しています。

「私たちは、Suzukiとの協業開始当初から戦略パートナーとして関わってきました。Microsoftを軸としたアプローチを活用して、価値を生み出し、標準化された堅固なエンタープライズソリューションを実現できるよう技術知見を生かしてきました。その結果、このプラットフォームは今あるニーズに対応するだけでなく、今後の企業戦略や方向性の変化にも柔軟に適応できるものとなっています」と、Ernst & Young LLP Technology Consulting DirectorのJames Killianは述べています。


注釈:英国ではSuzuki向けのサービスは、もともとPythagoras Communications Holdings Ltdが提供していましたが、EYによる買収により、現在はEYとMicrosoftアライアンスにより発足したEY Microsoft Services Groupの一部として事業展開しています。


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