EYの事例

Xoople社が、膨大な地理空間データからビジネスインサイトを導き出した方法とは

高度なAIと統合された地理空間データは、ビジネスや産業を変革する可能性をもたらします。


EY Japanの視点

データを経営価値へ変えるAI活用の本質

AI活用の成否は、AIモデルそのものではなく、AIを経営や業務の意思決定に結び付ける仕組みに左右されるとEYは考えています。
本プロジェクトは、衛星・気象・交通などの膨大かつ複雑な地理空間データを、企業が実際の意思決定に活用できるインサイトへと変換し、市場戦略や業務プロセスとの連携まで設計した好事例です。AI時代における競争優位性は、アルゴリズムの優劣やデータ量そのものではなく、業務プロセスに組み込まれた実用的なユースケースを創出し、データを経営資産として活用する視点にあります。また、データを誰もが活用できる形で提供することで、具体的なビジネス価値の創出につなげる能力こそが重要です。
EYはデータをビジネス価値へと変換する橋渡し役を担うとともに、戦略策定から業務実装、ガバナンス構築、価値創出までを一気通貫で支援するオーケストレーターとして、お客さまの変革を支援します。
EY Japanの窓口

1

The better the question

どのようにすれば世界の変化をいち早く察知できるか?

Xoople社は、マルチモーダルAIを活用して膨大かつ多様な地理空間データを理解・活用できる形にしています。EYチームと共に、今まさにその価値を市場へ展開しています。

Fabrizio Pirondini氏(以下、Pirondini氏)は衛星データを活用した地球観測ミッションの設計に携わる中で、20世紀末に業界が大きく転換し始めたのを目の当たりにしました。かつては政府主導だった衛星・地球観測産業は、技術の進歩や規制改革により、民間企業にも門戸が開かれつつありました。

Pirondini氏は、この転換は業界をさらに発展させる好機だと捉え、その後、Xoople社を創業しました。現在もCEOとして、高度なAIと分析基盤を活用し、企業が地球上のさまざまな変化を把握・分析できるよう支援するチームを率いています。

Pirondini氏は、新たな地理空間データソリューションを「Earth Data Intelligence」と呼んでいます。「当社は、膨大な地理空間データの検索・収集・加工・分析に伴う複雑さを解消しています」とPirondini氏は語ります。「Earth Data Intelligenceは、天候や交通、海運などの変化を捉えるだけではなく、同じデータからパターンや将来予測につながるインサイトを導き出すこともできます」

想像してみてください。農業企業であれば、作物ごとの生育状況をリアルタイムで把握し、生育に必要な条件や今後の成長を予測することができます。物流企業であれば、自然災害や道路の寸断を含め、サプライチェーン上の重要拠点で何が起きているのかを即座に把握できます。保険会社であれば、世界中の資産の状況を継続的に監視することも可能です。こうした活用を可能にしているのが、Xoople社が扱うペタバイト級(将来的にはエクサバイト級)の膨大なデータです。このデータにより、Xoople社は地球上の変化を把握・予測するための新たな情報を継続的にユーザーへ提供しています。

しかし、膨大なデータを収集・分析するだけでは十分ではなく、エンドユーザーが適切なツールでシームレスにデータを活用できることが不可欠です。Pirondini氏は「ソリューションを利用現場まで届ける最後の段階が重要です」と強調します。「そのためには、企業の業務プロセスに組み込まれ、実際のニーズに即した形でソリューションを提供する必要があります」

Xoople社は、このミッションの実現に向けてEYと協業しています。EYの戦略コンサルティングの知見を活用しながら、ソリューションの実用化と普及を進め、世界中の企業がより迅速かつ的確な意思決定を行えるよう支援しています。

Project Manager Uses Digital Tablet Looks at Big Screen Display Showing Infographics and Global World Map Data. Telecommunications Control Monitoring Room with People Working
2

The better the answer

企業で活用できるEarth Data Intelligenceの実現

地球上で起きる変化を把握し、分析・予測できるようになりました。次の課題は、それらを企業がシームレスに活用できるようにすることでした。

EYとの協業を開始した当初、Xoople社のデータは地理情報システム(GIS)を通じた地球観測分野での利用が中心になると考えられていました。しかし検討を進めるにつれ、データはより広い分野で活用できることが分かってきました。EY Americas AI and Data LeaderのTraci Gusherは、「専門性の高い領域ですが議論を重ねるほどに、このデータが持つ可能性の大きさが見えてきました」と振り返ります。「これほど幅広い業界で活用され、新たな価値につながる可能性を持っていることに驚かされました」

Xoople社とEYは協業しながら、3つの重要な課題に取り組みました。

1. 市場適合性とGTM(Go to Market)戦略の調査・検証

このプロジェクトでは、EYからインフラ、データ、AI、ソフトウェアのエンジニアに加え、さまざまな業界の専門家が参画しました。その目的は、Xoople社の持つデータセットがどのような業界で、どのような価値を生み出せるのかを検証することにありました。両社は連携してGTM戦略や顧客向けのプログラムを策定し、データから得られるインサイトの活用方法や、企業レベルでの導入・活用方法をまとめた活用ガイドを整備しました。

2. AI活用に向けた複雑な地理空間データの整備

協業を開始した当初、生成AIはまだ一般的ではありませんでした。しかし生成AIの普及に伴い、EYチームは取り組みの方向性を見直しました。Gusherは、「私たちは、このデータをより迅速かつ広く利用できるようにすることが、今後ますます重要になると気付きました」と振り返ります。

企業がAIを活用して迅速に価値を得られるようにするため、Xoople社とEYはMicrosoft社やDatabricks社をはじめとする主要なテクノロジーパートナーのエコシステムとも連携しました。こうした取り組みは、Xoople社の持つ独自のデータセットを、さまざまな企業全体で利用できる形へと発展させることにつながりました。

Gusherは、「Xoople社と協業する中で重要だった取り組みの1つは、特定のプラットフォームに依存せず、広く活用できるデータ形式を整備することでした」と語ります。「ユースケースが幅広い業界に拡大する一方で、企業ごとに利用しているテクノロジーは異なります。そのため、多様な環境で活用できるオープンフォーマットのデータセットを提供することが重要でした」

3. ソリューションにおけるプライバシーとセキュリティの確保

Pirondini氏は、「私たちは、効果的なソリューションだけでなく、安全性や信頼性にも配慮したソリューションを提供しなければなりません」と語ります。「私たちはテクノロジーパートナーと連携しながら、グローバルで統一的なデータ活用のアプローチのもと、サイバーセキュリティを強化したデータ基盤の整備を進めています。これにより、私たちが提供するデータへアクセスする効率性と安全性を両立し、顧客が安心して利用できるセキュアな環境づくりを進めています」

セキュアな環境の構築だけでなく、企業が安心して活用できるデータセットを実現するためには、強固なリスクガバナンスも欠かせません。EYのチームは、Xoople社のデータセットに対してさまざまなテストや検証を行い、使いやすさやアクセスのしやすさだけでなく、信頼性を確保するための運用体制の整備にも取り組みました。Gusherは、「このプロジェクトでは、データセットの信頼性を確保することが絶対条件でした」と振り返ります。「私たちはゼロトラストの考え方を採用し、最小権限の原則に基づくアクセス制御や継続的検証を導入し、データの安全性と信頼性を高めるための取り組みを行いました」

市場展開からAI活用、セキュリティの確保に至るまでを見据えたXoople社の包括的なアプローチは、EYがEY.ai Value Blueprintsで掲げる考え方とも一致していました。EY.ai Value Blueprintsは、インテリジェンス、信頼、顧客価値など7つの要素で構成されており、AIを既存機能に後付けで導入するのではなく、将来のビジネス要件の中核に組み込むことを重視しています。

Stock photograph of a mature man giving a lecture beside a large movie screen.
He's showing images on a large screen related to modern energy production, ie sustainable energy.
3

The better the world works

地球上の大規模なインサイトから、より良い意思決定へ

Xoople社の取り組みが広く示唆している企業への教訓は、AIの価値を最大限に引き出すためには、質の高い正しいデータが欠かせないということです。そうしたデータが、インパクトをもたらす意思決定につながります。

Xoople社の取り組みは、EYが掲げる「Building a better working world ~より良い社会の構築を目指して」という理念をまさに体現するものでした。その成果はより幅広い分野へ広がり、大きな変革につながることが期待されています。

 

Earth Data Intelligenceは、目に見えないが、世界経済を支える社会基盤となる可能性を秘めています。将来的には、GPSのように、サプライチェーン管理や輸送、保険引受、エンジニアリング、エネルギー、農業、さらには国家安全保障に至るまで、幅広い分野で活用されることが期待されています。

 

Gusherは、「このプロジェクトは、AIの未来と、それを支えるデータの在り方について多くの示唆を与えてくれました」と振り返ります。「こうした地球規模で収集・分析される膨大な地理空間データは、幅広い業界で活用できる可能性があります。過去3年間で生成AIが広く普及し、AIはより身近な存在になりました。今後はさらに一歩進め、AIだけでなく、そのAIを支えるデータもより多くの人が活用できるようにしていくことが必要です。このプロジェクトは、その実現に向けた好例だと考えています」

 

衛星・地球観測産業における競争優位の源泉は、保有する衛星の数の多さとは限りません。重要なことは、タイムリーで正確なデータをシームレスに統合し、自社そしてグローバル経済の意思決定に生かすことです。Xoople社は、その実現を支える重要な役割を担うと期待されています。

 

Pirondini氏は、「今回のデータ変革の取り組みを通じて、AIの価値をより多くの顧客や一般の人々に届けられるようになりました。こうした成果について、非常に大きな可能性を感じています」と語ります。  

お問い合わせ

より詳しい情報をご希望の方はEYのプロフェッショナルチームにご連絡ください。

EYの事例

クライアントが極めて難しい課題を解決し、自信を持って未来を形づくることができるよう、EYのチームがどのように支援しているかをご紹介します。